SES歴3年目のエンジニアから、「今の単価が適正かどうかわからない」という相談を毎月複数受ける。
「3年もやってきたのに、単価が入社時とほぼ変わっていない」「転職を考えているが、相場を知らないまま動いていいのか不安」——こういった声だ。
SES3年目は、実は市場価値が最も大きく変わる時期だ。ここで適切に動けるかどうかで、その後の年収水準が100万円以上変わることは珍しくない。
この記事では、Heyday株式会社が2026年1〜3月に成約した案件データをもとに、3年目の実際の単価相場と、転職・単価交渉どちらを選ぶべきかの判断基準を解説する。
SES3年目は「市場価値の分岐点」である理由
未経験スタートから3年で何が変わるか
SES未経験入社の1年目は、単価の交渉余地はほぼない。現場にアサインされるだけで精一杯で、スキルシートに書ける実績も乏しい。未経験からの単価推移については別記事で詳しく解説しているが、1年目の相場は30〜40万円が大半だ。
2年目になると、特定の技術スタックで戦力として認められ始める。単価は45〜55万円程度に上がるケースが多い。ただし、これは「現場に慣れた」という評価であり、まだ「選ばれるエンジニア」とは言いにくい。
3年目で起きる変化は質が違う。
- 技術習熟: 特定言語・フレームワークで自走できる状態になる
- 商流理解: エンドクライアントとの折衝、要件整理など上流工程に入れるかどうかが見えてくる
- 面談力: 案件面談で自分のスキルを言語化できるようになる。これが単価の上限を決める
この3つが揃った3年目は、SES市場で「指名される」側に入れる。逆に揃っていない場合、現場の都合でアサインされ続ける「流される人」になる。
「選ばれるエンジニア」と「流される人」を分ける構造
この差は、能力の差というより情報の差だ。
市場単価を知っている人は、自分の単価が低ければ動ける。知らない人は、提示された単価が適正かどうか判断できないまま受け入れ続ける。3年間の実務を積んでも、市場に自分を晒した経験がなければ、その価値は本人にも会社にも見えない。
Heydayに相談に来る3年目エンジニアの約6割は、面談を経て初めて「自分の市場単価が今の単価より10〜20万円高い」と気づく。相談前から動いていた残りの4割は、すでにその差を把握して行動に移しているケースが多い。
SES3年目の単価相場【言語・商流別データ】
以下は、Heydayが2026年1〜3月に成約した案件データをもとに集計した、実務経験3〜5年のエンジニアの単価相場だ(エンド直・1次のみ)。
※出典:Heyday株式会社 自社案件成約データ(2026年1〜3月集計)。経験3〜5年想定。商流:エンド直・1次のみ。
言語別・クラウド経験有無別の相場
| 言語 | クラウドなし | AWS経験あり | GCP経験あり |
|---|---|---|---|
| Java | 45〜55万円 | 57〜68万円 | 55〜65万円 |
| Python | 50〜60万円 | 63〜75万円 | 62〜73万円 |
| Go | 55〜65万円 | 68〜78万円 | 65〜75万円 |
| TypeScript / React | 48〜58万円 | 60〜70万円 | 58〜68万円 |
| PHP(Laravel) | 42〜52万円 | 53〜63万円 | 51〜61万円 |
| C# / .NET | 45〜55万円 | 56〜66万円 | — |
| Swift / iOS | 50〜60万円 | 60〜70万円 | — |
クラウド経験の有無で単価が10〜15万円変わるのが、3年目前後で顕著に現れる特徴だ。
商流の深さで変わる「届く単価」
上の表はエンド直・1次の数字だ。商流が深くなると、同じスキルセットでも手元に届く単価は大きく下がる。
| 商流 | 上記相場からの差 |
|---|---|
| エンド直・1次 | 基準(0万円差) |
| 2次請け | −8〜12万円 |
| 3次請け以下 | −15〜25万円 |
3次請けで単価55万円の案件と、エンド直で単価65万円の案件では、「スキルシート上の職歴」に大きな差は出ない。しかし年収にすると120万円の差になる。商流の深さが単価に与える影響の詳細は、単価アップガイドで解説している。
あなたの単価は適正か?3つのチェック方法
1. 商流の段数を把握しているか
今の会社が、どのルートで案件を受注しているか確認しよう。
- 「エンドクライアントと直接契約している」→ エンド直
- 「○○社を通して紹介された案件」→ 1次以上
- 「どこから来た案件か分からない」→ 2次・3次の可能性が高い
商流が分からないまま単価を受け入れているなら、まずここを確認することが最初のステップだ。
2. スキルと業務内容のミスマッチがないか
3年目でありながら、1年目と変わらない業務(テスト・単純な改修のみ)を続けているケースがある。この場合、スキルシートに書ける経験が積み上がらず、市場価値の成長が止まる。
「技術的に成長しているか」より「何を任されているか」が単価に直結する。上流工程(要件定義・基本設計)への参加経験があるかどうかが、3年目の市場価値を大きく分ける。
3. 診断ツールで現在地を数値で把握する
言語・経験年数・クラウド経験・上流工程経験を入力すると、市場単価のレンジを算出できる。今の単価と照らし合わせることで、乖離があるかどうかを数値で把握できる。
3年目で取るべき行動:転職 vs 単価交渉の判断基準
今の会社で交渉すべきパターン
以下に当てはまる場合、まず今の会社での単価交渉を試みる価値がある。
- 案件の商流がエンド直〜1次で、構造的に単価の上限が見えている
- 評価制度があり、スキルアップが単価に反映されるルールが存在する
- 営業担当が単価交渉に積極的で、過去に他のエンジニアの単価が上がった実績がある
この3条件が揃っているなら、動くより先に交渉する方がリスクが低い。年収交渉の具体的な準備と進め方については、別記事で詳しく解説している。
転職すべきパターン
以下に複数当てはまる場合、交渉より転職を先に検討した方がいい。
- 商流が2次・3次で、構造的に単価の天井が低い
- 単価が非公開で、自分の単価とマージン率を教えてもらえない
- 過去2年間、単価が全く上がっていない
- 現場の業務内容が変わらず、スキルシートに書けることが増えていない
特に「単価非公開」は注意が必要だ。自分の市場価値を把握する権利が実質的に制限されている状態で、交渉のテーブルに着いても対等にはなれない。
判断の優先順位
- 商流の段数を確認する(これだけで転職理由になる場合がある)
- 単価の透明性を確認する(非公開なら転職を検討)
- 成長機会を確認する(上流工程に入れるか)
- 上記3つが問題なければ、交渉→不調なら転職の順で動く
