セキュリティエンジニアに未経験から入れるか。Heydayは「入れる」とは約束できない。言えるのは、実務を積む順序と、案件票やSES会社の側で確認できる点だ。結論は次のとおり。
- 専門職に直接入る道は約束できない。実務を積むルートは、インフラ・ネットワークから、開発から、SOCのL1からの3つ
- インフラ/NWとセキュリティは、案件票の上限単価の中央値がどちらも75万円で同水準。ただし、個人が移ったときの単価を示す数字ではない
- 資格は実務のあとに考える。SES会社には、案件の選択、研修、次の案件、契約単価と商流を確認する
この記事で言う「未経験」と、言えないこと
「未経験」は、状態によって話が変わる。この記事は、2番目の状態の人を主な読者にしている。
| 状態 | 例 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| IT実務の経験がない | 学生、他業種からの転換 | 範囲外。SESの未経験の入口はSES未経験の単価・年収相場を参照 |
| IT実務はあるが、セキュリティは未経験 | インフラ、開発、運用の経験者 | 中心の読者。3つのルートで説明する |
| セキュリティの別の領域は経験済み | SOCの経験者が診断やCSIRTへ進む | 各記事へ。SOC、CSIRT、脆弱性診断 |
言えないことも書いておく。年代別(30代など)の傾向、SESでセキュリティ案件に入れる確率、未経験可の案件の件数と割合は、Heydayにデータがない。数字を作って書くことはしない。
未経験可と書かれる領域と、その限界
案件票に未経験可と書かれることがあるのは、SOCのL1、運用監視、セキュリティ製品(ファイアウォール、EDR、WAFなど)の運用といった領域だ。手順書に沿って動く仕事が中心で、経験者を前提にしにくいためだろう。
限界は3つある。
- 「未経験可」の中身が、案件ごとに違う。研修があるのか、手順書だけで現場が始まるのかで、積める経験が変わる
- 海外の記事には、AIを備えたSIEMなどの普及で、入門的な職の求人が減っているという指摘がある。国内で同じことが起きているかを示すデータは、確認できていない
- 未経験可と書かれた案件の件数や割合は、集計していない
案件票の見分け方は、SOCアナリストの単価と未経験からの入り方に6つの確認点としてまとめた。
ルートA:インフラ・ネットワークから
インフラ・ネットワークの経験は、セキュリティの仕事と重なる範囲が広い。ファイアウォールやVPNの設定、サーバーの認証とログの管理、OSやミドルウェアのパッチ適用は、そのままセキュリティの業務でもある。
IPAは2025年11月に、VPN機器などの境界機器で深刻な脆弱性や設定不備が相次いでいるとして、注意喚起を出した(出典:@IT、2025年11月12日の報道。記事)。機器の棚卸し、パッチ、設定の見直しは、インフラの経験者が担える仕事であり、セキュリティの仕事でもある。
単価の水準は、同じ定義で並べて比べる。
| 項目 | セキュリティ/SOC/CSIRT | インフラ/NW |
|---|---|---|
| 掲載行数(重複除去前) | 358件 | 763件 |
| 単価上限が読めた件数 | 166件 | 346件 |
| 単価上限 p25/中央値/p75 | 65/75/90万円 | 68/75/85万円 |
| 単価上限 最大 | 200万円 | 180万円 |
| 単価下限が読めた件数と、その中央値 | 45件・65万円 | 121件・70万円 |
| リモート可率(可否の記載があった件数) | 56.5%(214件) | 52.9%(476件) |
データの読み方
- 出典:Heydayの案件データベース(案件メール由来の掲載行)。2026年3〜8月に受信、重複除去前。2つのタグは同じ定義・同じ期間で集計している
- 技術タグは、必須スキルと案件名に関連する語を含む行。セキュリティはセキュリティ・SOC・CSIRT・インシデント対応・脆弱性診断・IAM・WAFなど、インフラ/NWはネットワークやサーバーに関する語。1つの案件が複数のタグに入るため、両方に入る案件もあり、2つのグループは完全には分かれていない
- 単価は案件票に書かれた上限(発注側から SES 会社への企業向けの契約単価)で、エンジニアへの支払額(人材向けの単価)とは別の数字
読み取れることは3つある。
- 上限の中央値は、どちらも75万円。p75はセキュリティが5万円高く、p25はインフラ/NWが3万円高い。分布はほぼ重なっている
- インフラ/NWの経験を土台に、セキュリティ寄りの案件を探しても、提示単価の水準が大きく変わるという材料は、このデータにはない
- 下限の中央値はセキュリティが5万円低いが、読めたのが45件しかない。参考程度に見てほしい
ただし、これは案件票全体の分布の比較だ。個人が移ったときの単価は、経験の中身、案件の難度、交渉で決まる。上限だけを見て期待を決めないでほしい。インフラ側の単価の構造はインフラエンジニアのSES単価に書いた。
インフラの経験は、セキュリティの言葉に言い換えると、案件票や面談で伝わりやすくなる。
| インフラ側の経験 | セキュリティ側での呼び方 |
|---|---|
| ファイアウォール・VPNの設定変更 | 境界防御の運用、ルールの棚卸し |
| サーバーへのパッチ適用 | 脆弱性対応(パッチ管理) |
| アカウントやグループの管理 | ID管理、権限管理 |
| 監視とログ収集の設定 | ログ監視、SIEMへのログ収集 |
| 障害の切り分けと報告 | インシデント対応の初動と報告 |
言い換えは、経験を盛るためではない。やってきたことを、相手が使っている言葉で説明するためのものだ。
ルートB:開発から脆弱性診断へ
開発の経験は、攻撃者の視点で弱点を探す脆弱性診断と、コードの弱点を見つけるレビューの両方に使える。Webアプリを作った経験があれば、認証、セッション、入力値の扱いのどこに弱点が出やすいかを、作り手の目で想像できる。学習の目安の一つとして、Webアプリの代表的なリスクをまとめたOWASP Top 10が知られている。
進め方は、3段階で考える。
- 現職で、セキュアコーディング、依存ライブラリの脆弱性対応、コードレビューのセキュリティ観点を担当する
- 自分で用意した検証環境や、学習用に公開されている環境で、脆弱性の再現と修正を試す
- 診断の案件で求められる経験を確認する。脆弱性診断の案件単価で整理している
許可のない対象には試さない
他人のサイトや、許可を得ていないシステムに攻撃的な通信を送ると、不正アクセス行為の禁止等に関する法律などに触れるおそれがある。学習は、自分で管理する環境か、学習用に公開された環境に限る。詳しくは脆弱性診断の記事で説明している。
ルートC:SOCのL1から
SOCのL1は、案件票に未経験可と書かれることがある領域の一つだ。見分け方、単価、シフトはSOCアナリストの単価と未経験からの入り方に書いた。ここでは、3つのルートの中での位置づけだけを示す。
- 利点:アラートが上がり、調べ、エスカレーションするという、セキュリティの現場の流れを最初から経験できる
- 限界:業務範囲が監視中心だと、技術の幅が広がりにくい。シフト勤務や常駐の条件がある。自動化の指摘もある
- 次の手:L1のあいだに、ルートAやBで得た知識を足して、L2(詳細調査)の仕事に広げる
資格は実務のあとに考える
資格から入る道は、この記事では勧めない。資格は実務の代わりにならないためだ。順序は、実務を積みながら、必要な知識を資格で体系立てる形が考えやすい。
資格の一覧は、ここでは作らない。Heydayには資格別の単価差を追跡したデータがなく、一覧に順位をつける根拠がないためだ。情報処理安全確保支援士の位置づけは情報処理安全確保支援士はフリーランスで意味ないのかに、資格全般が単価にどう効くかはSES単価が上がる資格・上がらない資格にまとめた。
試験制度は変わる予定がある。IPAは2026年3月31日に、2027年度からの新制度(試験区分と出題範囲)の案を公表している(IPAの公表)。最新の内容はIPAの試験区分のページで確認し、受験の計画は最新の公表を見て立ててほしい。
SES会社を選ぶ条件
実務を積む場として、SES会社を選ぶ。「おすすめのSES会社」の順位は、この記事では作らない。会社の良し悪しより、自分が積みたい経験と、その会社の案件が合うかで判断が分かれるためだ。代わりに、確認する点を挙げる。
| 確認する点 | 聞き方 |
|---|---|
| セキュリティ案件の取り扱い | 直近に扱った案件の種類(SOC、診断、運用など)は何か。具体的に答えてもらえるか |
| 案件の選択 | 入る案件を、業務内容つきで事前に説明してもらえるか。希望を伝えられるか |
| 契約単価と商流 | 契約単価と、入る現場までの商流を、参画前に教えてもらえるか |
| 研修と学習 | 内容、期間、費用の負担、学習時間の扱い |
| 次の案件 | 最初の案件のあと、何の経験を積ませる設計か |
| 契約形態 | 準委任か、派遣か。指揮命令の関係が曖昧になっていないか |
商流は、案件票からは読めないことが多い。Heydayのタグでは、商流が読めたのは358件中29件だった。契約形態の確認にはSES偽装請負チェックリストが使える。ここで挙げた質問は、Heydayにもそのまま聞いてほしい。
よくある質問(FAQ)
Q. 30代からでも遅くないですか?
年代別の参画状況を示すデータは、Heydayにない。「遅くない」とも「厳しい」とも言い切らない。経験の中身(インフラ、開発、運用)によって話が変わるので、状況を伺ったうえでお伝えする。30代の転職全般は30代SES転職の現実に書いた。
Q. 資格は先に取るべきですか?
実務のあとに考えることを勧める。資格は実務の代わりにならず、経験を説明する材料として使うのが考えやすい。試験制度が2027年度に変わる予定なので、計画は最新の公表を見て立ててほしい。
Q. 最初に身につけることは何ですか?
どのルートでも共通するのは、ネットワークとOSの基礎、ログの読み方、調べたことを文章にして伝える力だ。アラートや脆弱性の意味を、自分の言葉で説明できる状態を目指すとよい。
Q. 「未経験歓迎」の案件は信じてよいですか?
信じる・信じないではなく、中身を確認する。研修の有無、業務範囲、勤務の形、次の案件を、案件票と面談で確かめる。確認する点はSOCアナリストの記事に6つにまとめた。
個別に相談したいとき
どのルートが自分に近いか、いまの経験を案件票のどの条件に当てはめられるかは、この記事だけでは判断できない。状況を伺ったうえで、案件票の読み方を含めてお伝えする。
相談の前に、次の3点を書き出しておくと話が早い。
- これまでの経験(インフラ、開発、運用のどれを、どんな環境で)
- 触ったことのあるセキュリティ関連の作業(ファイアウォールの設定、権限管理、ログの確認など)
- 積みたい経験と、働き方の希望(勤務地、リモート、シフトの可否)
企業側がセキュリティ人材を探す事情は、セキュリティ人材・体制の相談窓口にまとめている。
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