「セキュリティエンジニアは単価が高い」という話を耳にする頻度が、ここ2〜3年で明らかに増えた。
実際、Heydayで扱う案件の中でも、セキュリティ関連の案件単価は他のIT系職種と比べて高い水準で推移している。2025〜2026年にかけては、ランサムウェアの被害増加・経済安全保障対応・DX推進に伴うクラウドセキュリティ需要が重なり、セキュリティエンジニアへの引き合いが他の職種に比べて強い状態が続いている。
ただし「セキュリティエンジニア」といっても、ペネトレーションテスト専門・SOCアナリスト・脆弱性診断・クラウドセキュリティ設計など、専門領域によって単価帯とキャリアパスは大きく異なる。
この記事では、SES市場におけるセキュリティエンジニアの単価相場を専門領域別に分解し、資格・スキルが実際にどう単価に影響するかを解説する。
セキュリティエンジニアの需要が急増している背景(2025〜2026年)
サイバー攻撃の質的変化
2023〜2025年にかけて、日本企業のランサムウェア被害件数は急増した。被害の特徴として、中小企業だけでなく大手企業・医療機関・官公庁が標的になるケースが増え、事業継続リスクとして経営レベルの課題になった。
この流れを受け、「セキュリティ対策は情報システム部門の仕事」から「経営として取り組むべき課題」へと位置づけが変わりつつある。セキュリティ専門の外部エンジニアへの需要が増えたのは、この認識変化の影響が大きい。
法規制・ガイドラインの強化
2024年以降、改正個人情報保護法の運用強化・金融庁のサイバーセキュリティガイドライン改訂・経済安全保障推進法への対応など、セキュリティ関連の法規制が強化された。規制対応のために専門知識を持つエンジニアを外部から調達するケースが増えている。
クラウド移行に伴うセキュリティ設計需要
DX推進でクラウド移行が進む一方、クラウド環境のセキュリティ設計ができるエンジニアは依然として不足している。AWSやAzureのセキュリティ機能(IAM・SecurityHub・GuardDuty等)を設計レベルで扱えるエンジニアは、インフラ系とセキュリティ系の双方の知識が必要なため、希少性が高くなっている。
セキュリティエンジニアのSES単価相場【Heydayデータ】
Heydayで2026年Q1時点に扱った案件および取引のある企業との情報共有に基づく単価レンジを示す。経験年数3〜10年を想定した目安だ。なお、単価は案件の規模・難易度・クライアントの業種によって変動する。
ペネトレーションテスト
ペネトレーションテストは、実際のサイバー攻撃を擬似的に行い、システムの脆弱性を検証する専門業務だ。高度な攻撃技術と倫理的な判断力の両方が求められる。
| 経験・スキル | 単価レンジ(月額) |
|---|---|
| 基本的なWebアプリ診断(2〜3年) | 60〜75万円 |
| ネットワーク・インフラ含む包括診断(3〜5年) | 75〜90万円 |
| レッドチーム演習・高度なAPT模擬(5年以上) | 90〜120万円以上 |
ペネトレーションテストの専門家は絶対数が少なく、需要に対して供給が追いついていない領域だ。CEH(Certified Ethical Hacker)やOSCP(Offensive Security Certified Professional)の資格保有者は、単価交渉で有利に動けることが多い。
SOC(Security Operations Center)アナリスト
SOCは24時間365日のシステム監視・インシデント対応を行う組織・業務だ。アナリストレベルは段階的に分かれており、L1(アラート一次対応)からL3(高度分析・マルウェア解析)で単価帯が異なる。
| レベル | 主な業務 | 単価レンジ(月額) |
|---|---|---|
| L1(一次対応) | アラートトリアージ・インシデントチケット起票 | 40〜55万円 |
| L2(二次対応) | 詳細調査・ログ分析・SIEM活用 | 55〜75万円 |
| L3(高度分析) | マルウェア解析・脅威インテリジェンス・CSIRT連携 | 75〜100万円 |
SOC案件の特徴として、シフト勤務・常駐が多い。フルリモートは限定的で、特定の施設内での作業が求められるケースもある。
脆弱性診断
Webアプリケーション・ネットワーク・スマホアプリの脆弱性診断を専門にする領域だ。OWASP Top 10などのフレームワークに基づく診断が基本となる。
| 経験・スキル | 単価レンジ(月額) |
|---|---|
| Webアプリ診断(2〜3年) | 55〜70万円 |
| Webアプリ+ネットワーク診断(3〜5年) | 65〜80万円 |
| スマホアプリ・組み込み系含む複合診断(5年以上) | 80〜100万円 |
クラウドセキュリティ設計
AWSやAzureのセキュリティ設計・ゼロトラストアーキテクチャの導入支援を担う領域で、近年最も需要が高まっている分野のひとつだ。
| 経験・スキル | 単価レンジ(月額) |
|---|---|
| クラウドセキュリティ設計・実装(3〜5年) | 70〜90万円 |
| ゼロトラスト設計・マルチクラウド対応(5年以上) | 85〜110万円 |
参考: Heyday自社案件データ(2026年Q1集計)。経験3〜10年想定。単価は案件規模・クライアント業種・契約形態により変動する。
単価を左右する資格・スキル
情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)
IPAが認定する国家資格で、セキュリティの専門家として唯一の国家資格だ。
単価への影響として、資格単体で+5〜10万円の交渉根拠になるケースがある。特に、官公庁・金融・医療など規制の厳しい業種の案件では、「登録セキスペを求める」という条件が増えている。
ただし、登録には3年ごとの更新(講習受講・費用負担あり)が必要なため、維持コストも考慮が必要だ。
CISSP(Certified Information Systems Security Professional)
ISC²が認定する国際資格で、セキュリティの幅広い知識領域(8ドメイン)を問う。セキュリティ管理・ガバナンス・設計の上位ポジションで評価される。
- 対象: 5年以上の実務経験を持つシニア層
- 単価への影響: +10〜20万円(マネジメント・CISO補佐ポジション)
- SES市場での位置づけ: 希少性が高く、外資系・コンサル系の案件で特に有効
CEH(Certified Ethical Hacker)
EC-Councilが認定する資格で、攻撃者の手法を理解したうえでシステムを防御するスキルを証明する。ペネトレーションテスト系の案件で評価される。
CompTIA Security+
エントリーレベルのセキュリティ資格として国際的に認知されている。経験が浅い段階での差別化に使えるが、3〜5年以上の経験者には基礎資格として位置づけられる。
AWS Security Specialty / Azure Security Engineer
クラウドセキュリティに特化した資格だ。クラウドインフラのセキュリティ設計案件では、実務経験との組み合わせで単価交渉の根拠になる。
