単価・市場データ13独自データあり

情報処理安全確保支援士は
フリーランスで意味ないのか

小川将司
小川将司代表取締役

SES事業6期目・セキュリティ案件358件を実測公開している経営者が執筆

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この記事でわかること

  • セキュリティ/SOC/CSIRT案件の単価上限中央値は75万円、p75は90万円、最大200万円(Heyday案件データベース実測・2026年3月〜8月・N=14,090件)
  • 「支援士は意味ない」が成立するのは実務経験が伴わない場合。案件票の要件はほぼ実務ベースで書かれており、資格単独では通らない
  • セキュリティ案件はエンド直(発注元直請け)比率が6.1%と主要タグ中で最も高く、中間マージンが乗りにくい領域
  • 一方でリモート可率は56.5%と主要タグの中でも低い。機密性の高さがそのまま常駐要件に出ている

この記事の対象: 情報処理安全確保支援士を取得済み/検討中のエンジニア、セキュリティ領域でフリーランス独立を考えている人

「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)って、結局意味ないんですよね?」

この質問を、年に何度も受ける。ネット上でも「維持費だけ取られる」「実務で使わない」という声は多い。一方で、Heydayに届く案件票の中には「情報処理安全確保支援士 尚可」「同等の知識を有すること」という記載が確かに存在する。

意味がないと言う人と、要件に書く企業。どちらも嘘をついていない。ずれているのは「どの案件の話をしているか」だ。

Heydayでは2026年3月から8月にかけて案件データベースに入った14,090件を技術タグ別に集計している。セキュリティ/SOC/CSIRTタグは358件。この358件の中身を見ると、支援士が効く案件と効かない案件がはっきり分かれている。

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まずセキュリティ案件の実測データを出す

項目セキュリティ/SOC/CSIRT
案件数358件
単価上限の記載があった件数166件
単価上限 p2565万円
単価上限 中央値75万円
単価上限 p7590万円
単価上限 最大200万円
単価下限の中央値65万円
リモート可率56.5%(記載214件中)
直近3ヶ月の案件数70件

(出典:Heyday案件データベース実測・2026年3月〜8月・N=14,090件)

他タグと並べると位置づけが分かりやすい。

技術タグ案件数単価上限 中央値単価上限 p75リモート可率
セキュリティ/SOC/CSIRT358件75万円90万円56.5%
インフラ/NW763件75万円85万円52.9%
AWS1,390件80万円90万円73.3%
Java1,922件70万円80万円60.7%
Python959件75万円90万円71.5%

(出典:Heyday案件データベース実測・2026年3月〜8月・N=14,090件)

セキュリティの中央値75万円は、インフラ/NWと同じ、Javaより5万円高い。「セキュリティだから飛び抜けて高い」わけではない。ただしp75は90万円で、インフラ/NW(85万円)を上回る。中央値では差がつかないが、上位層で差がつく——これがセキュリティ領域の単価構造だ。

セキュリティ職種全体の単価レンジやキャリアパスはセキュリティエンジニアSES単価2026にまとめてあるので、本記事は「支援士という資格」に絞って書く。


「意味ない」と言われる3つの理由と、その正誤

理由1:維持コストがかかる

情報処理安全確保支援士は、合格して終わりではない。登録を維持するには定期的な講習の受講が必要で、そのための費用が継続的に発生する。取得後に実務で使わなければ、コストだけが残る。

これは事実だ。「意味ない」派の主張の中で最も反論しにくい部分でもある。年間の維持コストに対して、案件単価が上がらなければ純粋な赤字になる。

理由2:案件票の必須要件になりにくい

Heydayに届くセキュリティ案件358件を見る限り、要件の書き方は実務ベースが圧倒的に多い。「SOC運用経験3年以上」「インシデント対応の実務経験」「CSIRT構築の実績」——こうした表現が中心で、資格名が必須条件として単独で書かれるケースは限定的だ。

つまり、支援士を持っていても実務経験がなければ通らない。ここが「意味ない」と感じる最大の発生源だと考えている。

理由3:単価に直接乗らない

実測データで75万円という中央値が出ているのは「セキュリティ案件」であって「支援士保有者」ではない。案件票の単価は発注側の予算で決まっており、資格の有無で予算が動くことは基本的にない。「資格を取れば単価が上がる」という理解は、そもそも構造として成立しにくい。

資格全般が単価に効く/効かない構造はSES単価が上がる資格・上がらない資格で詳しく整理している。


それでも支援士が効く場面が3つある

小川(代表)コメント

私が支援士を「意味なくない」と考えているのは、単価が上がるからではない。セキュリティ領域は、案件の性質上「信用を先に証明しないと入れない」市場だからだ。

顧客の機密情報や監査対象システムに触れる案件で、発注側が最初に見るのは「この人を入れて説明責任が立つか」という点になる。実務経験があるのは前提として、その上で国家資格の登録者であることは、稟議を通す側にとって使いやすい材料になる。単価ではなく、入り口の話だ。

場面1:官公庁・金融など、体制説明が必要な案件

発注側が親会社や監査法人に対して体制を説明する必要がある案件では、資格の有無が採用可否に直結しやすい。「意味ない」と言われる資格が、この層では効く。

場面2:エンド直の案件に食い込むとき

実測データで見ると、セキュリティ案件はエンド直(発注元の直請け)の比率が高い。

技術タグ案件数エンド直の件数エンド直比率
セキュリティ/SOC/CSIRT358件22件6.1%
インフラ/NW763件40件5.2%
TypeScript832件40件4.8%
PMO/PM1,682件69件4.1%
AWS1,390件55件4.0%
Java1,922件57件3.0%

(出典:Heyday案件データベース実測・2026年3月〜8月・N=14,090件。商流の記載がない案件が大半のため、比率は「商流が明記された案件の出現率」として読んでほしい)

セキュリティ領域はエンド直比率が主要タグ中で最も高い。中間に会社が挟まりにくい=マージンが抜かれにくい構造だ。商流の仕組みそのものは商流の階層構造を理解する、元請け案件の実態はSESの元請け(プライム)案件とはを参照してほしい。

そしてエンド直案件ほど、発注側が「有資格者を入れたい」と明示してくる傾向がある。フリーランスとして商流の上流を取りに行くなら、支援士は投資対効果が合いやすい。

場面3:フリーランスとして単価交渉のテーブルに乗るとき

フリーランスは「自分の値札を自分で説明する」必要がある。実務経験の記述だけでは、同じ経験年数の候補者と横並びになる。国家資格の登録者であることは、p75の90万円レンジを要求する際の補強材料として使える。


フリーランスとしてセキュリティ案件を狙うときの注意点

リモート可率56.5%——常駐前提の案件が多い

セキュリティ案件のリモート可率は56.5%(リモート可否の記載があった214件が母数)。AWS 73.3%、Python 71.5%と比べて明確に低い。

理由は単純で、機密性の高いシステムを扱う案件が多いためだ。閉域網からしか触れない環境、入退室管理のある部屋での作業——こうした要件が常駐を強制する。地方在住でフルリモート前提のフリーランスにとっては、セキュリティ領域は選択肢が狭くなる。リモート案件の実情はSESでフルリモートは可能かにまとめている。

直近3ヶ月70件——流通量は安定している

セキュリティタグの直近3ヶ月の案件数は70件。358件のうち約20%が直近3ヶ月に集中している計算になる。月あたり23件前後で、GCP(直近3ヶ月20件)のような極端な品薄ではない。フリーランスとして待機リスクを取りにくい人にとって、この流通量は安心材料になる。

単価下限中央値65万円という現実

セキュリティ案件の単価「下限」の中央値は65万円だ。上限の中央値75万円との間に10万円の幅がある。案件票の上限だけ見て期待値を上げると、実際の提示額とのギャップに落胆することになる。実務経験が浅い段階では下限側で決まるのが普通だと考えておいたほうがいい。


支援士を取るべき人・取らなくていい人

取るべき人

  • すでにSOC運用・インシデント対応・脆弱性診断などの実務経験が2年以上ある
  • 官公庁・金融など、体制説明が必要な発注元の案件を狙っている
  • フリーランスとして商流の上流(エンド直・1次)を取りに行きたい

取らなくていい人

  • セキュリティの実務経験がなく、資格から入ろうとしている
  • インフラ運用が中心で、当面セキュリティ専任に移る予定がない
  • 完全リモートが絶対条件(セキュリティ案件のリモート可率は56.5%)

実務経験ゼロで資格から入るルートは、クラウド資格でも同じ落とし穴がある。AWS SAA取得でSES単価はいくら上がるかで検証したとおり、資格が効くのは実務が先にある場合だけだ。


よくある質問(FAQ)

Q. 情報処理安全確保支援士は本当に意味ないのですか?

実務経験がない状態では、単価にも案件獲得にもほとんど効かない。この意味では「意味ない」は正しい。ただし実務経験が2年以上あり、官公庁・金融系やエンド直案件を狙う場合は、稟議を通す側の材料として明確に効く。「意味ない」かどうかは資格の性質ではなく、持ち主の実務経験と狙う案件層で決まる。

Q. 支援士を持つとセキュリティ案件の単価はいくらになりますか?

資格による加算という形では答えられない。Heydayの実測ではセキュリティ/SOC/CSIRT案件の単価上限中央値は75万円、p75は90万円、最大200万円だ(2026年3月〜8月・N=14,090件)。この分布のどこに入るかは実務内容で決まり、資格はその主張を補強する材料として働く。

Q. セキュリティ案件はリモートで働けますか?

実測ではリモート可率56.5%(リモート可否の記載があった214件が母数)。AWS 73.3%・Python 71.5%と比べて低く、常駐前提の案件が多い。機密情報を扱う性質上、閉域網や入退室管理のある環境が要求されるためだ。フルリモートを絶対条件にすると、選べる案件は大きく減る。

Q. CISSPと情報処理安全確保支援士はどちらが有利ですか?

狙う発注元による。日本の官公庁・金融系の案件では国家資格である支援士のほうが説明しやすい場面が多い一方、外資系や国際案件ではCISSPの認知度が高いと業界では言われている。Heydayの案件データベースは案件票の技術要件を集計したもので、資格別の単価差を追跡したデータは持っていないため、ここは実測ではなく市場での一般論として書いている。

Q. 未経験からセキュリティ案件に入るにはどうすればいいですか?

インフラ/NW(763件)で運用経験を積み、そこからSOC・監視の案件に横移動するルートが現実的だ。インフラ/NWの単価上限中央値は75万円でセキュリティと同水準のため、単価を下げずに移行できる。詳しくはインフラエンジニアのSES単価を参照してほしい。

Q. フリーランスと会社員、セキュリティ領域ではどちらが有利ですか?

エンド直比率が6.1%と主要タグ中で最も高いことを考えると、商流の上流を狙えるフリーランスの旨味は大きい。一方でセキュリティ案件は常駐率が高く、契約形態や入場手続きが厳格なため、会社の看板があるほうが入りやすい案件も存在する。判断材料はSESからフリーランス独立の判断基準にまとめている。


まとめ

  • セキュリティ/SOC/CSIRT案件は358件、単価上限中央値75万円、p75 90万円、最大200万円(Heyday案件データベース実測・2026年3月〜8月・N=14,090件)
  • 「支援士は意味ない」は、実務経験がない場合には正しい。案件票の要件はほぼ実務ベースで書かれている
  • エンド直比率6.1%は主要タグ中で最高。中間マージンが乗りにくく、上流を狙うフリーランスには有利
  • リモート可率56.5%は低め。機密性の高さが常駐要件として現れている
  • 直近3ヶ月70件と流通量は安定しており、待機リスクは相対的に低い

資格を取るかどうかを迷っているなら、先に自分の実務経験がこの358件のどのレンジに入るかを確認したほうが早い。

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この記事の著者

小川将司
小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

SES事業6期目・セキュリティ案件358件を実測公開している経営者が執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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