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判断基準

「SES やめとけ」と
言われる理由を経営者が正直に答える

小川将司
小川将司代表取締役

IT業界12年・SES事業6年の経営者が業界の構造的問題を正直に語る

この記事でわかること

  • 「SESやめとけ」と言われる構造的な理由(経営者側の正直な答え)
  • ブラックSES企業が使う典型的な手口5パターン
  • ホワイト企業を数値で見分けるための具体的な基準
  • 面談で使えるコピペ質問リストと脱出方法

この記事の対象: 「SESやめとけ」と検索している、今の環境に不安を感じているエンジニア

この記事にはHeydayの独自データが含まれています

はじめに:「SESやめとけ」と検索したあなたへ

「SESやめとけ」「SES ブラック 見分け方」で検索しているなら、すでに何かしらの不安を抱えているはずだ。転職を考えている、現在の会社に不満がある、SESという業態そのものに疑問を持っている——理由は様々だろう。

結論から言う。「SESはやめとけ」という言説は、半分正しく、半分間違っている。

正しい部分:SES業界にはエンジニアを搾取する不透明な企業が一定数存在し、そこに入ると確かにキャリアと収入の両方が傷つく。

間違っている部分:SESという雇用形態そのものが悪いのではない。問題は企業の姿勢であり、透明性の有無だ。

私はHeyday株式会社の代表として、IT業界12年、SES・ITエンジニアプレイスメント事業を6年以上経営してきた。同業他社の経営者、エンジニア、BP企業とのやり取りの中で、業界の内側から「なぜブラックが生まれるのか」「何を見ればホワイトと分かるのか」を見続けてきた立場から、この記事を書く。


SES業界の構造的問題:「やめとけ」と言われる理由の根っこ

参入障壁の低さが生む玉石混淆

SES事業が成立するのに、特別な許認可はほぼ不要だ。人材派遣業であれば厚生労働省への届出と要件充足が必要だが、SES(準委任契約)は契約書さえあれば理論上は事業を始められる。

結果として何が起きるか。営業力だけを持ち、エンジニアの待遇やキャリアを考慮する気のない企業が参入しやすい。

多重商流が単価を食い潰す

SES業界では、エンドクライアントとエンジニアの間に複数の会社が入る「多重下請け構造」が常態化している。

エンドクライアント(月額100万円)
 ↓ 1次請け企業(20万円を中抜き)
 ↓ 2次請け企業(15万円を中抜き)
 ↓ 3次請けSES企業(エンジニアを派遣)
 → エンジニアの手元:月収45万円以下

マージン非開示が生む情報の非対称性

最も根本的な問題は「情報の非対称性」だ。クライアントがSES企業に支払う単価は、多くの場合エンジニアに開示されない。エンジニアは自分がいくらで売られているかを知らないまま働いている。


ブラックSES企業の手口:4つのタイプ

タイプ1:搾取型(マージン率50%超)

クライアントに対してエンジニアを月額70〜80万円で提供しながら、エンジニアの月給を30〜35万円に設定する。「業界の慣習」「会社の経費がかかる」という説明を行い、具体的な数字の説明を避ける。

タイプ2:押し込み型(強制アサイン)

エンジニアの希望や適性を無視して、人手不足の案件に一方的にアサインする。待機期間中の給与を大幅に下げることで、経済的に追い詰めてどんな案件でも受けさせる。

タイプ3:放置型(サポートゼロ)

アサインした後は完全に放置。定期面談なし、案件トラブル時の対応なし、キャリア相談の窓口なし。

タイプ4:違法型(偽装請負)

SES契約(準委任契約)を名目にしながら、実態は偽装請負や違法派遣に該当する運営をしている。


ホワイトSES企業の見分け方:数値基準で判断する10の指標

指標1:マージン率の透明性と数値

基準:マージン率20〜35%を数値で開示しているか

マージン率評価
20〜30%業界水準内。コスト込みなら透明性が高い
30〜40%許容範囲。計算根拠の説明があれば問題ない
40〜50%要注意。根拠の説明が求められる
50%超開示していればまだ判断できるが、実質的に高い
非開示問題あり。隠す理由があると見るべきだ

指標2:待機期間の給与保証

基準:基本給の100%が保証されているか

待機期間の待遇評価
基本給100%保証ホワイトの基準
基本給の80%〜99%許容範囲
基本給の60〜79%要注意
60%未満、または無給ブラックの兆候

指標3:案件の選択権

基準:複数案件の提示と断る権利が明示されているか

指標4:定期面談の頻度

基準:月1回以上の1on1面談があるか

面談頻度評価
月2回以上手厚いフォロー体制
月1回業界標準のホワイト基準
四半期に1回最低限
問題が起きたときだけ放置型確定

指標5:残業代の適正支払い

基準:固定残業代の時間数と、超過分の支払い有無

指標6:エンド直案件の比率

基準:1次請け案件が50%以上あるか

エンド直比率評価
70%以上商流が浅く、単価が高い傾向
50〜70%業界平均以上
30〜50%2次・3次請けが中心
30%未満構造的に単価を上げにくい

指標7:スキルアップ支援の具体的な制度

基準:数値で確認できるスキル支援制度があるか

数字で答えられない企業は、制度が形骸化している可能性がある。

指標8:年間離職率

基準:年間離職率20%未満か

年間離職率評価
10%未満定着率が高い
10〜20%業界平均
20〜30%要注意
30%超構造的な問題がある可能性

指標9:口コミの内容と一貫性

OpenWork、転職会議などの口コミサイトを活用するが、複数の口コミで共通して指摘されている点を重視する。

指標10:Webサイトの透明性

項目開示あり開示なし
資本金透明性がある隠す理由があるか小規模
代表者名・顔責任の所在が明確匿名性が気になる
マージン率・還元率の記載明示的な透明性非開示方針

面接で使える確認質問テンプレート(コピペ用)

以下の質問を面接でそのまま使ってほしい。これらの質問に嫌な顔をする企業は入社後も透明性に問題がある。


単価・マージン関連

「私の契約単価はエンジニアに開示される方針ですか?また、御社のマージン率は具体的に何%程度で、その計算には社会保険料の会社負担分も含まれますか?」


案件選択・アサイン関連

「案件のアサインはどのように決まりますか?エンジニア側から複数の案件が提示されて、希望を出して選ぶ形ですか?案件を断った場合に何らかのペナルティはありますか?」


待機期間関連

「案件と案件の間の待機期間中は、給与はどのように扱われますか?基本給の何%が保証されますか?」


フォロー体制関連

「入社後、担当の営業やマネージャーとはどの程度の頻度でコミュニケーションが取れますか?案件でトラブルが起きた場合の対応フローを教えてください」


スキルアップ・定着関連

「資格取得補助や技術書購入補助など、スキルアップ支援の具体的な制度と金額を教えてください。また、直近1年でエンジニアの入社人数と退職人数はそれぞれ何名ですか?」


退職・契約関連

「内定後に雇用契約書を事前に確認することは可能ですか?退職時の競業避止義務の範囲と期間についても教えてください」


入社後に「ブラックだった」と気づいた場合の脱出方法

ステップ1:事実を記録する(即座に)

ブラックと感じた瞬間から、日時・誰が何を言ったか・メール/チャットのスクリーンショット・給与明細を記録し始める。

ステップ2:相談先に連絡する

無料で相談できる窓口

  • 労働基準監督署:残業代未払い、違法な扱いへの対応
  • 総合労働相談コーナー:労働問題全般
  • 法テラス:弁護士費用の立替制度あり

ステップ3:在職中から転職活動を開始する

「辞めてから転職する」より「在職中に転職先を決める」方が交渉力が高く、経済的リスクも少ない。実際にHeydayに転籍したK.Tさんの体験談 →

ステップ4:退職する

退職は法的権利だ。正社員は2週間前に申し出れば退職できる(民法627条)。

よくある脅し文句と現実

脅し文句現実
「案件の途中で辞めたら損害賠償を請求する」正社員の退職による損害賠償請求は、裁判でほぼ認められない
「退職金は払わない」就業規則に規定があれば支払い義務がある
「懲戒解雇にする」正当な事由なく懲戒解雇はできない
「業界でブラックリストに載せる」法的根拠なく行えば名誉毀損・不法行為になり得る

SES業界の構造的問題は変わりつつあるか

変化している点:

  • 単価開示・高還元を標準とする企業が増えている
  • エンジニアのSNSリテラシーが上がり、口コミが広まりやすくなった
  • 厚生労働省による偽装請負への指導が強化されている

変わっていない点:

  • 多重下請け構造そのものは残っている
  • 参入障壁の低さは変わらず、悪質な企業が参入し続けている

ホワイト企業の口コミに共通するパターン

OpenWorkや転職会議でホワイトと評価されているSES企業の口コミには、いくつか共通するキーワードが登場する。

ポジティブ口コミに共通する表現

  • 「単価を開示してもらえた」「マージンを教えてもらえた」
  • 「面談を断っても怒られなかった」「断ったら別の案件を探してくれた」
  • 「困ったときに担当がすぐに動いてくれた」
  • 「給与が上がる仕組みが分かりやすかった」

これらはいずれも「透明性」と「対応の誠実さ」に関連している。口コミを読む際は、こうしたキーワードを意識して確認するといい。

ネガティブ口コミの見極め方

退職者の口コミは、どうしてもネガティブに偏る。ただし「単価を教えてもらえなかった」「退職を引き留められた」「面談がなかった」など、透明性・対応に関するネガティブ評価は、現在進行形の問題として重みを持つ。一方で「案件がきつかった」「成長できなかった」という評価は、本人の適性や期待値とのミスマッチが影響している場合も多い。


チェックリスト:まとめ(保存用)

求人・応募段階(3項目)

  • 給与レンジが極端に広くない(年収差200万以内が目安)
  • 常時大量募集でない
  • ホームページに代表者名・顔・具体的な数値が記載されている

面接段階(6項目)

  • 契約単価の開示方針がYesと回答できた
  • マージン率を具体的な数値(○%)で回答できた
  • 案件選択権について「複数提示して選択」と回答できた
  • 待機期間中の給与保証が基本給80%以上と確認できた
  • 定期面談の頻度が月1回以上と確認できた
  • 直近1年の入退社人数を具体的に回答できた

内定後(4項目)

  • 固定残業代に含まれる時間数を確認した
  • 雇用契約書と就業規則を入社承諾前に確認した
  • 競業避止義務の範囲と期間を確認した
  • 退職時の申し出期間を確認した

これら13項目のうち、2項目以上に問題があると感じた場合は、入社を再検討する価値がある。


おわりに

「SESやめとけ」と言われる理由は正直に認める。業界には問題のある企業が存在し、そこに入ったエンジニアが被害を受けた事例は多い。

ただし、その問題の本質は「SESという働き方」にあるのではなく、「不透明な企業」にある。やめるべきはSESではない。やめるべきは不透明な企業だ。

この記事で示した基準を使って、入社前に企業の実態を見抜いてほしい。


Heydayでは、契約単価の開示・マージン率の明示・案件選択権の付与・月次面談を標準としている。本記事で挙げた基準で、正しく厳しく判断してほしい。


企業を比較する前に:自分の市場単価を把握する

ホワイト企業を選ぶ力は、自分の市場価値を知ることで初めて機能する。「提示された給与が適正か」を判断するには、自分のスキルが市場でどう評価されているかを知る必要があるからだ。

市場単価を知ると、何が変わるのか

市場単価を把握していないエンジニアは、SES企業が提示する条件が「良いのか悪いのか」を感覚で判断するしかない。一方、市場単価を把握しているエンジニアは数字で比較できる。

たとえば、Java経験4年・AWS経験ありのエンジニアの市場単価レンジが60〜75万円であることを知っていれば、月額給与43万円を提示してきたSES企業に対して「還元率はどれくらいか」「なぜこの水準なのか」を問える。

知識が交渉力を生む。

スキルと市場単価の関係

以下の要素が市場単価に直接影響する。

要素単価への影響
Go、Python、Rustの経験ベースが高め
AWS認定資格(SAP等)+5〜10万円程度の効果
要件定義・基本設計経験+7〜10万円
PM・PL経験+10〜15万円以上
リモート対応可案件の選択肢が広がる

これを把握した上でSES企業と面談すると、「この企業が出している条件は市場水準の何%か」という比較が初めて成立する。


Heydayでは契約単価・マージン・商流をすべて開示しています

「自分の単価が適正か分からない」「もっといい条件の案件があるのでは」という方のご相談を受け付けている。 Heydayでは稼働前に契約単価を本人に開示し、マージン構造についても質問があればすべて回答している。

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よくある質問(FAQ)

Q. ホワイトSES企業の定義として最低限押さえるべき基準は何ですか?

本記事の10指標のうち、特に重要な3点がある。「マージン率の数値開示」「待機期間中の基本給80%以上保証」「月1回以上の定期面談」だ。この3点をクリアしている企業であれば、エンジニアを消耗品扱いせず、継続的な関係を重視していると判断できる。逆にこの3点に答えられない企業は、構造的な問題がある可能性が高い。入社前にこの3点だけでも必ず確認してほしい。

Q. 内定が出た後、入社承諾前に確認しておくべきことは何ですか?

雇用契約書と就業規則の2点を、入社承諾前に必ず確認する。特に確認すべきは「固定残業代に含まれる時間数」「競業避止義務の範囲と期間」「退職時の申し出期間」だ。また契約書に「案件途中の退職に損害賠償を請求する」条項がある場合は法的効力に疑問があるが、存在自体が警戒サインだ。「入社後に見せます」という企業には入社承諾を保留するか慎重に対応すべきだ。

Q. 転職エージェント経由でもホワイト企業かどうか判断できますか?

可能だが、判断の主体はエンジニア自身でなければならない。エージェントは紹介先企業から報酬を受けているため、利益相反が生じる場合がある。エージェントが特定の企業を強く推薦する場合は、その企業が支払う紹介手数料が高い可能性もある。エージェント経由でも、マージン率・商流・待機保証・離職率の4点は必ず自分で直接確認することが重要だ。エージェントを使うこと自体は問題ないが、最終判断は自分の基準で行うべきだ。


まず自分の市場単価を知る

SES企業を選ぶ前に、自分のスキルが市場でどう評価されているかを数字で把握しよう。言語・経験年数・クラウドスキルを入力するだけで、現在の市場単価レンジと伸ばすべきスキルが分かる。

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この記事の内容を、実際に経験した人の話で確かめてほしい。

まとめ

やめるべきはSESという業態ではなく、不透明な企業だ。この記事の数値基準とチェックリストを使えば、今の会社がブラックかどうかを客観的に判断できる。判断した結果「ここはダメだ」と思ったら、この記事の脱出手順を使ってほしい。

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小川将司

この記事の著者

小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

IT業界12年・SES事業6年の経営者が業界の構造的問題を正直に語る

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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