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単価・構造

SES手取り
シミュレーション完全ガイド

小川将司
小川将司代表取締役

SES事業者として内部のマージン構造を金額で開示

この記事でわかること

  • 単価40万〜100万円の手取り早見表(還元率65%/75%の2パターン)
  • 単価60万・70万・80万円の3パターンでマージン内訳を1円単位で分解
  • 商流の深さ(1次〜4次請け)ごとの手取りシミュレーション
  • マージンの中に含まれるSES企業側の負担コスト(粗利)の内訳
  • 自分の手取りを自分で計算できるフレームワーク
  • SES正社員 vs フリーランスの手取り比較

この記事の対象: 自分の契約単価から手取りがいくらになるか正確に知りたいエンジニア

この記事にはHeydayの独自データが含まれています

2026年4月更新: 手取り早見表を追加し、フリーランスとの比較セクションを新設しました。

結論から書く。SES正社員の手取りは、契約単価と還元率によって以下の範囲に収まる。

【早見表】SES単価別・手取り月額の目安

契約単価還元率60%還元率65%還元率70%還元率75%還元率80%
40万円19〜20万円20〜22万円22〜23万円23〜25万円25〜26万円
50万円23〜25万円25〜27万円27〜29万円29〜31万円31〜33万円
60万円28〜30万円30〜32万円33〜35万円35〜37万円37〜39万円
70万円33〜35万円35〜38万円38〜41万円41〜43万円44〜46万円
80万円37〜40万円41〜43万円44〜46万円47〜49万円50〜52万円
90万円42〜44万円46〜48万円49〜52万円53〜55万円56〜59万円
100万円47〜49万円51〜53万円55〜57万円59〜61万円62〜65万円

※手取りは額面から社会保険料・所得税・住民税を差し引いた概算値(扶養なし・東京都の場合)

この表を見て「自分の手取りと合っているか」確認してほしい。もし表の数字より実際の手取りが低い場合、商流が深い(2次・3次請け以下)可能性がある。この記事の後半で、商流の深さが手取りに与える影響と、自分で正確に計算するためのフレームワークを解説する。

SESエンジニアとして働いていると、「自分の契約単価は60万円らしい」「70万円で出ているらしい」という情報を耳にすることがある。しかし、その金額がどう分解され、最終的にいくらが自分の手元に届くのかを正確に把握している人は少ない。

この記事では、単価60万円・70万円・80万円の3パターンを使い、マージン(SES企業の粗利)の内訳を具体的な金額で分解する。さらに、商流の深さ(1次請け〜4次請け)ごとに手取りがどう変わるかをシミュレーションし、「自分の手取りはいくらか」を読者が自分で計算できるフレームワークを提示する。

SES事業を第6期にわたって経営してきた立場から、事業者側の内部構造を包み隠さず数字で見せる。SESの単価相場の全体像業界構造については別記事で詳しく解説しているので、併せて読むと理解が深まる。

SESの中抜き割合とマージン(粗利)の基本構造――何がどう引かれるのか

マージンの定義を金額で理解する――SES企業の「粗利」とは何か

SESのマージンとは、クライアント企業がSES会社に支払う「契約単価」から、エンジニアに還元される「給与・報酬」を差し引いた金額だ。会計上はこれがSES企業の「粗利(売上総利益)」にあたる。「中抜き」とも表現されるが、中身を知らずに使うのは危険だ。

たとえば契約単価60万円・還元率65%なら、マージン(粗利)は21万円。この21万円が丸ごとSES企業の「儲け」になっているわけではない。マージンの中には、SES企業がエンジニアのために負担しているコストが含まれている。

マージンの内訳――5つのコスト要素

SES企業がマージンから捻出しているコストを分解すると、大きく5つの要素がある。

1. 社会保険料の企業負担分

正社員SESの場合、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の企業負担分がかかる。これは額面給与の約15%に相当する。単価70万円・還元率70%のエンジニアであれば、月額約7.4万円をSES企業が別途負担している。

2. 営業コスト

案件を獲得するための営業活動にかかるコスト。営業担当者の人件費、交通費、営業ツール費用などが含まれる。SES企業では営業1人あたり15〜25名のエンジニアを担当するのが一般的で、エンジニア1人あたりに按分すると月3〜5万円程度になる。

3. 管理コスト

経理・人事・総務などの間接部門の人件費、オフィス賃料、各種システム利用料。エンジニア1人あたりに按分すると月2〜4万円程度。

4. 採用コスト

エンジニアを採用するためにかかるコスト。求人広告費、人材紹介手数料、面接にかかる人件費。人材紹介経由の場合、年収の30〜35%が紹介手数料となり、年収450万円なら135〜157万円。これを月額に按分すると、入社後2年で回収する前提で月5.6〜6.5万円になる。

5. 営業利益

上記すべてのコストを差し引いた後の利益。SES企業の営業利益率は一般的に5〜10%で、エンジニア1人あたり月3〜7万円程度。

この構造を理解すれば、「SES企業はどれだけ抜いているのか」という疑問に対して、感情論ではなく構造的に回答できる。

単価60万円のマージン分解――手取りはいくらか

還元率65%の場合(業界平均水準)

契約単価60万円、還元率65%の場合の分解は以下の通りだ。

項目金額備考
契約単価60.0万円クライアントがSES企業に支払う金額
エンジニア額面給与39.0万円60万 × 65%
SES企業マージン21.0万円60万 × 35%
 うち社会保険企業負担5.9万円額面の約15%
 うち営業コスト按分4.0万円
 うち管理コスト按分3.0万円
 うち採用コスト按分4.5万円
 うち営業利益3.6万円営業利益率6%

エンジニアの手取り(額面39万円から個人の社会保険料・所得税・住民税を差し引いた後)は、扶養家族や居住地域によるが、概算で30〜32万円程度となる。

還元率75%の場合(高還元水準)

同じ契約単価60万円でも、還元率75%の場合は様相が変わる。

項目金額
契約単価60.0万円
エンジニア額面給与45.0万円
SES企業マージン15.0万円
 うち社会保険企業負担6.8万円
 うち営業コスト按分4.0万円
 うち管理コスト按分2.0万円
 うち採用コスト按分1.5万円
 うち営業利益0.7万円

高還元企業の場合、営業利益率は1〜2%にまで圧縮される。この数字を見れば、還元率75%がSES企業にとっていかに薄利かが分かる。逆に言えば、75%以上の還元率を実現するには、管理コストを極限まで下げるか、採用をリファラル中心にしてコストを抑えるか、あるいは稼働人数を増やしてスケールで利益を確保するか、何らかの構造的な工夫が必要になる。

月額の手取りは概算で35〜37万円程度。還元率65%との差は月額6万円、年間72万円になる。

単価70万円の手取りとマージン分解――中堅エンジニアの標準ライン

還元率65%の場合

項目金額
契約単価70.0万円
エンジニア額面給与45.5万円
SES企業マージン24.5万円
 うち社会保険企業負担6.8万円
 うち営業コスト按分4.0万円
 うち管理コスト按分3.0万円
 うち採用コスト按分4.5万円
 うち営業利益6.2万円

SES企業にとって単価70万円は「安定して利益が出るライン」だ。営業利益が月6万円あれば、年間72万円。稼働エンジニアが30名いれば年間2,160万円の営業利益となり、小規模SES企業なら十分に事業を維持できる。

還元率75%の場合

項目金額
契約単価70.0万円
エンジニア額面給与52.5万円
SES企業マージン17.5万円
 うち社会保険企業負担7.9万円
 うち営業コスト按分4.0万円
 うち管理コスト按分2.0万円
 うち採用コスト按分1.5万円
 うち営業利益2.1万円

額面52.5万円、手取りは概算で41〜43万円。単価60万円・還元率65%の手取り30〜32万円と比べると、月10万円以上の差がある。単価と還元率の両方が手取りを左右することがよく分かる。

Heydayのキャリア相談に来るエンジニアの中で、「自分の契約単価を正確に把握していた」人は3割程度だ。残りの7割は「だいたい○万円くらい」という曖昧な認識で働いている。この「曖昧さ」が、SES業界で不利な待遇が固定化する最大の原因だと、6年経営してきて確信している。

単価80万円の手取りとマージン分解――上位エンジニアの世界

還元率65%の場合

項目金額
契約単価80.0万円
エンジニア額面給与52.0万円
SES企業マージン28.0万円

マージン28万円のうち、社会保険企業負担が7.8万円、残りの約20万円がSES企業の運営費と利益になる。営業利益は月8〜10万円に達し、SES企業にとっては「稼ぎ頭」のエンジニアとなる。

還元率75%の場合

項目金額
契約単価80.0万円
エンジニア額面給与60.0万円
SES企業マージン20.0万円

額面60万円は、年収換算で720万円(賞与なしの場合)。ここに賞与が加われば800万円台も見えてくる。手取りは概算で47〜49万円程度。SES正社員としてはかなりの高水準だ。

3パターンの比較まとめ

単価60万円単価70万円単価80万円
還元率65%の額面39.0万円45.5万円52.0万円
還元率75%の額面45.0万円52.5万円60.0万円
還元率の差による年収差72万円84万円96万円

単価が高くなるほど、還元率10%の差がもたらす年収差は大きくなる。単価80万円の場合、還元率65%と75%の差は年間96万円。これは無視できない金額だ。

商流の深さ別シミュレーション――1次請けと4次請けの差

ここまでの計算は、すべて「エンジニアが所属するSES企業の契約単価」をベースにしている。しかし実際には、エンドクライアントが支払う金額と、所属SES企業が受け取る契約単価は異なる場合がある。その差を生むのが「商流」だ。

エンド単価100万円のケースで比較する

エンドクライアントの予算が月額100万円の案件を、商流の深さ別にシミュレーションする。各中間企業のマージンは10〜15%と仮定する。

1次請け(エンド直)の場合

レイヤー金額
エンドクライアント支払100万円
所属SES企業の受取額100万円
エンジニア額面(還元率75%)75.0万円
エンド単価に対する実質還元率75.0%

2次請け(1社挟み)の場合

レイヤー金額
エンドクライアント支払100万円
元請けマージン(12%)12万円
所属SES企業の受取額88万円
エンジニア額面(還元率75%)66.0万円
エンド単価に対する実質還元率66.0%

3次請け(2社挟み)の場合

レイヤー金額
エンドクライアント支払100万円
元請けマージン(12%)12万円
2次請けマージン(10%)8.8万円
所属SES企業の受取額79.2万円
エンジニア額面(還元率75%)59.4万円
エンド単価に対する実質還元率59.4%

4次請け(3社挟み)の場合

レイヤー金額
エンドクライアント支払100万円
元請けマージン(12%)12万円
2次請けマージン(10%)8.8万円
3次請けマージン(10%)7.9万円
所属SES企業の受取額71.3万円
エンジニア額面(還元率75%)53.5万円
エンド単価に対する実質還元率53.5%

商流の深さが年収に与えるインパクト

上記の結果を年収ベース(額面×12ヶ月、賞与なし)で比較する。

商流月額額面年収(額面)1次請けとの差
1次請け75.0万円900万円
2次請け66.0万円792万円▲108万円
3次請け59.4万円713万円▲187万円
4次請け53.5万円642万円▲258万円

同じエンドクライアントの同じ案件に参画しているのに、商流の深さだけで年収が最大258万円も変わる。これがSES業界の構造的な問題であり、エンジニアが自分の商流を把握すべき最大の理由だ。

当社に相談に来るエンジニアの中で、「自分が何次請けかを知っていた」人は4割に満たない。商流の深さは、所属企業に聞けば教えてくれるケースも多い。聞いてみて「答えられない」「非公開」と言われた場合、その時点で透明性に問題がある。商流の構造と見抜き方についてはエンドが100万円払っている案件で50万円になる仕組みSES業界の構造ガイドで詳しく解説している。

自分の手取りを計算するフレームワーク

ここまでの内容を踏まえ、読者が自分の状況に当てはめて手取りを計算できるフレームワークを提示する。

ステップ1: エンド単価を把握する

まず、自分の案件のエンド単価(エンドクライアントがトータルで支払っている金額)を確認する。直接聞けない場合は、以下の方法で推定する。

  • 所属SES企業に「この案件は何次請けですか」と質問する
  • 同じスキルセット・同じ業界のフリーランス案件の単価を調べる(フリーランスの単価はほぼエンド直の単価に近い)
  • エンジニア仲間やコミュニティで情報を共有する

ステップ2: 中間マージンを計算する

商流の各レイヤーのマージンは、一般的に以下の範囲だ。

レイヤーマージン率の目安
大手SIer(元請け)15〜25%
中堅SES企業(中間)10〜15%
小規模SES企業(中間)8〜12%
営業のみの仲介会社5〜10%

中間に入る企業の数と各社のマージン率から、自分の所属SES企業に届く金額を逆算する。

ステップ3: 自分の還元率を確認する

所属SES企業の還元率を確認する。確認すべきポイントは以下だ。

  • 還元率の計算方法(額面のみか、社会保険料込みか)
  • 額面のみで計算した場合の実質還元率
  • 固定給と変動給の比率(待機期間中の保証水準)

ステップ4: 手取りを概算する

手取り概算 = エンド単価 × (1 − 中間マージン率の合計) × 還元率(額面ベース) × 0.78〜0.82

最後の0.78〜0.82は、個人の社会保険料・税金による控除率の概算だ。

たとえば、エンド単価90万円、2次請け(中間マージン12%)、還元率70%の場合は以下のようになる。

90万 × 0.88 × 0.70 × 0.80 = 44.4万円(手取り概算)

ステップ5: 年収ベースで評価する

月額の手取りだけでなく、年間で考えることが重要だ。以下を加味する。

  • 賞与の有無と金額
  • 待機期間が年間で何ヶ月あるか
  • 待機期間中の給与保証水準

たとえば、月額手取り44万円でも、年間2ヶ月の待機期間(待機中は基本給の70%に減額)がある場合、年間手取りは単純な44万円×12ヶ月よりも減少する。

マージン構造から見える「本当に確認すべき3つの数字」

ここまでの分析から、SESエンジニアが自分の報酬を正しく把握するために確認すべき数字は3つに集約される。

確認すべき数字1: エンド単価

自分の案件にエンドクライアントがいくら支払っているか。これが「自分が生み出している経済的価値の上限」だ。この数字を知らないということは、自分の市場価値の上限を知らないということに等しい。

確認すべき数字2: 商流の深さ(何次請けか)

商流が1段深くなるごとに、手取りは年間100万円前後減少する。2次請けと4次請けの差は年間250万円を超える。自分が何次請けかを知らずに「単価が低い」と嘆いても、問題の根本には到達できない。

確認すべき数字3: 額面ベースの実質還元率

「還元率80%」という数字だけでは判断できない。社会保険料の企業負担分(額面の約15%)を含めて計算した場合と、額面のみで計算した場合では、表示上の数字が大きく変わる。額面ベースでの実質還元率を算出し、他社と同じ基準で比較することが不可欠だ。

この3つの数字が揃えば、前述のフレームワークで自分の手取りを概算でき、「適正な報酬を受け取っているかどうか」を客観的に判断できる。

業界全体のマージン率(還元率)の相場と適正値についてはSES還元率の相場は?IT業界12年・SES事業6年の経営者が実態を全公開で事業者視点から別途解説している。自社の数字を相場と比較する際の参照にしてほしい。

単価別・還元率別 手取りシミュレーション

冒頭の早見表は手取りの概算レンジを示したものだが、ここでは単価と還元率から「額面(月収)」を正確に計算した表を示す。自分の状況に当てはめて確認してほしい。

単価別・還元率別 月収(額面)一覧

契約単価還元率60%還元率65%還元率70%還元率75%還元率80%
55万円33.0万円35.8万円38.5万円41.3万円44.0万円
60万円36.0万円39.0万円42.0万円45.0万円48.0万円
65万円39.0万円42.3万円45.5万円48.8万円52.0万円
70万円42.0万円45.5万円49.0万円52.5万円56.0万円
75万円45.0万円48.8万円52.5万円56.3万円60.0万円
80万円48.0万円52.0万円56.0万円60.0万円64.0万円

※上記は「契約単価 × 還元率」の計算値(額面)。実際の手取りは額面からさらに社会保険料・所得税・住民税(概算20〜22%)が差し引かれる。

たとえば単価60万円・還元率70%なら額面42.0万円、手取りは概算33〜35万円程度。単価80万円・還元率75%なら額面60.0万円、手取りは47〜49万円程度になる。

還元率の計算方法や業界平均については SES還元率の計算方法完全解説 を参照してください。

マージン交渉の実践:還元率を上げるための具体的な手順

単価・マージン構造を把握したとして、次の問いは「ではどう動くか」だ。SES正社員が還元率を上げる(=実質的に収入を増やす)ための具体的な手順を示す。

交渉の前提:「交渉できる立場」を作る

SES企業にとって、エンジニアの収入改善交渉に応じるか否かは経済合理性で決まる。「このエンジニアに良い条件を出さなければ退職・転職される」というリスクを企業側が認識したとき、はじめて交渉が成立する。

逆に言えば、代替が効きやすいスキル・同一案件に長年居続けているエンジニアは、交渉力が低い。交渉前にまず「自分の希少性」を高めることが先決だ。

手順1:市場単価の相場データを収集する

感情論ではなく、数字で話せる状態を作る。具体的には以下を実施する。

  • フリーランスエージェント(レバテック・Midworks等)でスカウトを受ける。提示される単価がエンド直の市場相場に近い
  • 転職エージェントの面談で「現職の年収水準が市場と比べてどうか」を確認する
  • 本記事の単価テーブルで自分のスキル・経験年数に対応するレンジを把握する

手順2:現在の案件での貢献を「数字」で言語化する

「頑張っている」は交渉の根拠にならない。以下の形式で実績を言語化する。

  • 「○○システムの設計を担当し、当初見積もりより30%工数を削減した」
  • 「案件開始から1年でクライアントから継続延長の指名を受けた」
  • 「後輩エンジニア2名のオンボーディングを担当し、いずれも3ヶ月以内に独立稼働」

手順3:案件更新タイミングに合わせて交渉を切り出す

案件の更新時(3〜6ヶ月ごと)は、SES企業にとって「エンジニアの稼働を継続するか」の判断ポイントでもある。このタイミングに合わせて「次の更新に向けて、報酬水準の見直しをしたい」と切り出すのが最もスムーズだ。

更新タイミング以外では、SES企業にとって「今変える必要性」が低く、先延ばしにされやすい。

手順4:競合オファーを取得して提示する

最も強い交渉カードは「他社のオファー」だ。転職を前提にしなくても、市場価値を確認するために他社面談を経験することは有益だ。「○○社から単価○○万円のオファーをもらっているが、現職での条件改善があれば残りたい」という形で提示できれば、交渉の成功確率は大幅に上がる。

Heydayでは、在籍エンジニアが市場価値を確認するための転職活動自体を「制限しない・責めない」方針にしている。なぜなら、エンジニアが適正な市場価値を把握することは、健全なキャリア形成に必要だからだ。むしろ「Heydayにいることで市場価値が維持・向上できている」と判断されることが、最終的な定着につながると考えている。

手順5:交渉が不調に終わった場合の判断

マージン構造について直接相談する →

交渉を尽くしても還元率・報酬水準が改善されない場合、それは「この企業の構造的な限界」を示している可能性がある。理由は3つのどれかだ。

  1. 企業の収益構造上、還元率を上げる余地がない(商流が深く、所属企業の受取額が少ない)
  2. 企業として当該エンジニアの市場価値をそのように評価していない
  3. 企業文化として「条件交渉を受け入れない」慣習がある

3つ目の場合、どれほど実績を出しても報酬に反映されない可能性が高い。移籍を選択肢として持つことが、長期的な収入最大化のための合理的な判断になる。

同じ単価でSES正社員とフリーランスの手取りはどう違うか

マージン構造を理解したうえで、「フリーランスになったほうが手取りは増えるのか?」という疑問を持つエンジニアは多い。単価70万円のケースで比較する。

SES正社員の場合(単価70万円・還元率70%)

項目金額
契約単価70.0万円
額面給与49.0万円
社会保険料(個人負担)▲7.4万円
所得税・住民税▲3.6万円
手取り約38万円
有給休暇あり(年15〜20日)
待機保証あり(基本給の60〜100%)
退職金・賞与企業による

フリーランスの場合(同一案件・エンド直70万円)

項目金額
契約単価(エンド直)70.0万円
エージェントマージン(10〜15%)▲7〜10.5万円
手元に入る報酬59.5〜63万円
国民健康保険▲5.0万円
国民年金▲1.7万円
所得税・住民税▲6.0万円
経費(通信費・交通費等)▲1.5万円
手取り約46〜49万円
有給休暇なし
待機保証なし
退職金・賞与なし

月額の手取りだけ見れば、フリーランスのほうが8〜11万円多い。しかし、待機リスク(年間で案件が切れる期間)、有給休暇がないこと、退職金や福利厚生がないことを考慮する必要がある。

Heydayのキャリア相談では、SES正社員とフリーランスのどちらが向いているかを、本人の家族構成・リスク許容度・キャリアの方向性を踏まえて一緒に考えている。正社員かフリーランスかは損得の話ではなく、働き方の設計の話だ。詳しくはSES vs フリーランスの働き方比較正社員 vs フリーランス完全ガイドで解説している。

マージンは「悪」ではない――ただし不透明なマージンは問題だ

SES企業のマージンそのものを否定するのは筋違いだ。営業活動、契約管理、トラブル対応、待機保証、社会保険の手続き――これらのサービスを提供する対価として、マージンは必要なコストである。

問題なのは、マージンの存在ではなく、マージンの不透明性だ。

エンジニアに契約単価を開示しない、商流を教えない、還元率の計算方法を曖昧にする。こうした不透明さがある企業は、マージンの「額」ではなく「隠す姿勢」に問題がある。

逆に、単価を100%開示し、商流の深さも伝え、還元率の計算根拠も説明する企業であれば、マージン率が30%であっても信頼に値する。エンジニアが判断に必要な情報をすべて持っている状態を作ること。それが、SES業界の健全化に必要な最初のステップだ。

まとめ

SESマージン構造を金額ベースで分解した。要点を整理する。

  • SES企業のマージンは「利益」だけではなく、社会保険料・営業コスト・管理コスト・採用コストを含む
  • 単価60万円・還元率65%の場合、額面39万円、手取り30〜32万円。還元率75%なら額面45万円、手取り35〜37万円
  • 単価70万円・80万円でも同様に分解でき、還元率10%の差は年収72〜96万円の差になる
  • 商流の深さは手取りに甚大な影響を与え、1次請けと4次請けでは年収差258万円に達する
  • 自分の手取りを正確に把握するには、エンド単価・商流の深さ・額面ベースの還元率の3つの数字が必要
  • 同じ単価70万円でも、SES正社員(手取り約38万円)とフリーランス(手取り約46〜49万円)では月8〜11万円の差がある。ただし待機リスク・福利厚生の有無も加味して判断すべき
  • マージンの存在自体は問題ではなく、不透明なマージンが問題。情報を開示する企業を選ぶことがエンジニアの自衛策となる
  • 還元率交渉は「市場データ・実績の数字化・更新タイミング・競合オファー」の4つを揃えることで成功確率が上がる

Heydayでは契約単価・マージン・商流をすべて開示しています

「自分の単価が適正か分からない」「もっといい条件の案件があるのでは」という方のご相談を受け付けている。 Heydayでは稼働前に契約単価を本人に開示し、マージン構造についても質問があればすべて回答している。

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よくある質問(FAQ)

Q. SES企業のマージン率の平均はどれくらいですか?

業界平均は30〜35%程度とされています。つまり還元率でいえば65〜70%が平均水準です。ただし、企業によって計算方法(社会保険料を含むかどうかなど)が異なるため、数字だけで単純比較することはできません。還元率を比較する際は「何を分子に含めているか」を必ず確認してください。

Q. 契約単価から実際にどのくらい引かれるのでしょうか?

単価60万円・還元率65%の場合、額面は39万円、手取りは30〜32万円程度です。さらに商流が深い(2〜3次請け)場合、エンド単価からの実質的な手取りはさらに低くなります。例えばエンド単価が90万円でも2次請けかつ還元率70%なら、手取りは約44万円まで下がります。

Q. SES企業にマージンを下げてもらうことはできますか?

交渉は可能ですが、SES正社員の場合は通常「還元率のアップ」という形で交渉します。案件更新タイミングで「市場単価の水準」と「自分の貢献実績」を根拠に交渉するのが最も有効です。そもそも単価と還元率を開示している企業を選んでおくと、交渉の起点となる情報が得やすくなります。

Q. SES企業の粗利はどのくらいですか?

粗利(=マージン)は契約単価の25〜40%が一般的です。単価60万円で還元率65%の場合、粗利は21万円。ただしこの21万円から社会保険料の企業負担(約5.9万円)、営業コスト(3〜5万円)、管理コスト(2〜4万円)などが差し引かれ、最終的な営業利益は3〜7万円程度です。「粗利=SES企業の利益」ではない点に注意してください。

Q. 還元率80%と70%では、実際に年収でどれくらい差が出ますか?

単価70万円の場合、還元率70%なら額面49万円(年収588万円)、80%なら額面56万円(年収672万円)です。差額は年間84万円。5年間積み重ねると420万円以上の差になります。還元率の比較は、求人選択において単価と同等かそれ以上に重要な指標です。


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小川将司

この記事の著者

小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

SES事業者として内部のマージン構造を金額で開示

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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