Heydayが2026年3月に集計した案件データによると、同じJava経験5年・金融系業務アプリでも、エンド直案件は月単価70万円、三次請け案件は45万円になったケースがある。差額は25万円だが、年換算で300万円の差だ。この差は、エンジニアのスキルではなく「商流の段数」だけで決まっていた。
「プライム案件」という言葉をSES業界でよく聞くが、具体的に何が違うのか、どうすれば辿り着けるのかを把握しているエンジニアは少ない。この記事では、プライム案件の定義から、プライム案件を持つSES企業の見分け方、プライム案件を取りやすいエンジニアの条件までを、事業者側のデータを開示しながら解説する。
プライム案件(一次請け)とは何か
エンドクライアントとエンジニアの最短ルート
「プライム案件」とは、SES企業がエンドクライアント(最終発注者)と直接契約している案件のことだ。「エンド直」「一次請け」とも呼ばれる。
SES業界では、エンドクライアントからエンジニアまでの間に複数の企業が介在する多重下請け構造が一般的だ。プライム案件は、この中間工程を最小化した状態を指す。
【プライム案件(エンド直)】
エンドクライアント
↓ 直接契約
SES企業(Heyday等)
↓
エンジニア
【二次請け案件】
エンドクライアント
↓ 契約
元請けSIer
↓ 契約
SES企業
↓
エンジニア
【三次請け案件】
エンドクライアント
↓ 契約
元請けSIer
↓ 契約
一次下請け
↓ 契約
SES企業
↓
エンジニア
商流の段数が単価に与える影響
各レイヤーに入る中間企業は、受け取った単価からマージンを差し引いて次の企業に流す。マージン率は企業によって異なるが、概ね10〜20%の範囲だ。
商流が1段深まるたびに、エンジニアに届く単価は削られていく。
| 商流 | エンド単価 | 中間企業のマージン | エンジニアへの支払い |
|---|---|---|---|
| エンド直(一次) | 80万円 | SES社内のみ | 60〜68万円 |
| 二次請け | 80万円 | 元請け10〜15% | 52〜60万円 |
| 三次請け | 80万円 | 元請け+一次各10〜15% | 44〜52万円 |
三次請けになると、エンド単価の44〜52%しかエンジニア側に届かない計算になる。エンドクライアントが高い金額を支払っていても、エンジニアの手取りが低い原因はここにある。
SES商流の仕組みについて詳しくは「SES商流とは|エンド直・元請け・多重下請けの違い」で解説している。
商流の深さで単価はいくら変わるか【実データ】
Heyday 2026年3月集計:同スキル・同業務での単価比較
Heydayが2026年3月に集計した成約案件データ(経験3〜7年のエンジニア、n=42件)から、同スキル・同業務でも商流によって単価差が生まれているケースを示す。
事例1: Java 5年目・金融系業務アプリ
| 商流 | 月単価 |
|---|---|
| エンド直 | 70万円 |
| 二次請け | 57万円 |
| 三次請け | 45万円 |
差額: エンド直 vs 三次請け = 25万円/月(年300万円)
事例2: Python 4年目・データ基盤構築(AWS経験あり)
| 商流 | 月単価 |
|---|---|
| エンド直 | 75万円 |
| 二次請け | 60万円 |
| 三次請け | 48万円 |
差額: エンド直 vs 三次請け = 27万円/月(年324万円)
事例3: Java/Spring Boot 7年目・製造業基幹システム
| 商流 | 月単価 |
|---|---|
| エンド直 | 90万円 |
| 二次請け | 72万円 |
| 三次請け | 55万円 |
差額: エンド直 vs 三次請け = 35万円/月(年420万円)
スキルが上がれば上がるほど、商流の深さによる損失額も大きくなる。スキルレンジが高い案件ほど中間マージンの絶対額が膨らむためだ。
中抜き構造の詳細については「SES『中抜き』の正体:誰が・いくら・なぜ取っているのか」で解説している。
プライム案件を持つSES企業の4つの見分け方
プライム案件を持つかどうかは、SES企業選びの最重要軸のひとつだ。ただし「エンド直100%です」と言う企業がすべて正直とは限らない。以下の4軸で確認する。
1. 取引先企業名を公開しているか
プライム案件を本当に持つSES企業は、取引先のエンドクライアント名を開示できる。「主要取引先: ○○銀行・○○証券・○○メーカー」のように具体名が出せるなら、エンド直契約の蓋然性が高い。
「大手企業多数」「上場企業中心」という曖昧な表現しかない場合は、中間企業を経由している可能性がある。
2. 商流の段数を明示しているか
「エンド直」「一次請け」の文言があっても、それが「自社が元請けのエンド直」なのか「二次請けの中では一次に近い」という意味なのかで大きく異なる。
確認すべきは、「御社とエンドクライアントの間に何社入りますか?」という直接質問への回答だ。「0社(直接契約)」と答えられるなら本物のプライム案件だ。
3. 単価開示ポリシーがあるか
エンドクライアントからの受注単価と、エンジニアへの支払い単価の両方を開示している企業は、商流に自信がある証拠だ。受注単価を隠す企業は、商流の深さを開示したくない可能性がある。
Heydayでは、案件ごとの受注単価とエンジニアへの還元額を面談時に開示している。「いくら受けていくら払うか」が言えない会社は、商流が深い場合が多い。
4. 「エンド直100%」と言うときの確認方法
「エンド直100%」と主張するSES企業に対して、以下の質問を使う。
- 「直近6ヶ月の成約案件のうち、エンドクライアントと直接契約しているものは何件ですか?」
- 「私が担当する案件の発注書を見せてもらえますか?」
- 「エンドクライアントの担当者と直接会う機会はありますか?」
契約書や発注書を見せられない、エンドクライアントとの接点が説明できない場合は、実態として二次請け以降の可能性が高い。
SES企業の選び方のチェックリストは「SES企業の選び方|ホワイト企業を見分ける7つのチェックリスト」でも整理している。
