「SESから抜け出して、コンサルやPMOに転向したい」
この相談が、Heydayには毎月一定数届く。ITコンサル、SAP、ERP、PMO——いずれも「SESより上流」「年収が高い」という認識があるのはその通りだ。ただ、転向の仕方を間違えると、転職できても2年以内に後悔する確率が高い。
Heydayが支援したコンサル系キャリア転換n=47件(2026Q1)のデータでは、転向後に「正解だった」と感じている人と「思ったより違った」と感じている人がほぼ半々存在する。
この記事では、成功した人が何をしたか・後悔した人が何を間違えたかを、実例とともに整理する。転職エージェントには書けない「入社後の現実」まで踏み込む。
多くのSESエンジニアが「コンサルに行くには転職するしかない」と思っているが、実際には3つのルートがある。
最も一般的なイメージのルート。ITコンサルファーム・SIer上流部門・ERPコンサル会社へ正社員として移籍する。
メリット:給与が固定安定・社会保険完備・キャリアの肩書きが変わる
デメリット:書類通過率が低い(上流経験なしで15〜25%)・入社後の文化ギャップが大きい・失敗しても戻りにくい
SES正社員のまま、PMO・コンサル上流・SAP導入・ERP移行案件に客先常駐する形で転向する。SES企業が上流案件を受注していれば可能で、転職リスクなしで「コンサル業務の実績」を積める。
メリット:雇用の安定を保ちながら実績を積める・失敗してもロールバック可能・実績が積み上がれば次の転職・独立が有利になる
デメリット:SES会社が上流案件を取ってこないと選択肢が限られる・コンサルファームへの転籍には別途動きが必要
SES正社員から独立し、PMOフリーランス・SAPフリーランス・ITコンサルフリーランスとして案件を受注する。
メリット:単価が正社員コンサルより高いケースが多い(PMO:月80〜150万円)・案件選択の自由度が高い
デメリット:経験が浅い状態での独立は案件獲得が困難・空白期間の収入がゼロになるリスク・社会保険・確定申告の自己管理が必要
Heydayが支援したn=47件のうち、3パターンの分布はこうだった。
| パターン | 件数 | 転向後「正解だった」割合 |
|---|
| パターン1:転職 | 21件 | 38% |
| パターン2:SES在籍で上流案件 | 18件 | 72% |
| パターン3:フリーランス独立 | 8件 | 50% |
転職(パターン1)の「正解だった」割合が38%と最も低い。理由は後述する。
背景:Javaバックエンド5年のSES正社員。月単価65万円、商流2次請け。自社での案件選択権がある環境だったため、Heydayに「上流に近い案件に入りたい」と相談。
何をしたか:SAP基盤(Basis)を扱う案件に入る前に、3ヶ月間のSAP研修を社費で受けた(SES会社が費用負担)。その後、大手製造業のS/4HANA移行案件のBasis担当として入場。SES正社員のまま客先常駐。
1年後の状況:SAP Basis 1年の実績が付いた段階で、同じ客先の次フェーズ案件に月単価95万円で継続アサイン。年収換算で240万円の増加。SES在籍のまま。
本人の言葉(匿名):「転職しなくて良かったと思っています。転職していたら研修費用も自己負担で、最初の1〜2年は給与が下がっていたはず。今は実績が付いたので、このまま独立も視野に入れています」
背景:ネットワーク・サーバー系のインフラSES正社員、7年。月単価75万円、年収手取り約450万円。30代後半で「このままでいいのか」という焦りがあった。
何をしたか:SES在籍中に、小規模なPMO補佐業務を1年経験(パターン2)。その後、独立してフリーランスPMOとして活動開始。
2年後の状況:PMO正案件(月単価80万円)+ 1日3時間のサポート案件(月15万円)の2本立て。年間収入960万円。社会保険自己負担分を差し引いても、以前より手取りが増加。
転向のポイント:フリーランス独立前に「SES在籍でPMO実績を1年積んだ」こと。これなしに直接フリーランスPMOとして動いていたら、案件獲得に苦労していたと本人は振り返っている。
背景:Java・Python 4年のSES正社員。要件定義経験が1年分あり、上流工程の実績がある状態で転職活動を開始。
何をしたか:中堅ITコンサルファーム(従業員300名規模)に転職。書類通過率は高く、3社受けて2社内定。
2年後の状況:年収900万円。業務系コンサルティングを担当。「激務かと思ったが、前職のSES時代の方が残業は多かった」と話す。
成功の要因:要件定義1年の実績を職務経歴書に具体的な数字(関係者30名規模のプロジェクト、成果物の種類)で記述できたこと。大手ファームではなく、SES出身者を積極採用している中堅ファームを選んだこと。
背景:SES 6年。実装・テスト中心で上流工程経験ゼロ。「コンサルに行けば年収が上がる」と思い込み、大手ファームへの転職活動を開始。
何が起きたか:書類通過率5%以下。15社受けて面接に進めたのは1社のみ。面接も落選。6ヶ月の転職活動の末、元のSESに戻る。自信喪失。
問題点:上流工程経験なしで大手コンサルに転職しようとしたこと。エージェントからは「スキルを積んでから」と言われていたが、無視して動いてしまった。
背景:SES 3年のエンジニア。Java実装・単体テスト中心。中堅コンサルファームにポテンシャル採用で内定。年収450万→580万円に上昇。
何が起きたか:入社3ヶ月後から「思っていたのと違う」と感じ始める。コンサルの業務は「課題整理」「資料作成」「顧客折衝」が中心で、コーディングはほぼない。「技術力を活かせると思ったのに」という乖離。加えて、深夜残業・週末の提案資料作成が常態化。1年2ヶ月で退職。
問題点:「コンサル=技術力を使う上流の仕事」という誤解があったこと。コンサルはビジネス課題の解決が中心で、エンジニアリングではない。入社前に実際のコンサル業務内容を十分に調べていなかった。
背景:SES正社員 8年。プロジェクト管理補佐の経験が2年。「フリーランスPMOは単価が高い」と情報収集し、貯金300万円を持って独立。
何が起きたか:独立後すぐに案件を1本獲得できたが、5ヶ月で案件終了。次の案件が見つかるまで3ヶ月かかった。月収ゼロが3ヶ月続いたことで精神的に追い詰められ、SES正社員に出戻り。
問題点:「PMO経験2年」は量が少なかった。フリーランスとして継続受注できる実績ラインは、PMO主担当3年以上が一般的。また、エージェント1社しか登録しておらず、案件パイプラインが細かった。
それぞれの職種について、SESエンジニアが転向する際の現実的な年収改善幅と、転向に必要な条件を整理する。
| 項目 | 数値 |
|---|
| SES→ITコンサル転職後の平均年収変化 | +150〜300万円 |
| 書類通過率(上流経験なし) | 15〜25% |
| 書類通過率(要件定義1年以上) | 60〜70% |
| 転向に最低限必要な経験 | 要件定義・基本設計・顧客折衝のいずれか1年以上 |
ITコンサルは「技術者」ではなく「ビジネス課題の解決者」。コーディングができることは評価されるが、それよりも「課題の言語化・解決策の提案・顧客との調整」が主業務だ。SES出身者が陥りやすいのは、技術力を前面に出しすぎてビジネス視点が弱いと判断されるケースだ。
転向しやすいのは:中堅ファーム(300名以下)、業務系コンサル(ERPやSaaS導入支援)、SES出身者の実績が多いファーム。
フリーランスとしてITコンサル案件に入る場合の単価感についてはITコンサル案件の単価相場で実案件データをもとに解説している。
→ 詳細:ITコンサルとSESの違いを徹底解説
| 項目 | 数値 |
|---|
| SES正社員→PMO正社員の平均年収変化 | +100〜200万円 |
| PMOフリーランスの月単価レンジ | 80〜150万円(主導型:130万円以上) |
| SES→PMOフリーランス後の平均年収 | 800〜1,200万円 |
| 転向に最低限必要な経験 | プロジェクト補佐・議事録作成では不十分。課題管理・WBS策定・ステークホルダー調整が必要 |
PMOはSES出身者にとって最も転向しやすいコンサル系職種のひとつだ。インフラ・開発問わず、「プロジェクトを動かす経験」があれば入口になりやすい。
ただし、「議事録係・Excel管理のPMO」と「プロジェクト全体を動かすPMO」では市場価値に大きな差がある。フリーランスで高単価を取るには後者の実績が必要。
→ 詳細:PM/PMO案件の月単価とSESエンジニアがなる方法 | PMOやめとけは本当か
| 項目 | 数値 |
|---|
| SAP SES案件の平均月単価レンジ | 70〜120万円(ABAPシニア:120〜200万円) |
| SES→SAPコンサル転向後の年収変化 | +200〜500万円(経験年数による) |
| 転向のタイムライン | 研修3〜6ヶ月+実務2年で独り立ち |
| 2027年S/4HANA移行期限の影響 | 対応企業が約2,000社残存。需要急増中 |
SAPは「プロプライエタリなスキル」であるため、代替人材が少ない。習得にコストがかかる分、単価も高い。現在は2027年のS/4HANA移行期限に向けた需要急増期で、未経験からSAP Basisに入れる案件も増えている。
ただし、移行期限後(2027年以降)は需要が落ち着く可能性がある。今が最もキャリアチェンジのタイミングが良い時期だ。
→ 詳細:SAP SESエンジニアの月単価実態 | S/4HANA移行SES案件の単価実態 | ABAPエンジニアのSES単価実態
| 項目 | 数値 |
|---|
| ERP SES案件の平均月単価レンジ | 60〜130万円 |
| 主要ERP:Dynamics 365、Oracle EBS、Infor | SAP未経験でも入りやすい |
| 転向に必要な経験 | 業務知識(製造・流通・会計いずれか)+ERP基礎知識 |
| ERPコンサルとSES正社員の年収差 | 正社員転職で+150〜300万円 |
ERPコンサルタントはSAPに比べて認知度が低い分、競争率が低い。製造業・流通業のSES経験がある人は、業務知識を活かしてERPコンサルに転向しやすい。
Dynamics 365はMicrosoftエコシステムとの親和性が高く、AzureエンジニアやOffice 365の知識があるSESエンジニアに向いている。
→ 詳細:ERP SESエンジニアの月単価比較 | Dynamics 365 SESエンジニアの月単価実態
| 項目 | 数値 |
|---|
| Salesforce SES案件の平均月単価 | 70〜120万円 |
| Salesforceコンサル正社員の平均年収 | 600〜1,200万円 |
| 転向の入口 | Trailhead資格(無料)+Admin試験合格が最低ライン |
| DXコンサル転向の難易度 | 業務改革の経験がないSES出身者には高め |
SalesforceはCRM系の中でも求人数が非常に多く(推定3,000件以上)、SES出身者でも入りやすい職種だ。ただし、「Salesforce Admin/Developerができる」だけではコンサルには不十分で、「クライアントの業務課題をSalesforceでどう解決するか」の提案力が求められる。
→ 詳細:SalesforceエンジニアのSES単価実態 | SESエンジニアがDXコンサルに転職できる条件
SES正社員(月給35万円・年収約500万円)を基準にした場合のシミュレーション。
| ルート | 移行後の平均年収 | 安定性 | リスク | タイムライン |
|---|
| SES在籍のまま上流案件 | 600〜750万円 | 高 | 低 | 3〜6ヶ月で案件移行 |
| コンサル正社員転職 | 700〜950万円 | 中 | 中 | 転職活動3〜6ヶ月+1〜2年の適応期間 |
| フリーランスPMO独立 | 800〜1,200万円 | 低〜中 | 中〜高 | 実績2〜3年積んでから独立が現実的 |
「フリーランス独立が最も年収が高い」のは事実だが、実績なしでの独立は案件獲得が難しい。最も確実な順序は:
SES在籍で上流案件(実績積み)→ 転職またはフリーランス独立
SES在籍のままで月単価80〜95万円の上流案件に入り、2〜3年実績を積んでから次のステップを判断する。これが転職リスクを抑えつつ年収を上げる最短ルートだ。
SES正社員(Java/Spring Boot・5年・月単価65万円)
↓ Heydayを通じてPMO補佐案件に移行(SES在籍のまま)
SES在籍・PMO補佐(1年)
↓ PMO実績を職務経歴書に具体的に記述
中堅ITコンサルファームへ転職(年収780万円)
↓ 2年後
シニアコンサルタント(年収950万円)
ポイント:SES在籍中にPMO実績を1年積んだことで、書類通過率が大幅に改善した。
SES正社員(ネットワーク/サーバー・7年・月単価70万円)
↓ SAP社費研修(3ヶ月)
SES在籍・SAP Basis案件(2年・月単価85万円)
↓ ABAPも習得
フリーランスSAP Basis(月単価120万円)
↓ 現在
S/4HANA移行案件に継続参画(月単価140万円)
ポイント:インフラ経験がSAP Basisのシステム基盤作業に直結した。フリーランス独立のタイミングはSES在籍で2年の実績を積んでから。
SES正社員(Python/Django・3年)
※要件定義1年・顧客折衝経験あり
↓ 中堅DXコンサルファームへ転職
DXコンサルタント(年収650万円)
↓ 2年後
シニアDXコンサルタント(年収820万円)
ポイント:3年でも要件定義・顧客折衝実績があれば、中堅ファームへの転職は可能。ただし大手ファームではなく「SES出身者を評価する文化のファーム選び」が重要だった。
SES経営者として6年で多くのキャリア転換を見てきたが、「転職すること」がゴールになってしまっている人が一番失敗しやすい。
コンサル系への転向で幸せになっている人に共通しているのは、「今の自分に何が足りないかを正直に把握した上で、実績を積む順番を逆算した人」だ。
SES在籍のままでコンサル上流案件に入れるのか、転職した方が早いのか、フリーランスの方が向いているのか——これは一般論では答えが出ない。自分の現在のスキル・商流の位置・希望する働き方によって、最適解は全員違う。
Heydayの診断ツールは、スキル・経験年数・希望をもとに「あなたにとって現実的な転向ルート」を出力するように設計している。転向を検討しているなら、まずそこから始めてほしい。
上限は「スキル・経験次第」が正確な答えだが、傾向として20代後半〜30代前半が転職しやすい。40代での転職は「特定分野のスペシャリスト」として転向するケースがほとんど(例:製造業ERPコンサル、金融系PMOなど)。30代でも上流経験があれば十分に可能だ。
最も現実的なルートは「SES在籍のまま上流案件に入ること」。上流案件を扱うSES会社に移るか、現在のSES会社が上流案件を受注できるよう営業担当に相談することが第一歩だ。転職一択ではない。
ファームによって差が大きい。事業会社向けIT戦略コンサルは比較的残業が少ない傾向があるが、大手ファームのプロジェクト終盤は月80〜100時間残業も珍しくない。「どのファーム・どの案件か」で実態は変わる。転職前に現職社員や転職エージェントを通じて残業実態を確認することを強く勧める。
PMOは「プロジェクトを動かすプロセス管理」、ITコンサルタントは「ビジネス課題を解決する提案者」という役割の違いがある。PMOは現場実行型で実務に近く、SES出身者が入りやすい。ITコンサルは経営層・事業部との折衝が多く、ビジネス知識と提案力が必要。
詳細はITコンサルとSESの違いを徹底解説を参照。
インフラエンジニア・Java/ABAPエンジニアは特にSAP Basisとの親和性が高い。SAP研修(企業によっては社費負担)を経てから案件に入るルートが一般的。2027年のS/4HANA移行期限に向けて需要が急増しているため、今は未経験でもBasis案件に入れるチャンスが比較的多い。
詳細はSAP SESエンジニアの月単価実態を参照。
PMO主担当(プロジェクト全体の進捗管理・リスク管理・ステークホルダー調整)として3年以上が、フリーランスとして継続受注できるミニマムラインの目安だ。「議事録作成・課題票管理」のみのPMO補佐2年では難しい。独立前に「自分がPMOとしてどこまで主体的に動いたか」を棚卸しすることを勧める。
原則として「転職→実績積み→フリーランス独立」の順番が安全だ。ただし、転職した企業がフリーランス独立に積極的でない場合もある。「SES在籍→上流案件で実績→フリーランス独立」というルートを取った人の方が、独立後の安定性が高い傾向がある(Heyday支援事例より)。
コンサル転職に強いエージェントを選ぶことが重要。JACリクルートメント・ムービン・アクシスコンサルティングはコンサル特化型として評価が高い。注意点として、エージェントは「転職させること」がビジネスなので、「本当に転職すべきか」のフラットな判断は期待できない。転職する前提でない相談はHeydayに直接してほしい。
実態はほぼ同義に使われている企業が多いが、DXコンサルタントは「デジタル技術を使ったビジネス変革」に特化したポジションを指すことが多い。ITコンサルはシステム設計・導入支援が中心、DXコンサルは業務改革・経営変革への提案が中心、という分類で理解すると良い。
詳細はSESエンジニアがDXコンサルに転職できる条件を参照。
Heydayは「SES在籍のまま上流案件に入るルート」を最も多く支援している。転職エージェントとは異なり、転職させることがビジネスではないため、「転職した方がいいのか・SES在籍のまま動いた方がいいのか」をフラットに判断できる。相談は無料。まずはキャリア相談フォームから。
コンサル系への転向を考えているなら、動く前に以下の3点を確認してほしい。
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単価の現在地を把握する:自分の現在の単価が市場水準と比べてどうなのかを知る。Heydayの診断ツールが参考になる。
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上流経験の量と質を棚卸しする:「要件定義・提案・顧客折衝・PMO」のうち何をどのくらいやったか。「やった」と「主体的に動いた」は別だ。
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転向ルートの選択肢を整理する:転職・SES在籍で上流案件・フリーランス独立の3パターンそれぞれのメリット・デメリットを自分のリスク許容度と照合する。
この3つを整理した上で相談してくれると、Heydayも具体的なアドバイスができる。
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