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SES実務3年目の
市場価値と単価相場

小川将司
小川将司代表取締役

IT業界12年・SES事業6年・100名以上の単価交渉に関わった経営者が執筆

この記事でわかること

  • SES3年目は「選ばれるエンジニア」と「流される人」に分かれる構造上の分岐点
  • 言語別・商流別の3年目単価相場(Heyday 2026Q1実案件データ)
  • 転職か単価交渉かを判断する3つのチェックポイント
  • クラウドと上流工程で単価が15〜25万円変わる理由

この記事の対象: SES歴2〜4年目で、今の単価や立ち位置が適正かわからないエンジニア

この記事にはHeydayの独自データが含まれています

SES歴3年目のエンジニアから、「今の単価が適正かどうかわからない」という相談を毎月複数受ける。

「3年もやってきたのに、単価が入社時とほぼ変わっていない」「転職を考えているが、相場を知らないまま動いていいのか不安」——こういった声だ。

SES3年目は、実は市場価値が最も大きく変わる時期だ。ここで適切に動けるかどうかで、その後の年収水準が100万円以上変わることは珍しくない。

この記事では、Heyday株式会社が2026年1〜3月に成約した案件データをもとに、3年目の実際の単価相場と、転職・単価交渉どちらを選ぶべきかの判断基準を解説する。


SES3年目は「市場価値の分岐点」である理由

未経験スタートから3年で何が変わるか

SES未経験入社の1年目は、単価の交渉余地はほぼない。現場にアサインされるだけで精一杯で、スキルシートに書ける実績も乏しい。未経験からの単価推移については別記事で詳しく解説しているが、1年目の相場は30〜40万円が大半だ。

2年目になると、特定の技術スタックで戦力として認められ始める。単価は45〜55万円程度に上がるケースが多い。ただし、これは「現場に慣れた」という評価であり、まだ「選ばれるエンジニア」とは言いにくい。

3年目で起きる変化は質が違う。

  • 技術習熟: 特定言語・フレームワークで自走できる状態になる
  • 商流理解: エンドクライアントとの折衝、要件整理など上流工程に入れるかどうかが見えてくる
  • 面談力: 案件面談で自分のスキルを言語化できるようになる。これが単価の上限を決める

この3つが揃った3年目は、SES市場で「指名される」側に入れる。逆に揃っていない場合、現場の都合でアサインされ続ける「流される人」になる。

「選ばれるエンジニア」と「流される人」を分ける構造

この差は、能力の差というより情報の差だ。

市場単価を知っている人は、自分の単価が低ければ動ける。知らない人は、提示された単価が適正かどうか判断できないまま受け入れ続ける。3年間の実務を積んでも、市場に自分を晒した経験がなければ、その価値は本人にも会社にも見えない。

Heydayに相談に来る3年目エンジニアの約6割は、面談を経て初めて「自分の市場単価が今の単価より10〜20万円高い」と気づく。相談前から動いていた残りの4割は、すでにその差を把握して行動に移しているケースが多い。


SES3年目の単価相場【言語・商流別データ】

以下は、Heydayが2026年1〜3月に成約した案件データをもとに集計した、実務経験3〜5年のエンジニアの単価相場だ(エンド直・1次のみ)。

※出典:Heyday株式会社 自社案件成約データ(2026年1〜3月集計)。経験3〜5年想定。商流:エンド直・1次のみ。

言語別・クラウド経験有無別の相場

言語クラウドなしAWS経験ありGCP経験あり
Java45〜55万円57〜68万円55〜65万円
Python50〜60万円63〜75万円62〜73万円
Go55〜65万円68〜78万円65〜75万円
TypeScript / React48〜58万円60〜70万円58〜68万円
PHP(Laravel)42〜52万円53〜63万円51〜61万円
C# / .NET45〜55万円56〜66万円
Swift / iOS50〜60万円60〜70万円

クラウド経験の有無で単価が10〜15万円変わるのが、3年目前後で顕著に現れる特徴だ。

商流の深さで変わる「届く単価」

上の表はエンド直・1次の数字だ。商流が深くなると、同じスキルセットでも手元に届く単価は大きく下がる。

商流上記相場からの差
エンド直・1次基準(0万円差)
2次請け−8〜12万円
3次請け以下−15〜25万円

3次請けで単価55万円の案件と、エンド直で単価65万円の案件では、「スキルシート上の職歴」に大きな差は出ない。しかし年収にすると120万円の差になる。商流の深さが単価に与える影響の詳細は、単価アップガイドで解説している


あなたの単価は適正か?3つのチェック方法

1. 商流の段数を把握しているか

今の会社が、どのルートで案件を受注しているか確認しよう。

  • 「エンドクライアントと直接契約している」→ エンド直
  • 「○○社を通して紹介された案件」→ 1次以上
  • 「どこから来た案件か分からない」→ 2次・3次の可能性が高い

商流が分からないまま単価を受け入れているなら、まずここを確認することが最初のステップだ。

2. スキルと業務内容のミスマッチがないか

3年目でありながら、1年目と変わらない業務(テスト・単純な改修のみ)を続けているケースがある。この場合、スキルシートに書ける経験が積み上がらず、市場価値の成長が止まる。

「技術的に成長しているか」より「何を任されているか」が単価に直結する。上流工程(要件定義・基本設計)への参加経験があるかどうかが、3年目の市場価値を大きく分ける。

3. 診断ツールで現在地を数値で把握する

言語・経験年数・クラウド経験・上流工程経験を入力すると、市場単価のレンジを算出できる。今の単価と照らし合わせることで、乖離があるかどうかを数値で把握できる。


3年目で取るべき行動:転職 vs 単価交渉の判断基準

今の会社で交渉すべきパターン

以下に当てはまる場合、まず今の会社での単価交渉を試みる価値がある。

  • 案件の商流がエンド直〜1次で、構造的に単価の上限が見えている
  • 評価制度があり、スキルアップが単価に反映されるルールが存在する
  • 営業担当が単価交渉に積極的で、過去に他のエンジニアの単価が上がった実績がある

この3条件が揃っているなら、動くより先に交渉する方がリスクが低い。年収交渉の具体的な準備と進め方については、別記事で詳しく解説している

転職すべきパターン

以下に複数当てはまる場合、交渉より転職を先に検討した方がいい。

  • 商流が2次・3次で、構造的に単価の天井が低い
  • 単価が非公開で、自分の単価とマージン率を教えてもらえない
  • 過去2年間、単価が全く上がっていない
  • 現場の業務内容が変わらず、スキルシートに書けることが増えていない

特に「単価非公開」は注意が必要だ。自分の市場価値を把握する権利が実質的に制限されている状態で、交渉のテーブルに着いても対等にはなれない。

判断の優先順位

  1. 商流の段数を確認する(これだけで転職理由になる場合がある)
  2. 単価の透明性を確認する(非公開なら転職を検討)
  3. 成長機会を確認する(上流工程に入れるか)
  4. 上記3つが問題なければ、交渉→不調なら転職の順で動く

3年目で単価を上げるためのスキル戦略

クラウド経験を積む最短ルート

上の単価表の通り、AWS・GCP経験の有無で10〜15万円の差が生まれる。3年目でまだクラウド経験がない場合、以下の順序で動くことを推奨する。

  1. AWSであればSAA(ソリューションアーキテクト アソシエイト)を取得する — 現場未経験でも、資格保有でスキルシートへの記載が可能になる
  2. 現在の案件でクラウド関連業務に手を挙げる — インフラ構成の確認・CI/CD設定補助など、周辺業務から入る
  3. 次の案件選定でクラウド経験必須の案件を選ぶ — 経験が浅くても、資格と意欲で通る案件は存在する

Heydayでは、AWS SAAを取得した後に次の案件でクラウド業務を経験し、6ヶ月以内に単価が10〜15万円上がったケースが複数ある(2024〜2025年の稼働エンジニアより)。

上流工程に入るための交渉術

要件定義・基本設計への参加経験は、単価の上限を10〜20万円引き上げる。ただし、「やりたい」と言うだけでは動けない。具体的なアプローチは以下だ。

  • 現在の担当業務を完結させた上で「上流の議事録作成」を申し出る — 参加実績のスタートラインを作る
  • 営業担当に「次の案件は上流工程参加を条件にしてほしい」と明示する — エンジニア側が要件を出さないと、単価が変わらない案件が続く
  • 上流経験のある案件を「次で入る」と決めて動く — 今の案件で完全な実績がなくても、「参加した」という事実がスキルシートに記載できる

スキルシートの見せ方で単価が変わる

面談での印象を決めるのは、実態よりもスキルシートの構成だ。同じ3年間の経験でも、書き方で評価が10〜15万円変わることがある。

重要な原則は2つ。

  1. 「何をやったか」より「どう貢献したか」を書く — 「Javaでバックエンド開発」より「決済処理システムのAPI設計・実装。月3万件のトランザクション処理を担当」の方が、単価面談での評価が高い
  2. スタック・規模・役割を数値で明示する — 「Webアプリ開発」ではなく「DAU1万人のWebアプリ開発(チーム5名中リード担当)」と書く

SESのキャリアパス全体像と、スキルシートの構成方針については、キャリアガイドで解説している


小川代表から3年目エンジニアへ

SES業界で6年間経営をしてきて、3年目エンジニアとの相談で最も多いのは「今の単価が適正かどうか、誰にも聞けなかった」という話だ。

会社は、エンジニア自身が「適正か」と疑問を持っていない限り、単価を自発的に上げることはほとんどない。商流の深さや還元率の構造は、エンジニア側が知ろうとしなければ見えないように設計されている。

3年目は「会社が判断してくれるのを待つ時期」ではない。自分で市場価値を確認して、動く時期だ。

数字を持って交渉するか、数字を持って転職するか。どちらが正しいかは状況次第だが、「数字なしで何もしない」が最もコストの高い選択であることは間違いない。


まとめ

SES3年目の単価相場と行動基準を整理する。

  • 3年目の単価相場: 言語・商流・クラウド経験によって45〜78万円の幅がある
  • チェックポイント3つ: 商流の段数 / スキルと業務のミスマッチ / 診断で現在地把握
  • 転職か交渉か: 商流が深い・単価非公開・成長機会なしの3条件が揃えば転職を先に検討
  • 単価を上げる手順: クラウド資格取得 → 上流工程への参加交渉 → スキルシート構成の最適化

まず、今の自分の市場単価を数値で把握することから始めよう。


案件例を確認する

3年目エンジニア向けの具体的な案件例(技術スタック・単価帯・勤務形態)は、案件一覧で確認できる。

Heydayの案件例を見る →

キャリアの方向性について個別に話したい場合は、以下から相談を受け付けている。

キャリア相談をする →

まとめ

SES3年目は、会社が判断してくれるのを待つ時期ではない。市場に自分を晒し、データで現在地を把握してから動く。それだけで年収が100万円以上変わることを、相談現場で繰り返し目にしてきた。

案件例を見てみる

技術スタック・単価帯・勤務形態がわかる具体的な案件情報

小川将司

この記事の著者

小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

IT業界12年・SES事業6年・100名以上の単価交渉に関わった経営者が執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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