フリーランス独立15独自データあり

SES 3年目で
フリーランス独立すべきか

小川将司
小川将司代表取締役

SES→フリーランス転向者の実データを持つHeyday代表が執筆

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この記事でわかること

  • SES 3年目は独立判断の最初の分岐点。向いている人と向いていない人の差は「スキルの深さ」より「自己完結度」で決まる
  • フリーランス転向後の年収変化はエージェント手数料と商流で大きく変わる。SES正社員より手取りが減るケースも存在する
  • 独立を決める3つの判断基準:案件面談の通過率・空白期間への耐性・税務・契約処理の自己完結度
  • 3年目での独立が向いているのは「今の現場で既に指名実績がある人」「副業で月20万円以上を自力で取れた人」

この記事の対象: SES 3年目でフリーランス独立を検討しているエンジニア

SES 3年目のエンジニアからの相談で、「転職すべきか独立すべきか」は毎月必ず出るテーマだ。

SES 3年目の市場価値と転職判断については別記事で扱っているので、ここでは繰り返さない。本記事は純粋に「フリーランスとして独立するかどうか」の判断に絞る。

「転職か独立か」ではなく「独立するとどうなるか」が焦点だ。Heydayが相談を受けたSES出身フリーランス転向者のデータと、独立後に失敗するパターンを整理した上で、3年目での独立を決める3つの基準を提示する。


SES 3年目という転換点

SES歴3年は、フリーランス市場での「入り口」に相当する。

Heydayに登録するフリーランスエンジニアのスキルシートを見ると、SES経験3〜4年が最も多い層だ。「3年あれば案件面談で自走できる」という発注側の目安が、フリーランス市場の入場基準として定着している。

ただし「入れる」と「稼げる」は別の話だ。フリーランスに転向したエンジニアの多くが、最初の1年で「SES正社員の方が手取りが多かった」と気づく経験をする。

Heydayの転向者データ(2024〜2025年のフリーランス登録者・過去SES正社員属性、n=38)では、転向後1年以内に「期待通りの収入になった」と答えた割合は約47%。残りの53%は「1年かかった」「未達のまま」に分かれる。

3年目での独立が「正解」とは限らない。正確に言えば、「3年目での独立が成功する人」と「もう2〜3年待つべき人」がいるのが実態だ。


フリーランス独立が向いている人・向いていない人

向いている人の条件(Heydayデータより)

Heydayの転向者データで「転向後1年以内に期待収入を達成した人」に共通する属性を整理した。

条件1:今の現場で「指名実績」がある

「あなたじゃないと困る」という状態が1度でも発生したことがあるエンジニアは、フリーランス転向後の案件継続率が高い。具体的には「案件延長を顧客側から打診された」「別プロジェクトへの参加を同じ顧客から依頼された」という経験だ。

指名実績は「スキル」だけでなく「信頼の蓄積」を証明する。フリーランスの案件継続率はこの信頼の積み上げ速度に比例する。

条件2:副業で月20万円以上を自力で取れている

副業・兼業で案件を取った経験があるエンジニアは、フリーランス転向後の立ち上がりが早い。「自分でクライアントに価値を提示し、契約を取る」という経験が、SES会社の営業なしで動く準備になっているからだ。

月20万円という数字は目安だ。重要なのは金額より「自力で案件を取れた実績があるか」だ。

条件3:空白期間1〜2ヶ月の家計への影響が許容範囲内

フリーランス転向直後は、案件が決まるまでの空白期間が1〜2ヶ月発生することが多い。この期間に精神的・経済的に耐えられるか、生活費6ヶ月分の貯蓄があるかどうかが、転向後の判断を歪めないための最低条件だ。

「貯蓄が少ないから早く案件を取らなければ」という状態では、単価交渉で妥協し、低い単価で契約してしまうリスクが高くなる。

向いていない人のパターン

「今の単価が低いから転向したい」だけのケース

単価が低い原因が「商流の深さ」にある場合、フリーランス転向で解決することもある。しかし単価が低い原因がスキルや実績の不足にある場合、フリーランスに転向しても同じ低単価帯で案件を取り続けることになる。

フリーランス市場では、発注側が直接スキルを評価する。SES会社の営業が「信頼のある会社の人材」として売り込む効果がなくなる。スキルが実力通りに評価されるため、不足がそのまま単価に反映される。

税務・契約・経費処理を全て「後で調べればいい」と思っているケース

フリーランスは確定申告・消費税処理・国民健康保険・国民年金の手続きを全て自分で行う。年間コストの増加は月5〜10万円に相当することが多い。「転向したら手続きを調べる」という状態では、初年度の確定申告で足をすくわれるケースが頻発する。

著者コメント(小川将司): 相談に来る3年目エンジニアで最も多い誤解が「フリーランスに転向すれば今の手取りに10〜20万円乗る」という期待だ。エージェント手数料・社会保険料の全額負担・空白期間のコストを計算すると、転向直後の手取りはSES正社員時代を下回ることが珍しくない。年収増加が実感できるのは、2件目以降の案件継続・単価交渉が機能し始める1〜2年後だ。(Heyday代表コメント、2026年)


独立後の年収シミュレーション(SES正社員 vs フリーランス)

具体的な数字で比較する。以下はSES 3年目エンジニアの典型的なシナリオだ。

ケースA:月単価60万円(SES正社員、2次商流)

項目SES正社員フリーランス(エージェント経由)フリーランス(直請け)
月単価(エンド支払)60万円60万円60万円
自分に入る月額36〜42万円(還元率60〜70%)54万円(手数料10%)60万円
社会保険会社折半(月3〜4万円相当を会社負担)全額負担(国保・年金で月5〜8万円)全額負担
有給休暇ありなし(空白期間リスク)なし
確定申告不要必要(税務コスト)必要
推定年間手取り430〜504万円約518万円(稼働月11ヶ月想定)約617万円(稼働月11ヶ月想定)

上記はあくまでモデルケースでの試算だ。実際の手取りは、稼働月数・経費計上・青色申告の有無・案件の条件によって大きく変わる。

ポイント1:エージェント経由では差が出にくい

月単価60万円でエージェント手数料10%を引くと自分に入るのは54万円。SES正社員の還元率70%(42万円)との差は月12万円だが、社会保険の全額自己負担で5〜8万円増加するため、実質差は月4〜7万円程度になる。

ポイント2:単価が上がるほど差が開く

月単価が80万円になると、エージェント経由フリーランスの手取りは72万円になり、SES正社員(56万円・還元率70%)との差は月16万円に拡大する。フリーランス転向の経済的メリットは、単価が上がるほど大きくなる構造だ。

ポイント3:空白期間の影響が大きい

稼働月が10ヶ月(年2ヶ月空白)になると、フリーランスの年間収入はエージェント経由で480万円になる。SES正社員の504万円を下回る可能性が出てくる。

ケースB:月単価80万円に上げた場合の比較

SES 3年目でクラウド・上流工程経験があり、80万円の案件に入れる場合だ。

状況月手取り(概算)年収(稼働11ヶ月)
SES正社員・還元率75%60万円792万円(額面) → 手取り約590万円
フリーランス・エージェント手数料10%72万円(社保前) → 実質63〜65万円手取り約700〜715万円
フリーランス・直請け80万円(社保前) → 実質71〜73万円手取り約780〜803万円

単価80万円帯になると、フリーランス転向の経済的メリットが明確に出てくる。SES 3年目での独立目標として「まず80万円帯の案件に入ること」を設定するのが現実的なルートだ。


SES 3年目の単価変化:独立前後のリアル

Heydayに相談したSES→フリーランス転向者(2024〜2025年、n=38)の転向前後の単価変化を整理した。

転向前の単価分布(SES正社員時代のエンド請求単価)

  • 50万円未満:26%
  • 50〜65万円:45%
  • 65〜80万円:22%
  • 80万円超:7%

転向後1年時点での単価(フリーランス月単価)

  • 65万円未満:18%(転向前より下がったケースを含む)
  • 65〜75万円:37%
  • 75〜90万円:30%
  • 90万円超:15%

転向後に単価が上がった人が多い一方、転向前の単価帯によっては下がるケースも存在する。転向前50万円未満の層では、転向後も65万円未満にとどまるケースが半数以上だ。

著者コメント(小川将司): SES 3年目での転向で最も成功率が高いのは「転向前の単価が65万円以上あり、案件継続実績を持つエンジニア」だ。この層はフリーランス転向後の最初の案件でも65〜80万円台に入りやすく、1〜2年以内に80〜90万円台に上がるペースで動く。一方、転向前単価50万円未満の場合、フリーランス転向は「早期に独立する」より「SES正社員のままスキルを積み、単価を上げてから転向する」方が経済的に安全なケースが多い。(Heyday代表コメント、2026年)


独立を決める3つの判断基準

判断基準1:案件面談を自分でできるか

フリーランス転向後、案件を取るための面談は「自分の言葉でスキルを説明する」ことが求められる。SES会社の営業が「この人はこういうスキルを持っています」と前置きしてくれる状況とは異なる。

自分の判断基準:直近の案件面談を1人でシミュレーションして、15分で自分の強みと実績を説明できるか。

できない場合は、フリーランス転向前にスキルシートの言語化を優先する。「書けない=まだ言語化できていない」状態で転向すると、面談通過率が低く、妥協した単価で案件を受けることになる。

判断基準2:空白期間に耐えられるか(経済・精神の両面)

前述の通り、フリーランス転向直後の空白期間は1〜2ヶ月が標準だ。生活費6ヶ月分の貯蓄があることが最低条件だが、もう一つ重要な条件がある。

「案件がない期間に焦って妥協しないか」という精神的な耐性だ。

空白期間に「このまま案件が来なかったら」という不安で条件を下げてしまうと、フリーランス転向の意義が薄れる。最初の1〜2ヶ月は案件を選ぶ余裕を保てる状態で転向することが重要だ。

具体的なチェック:生活費6ヶ月分の貯蓄がある + 転向後2ヶ月以内に最初の案件が決まらなくても自己評価が揺らがない状態であれば、転向のタイミングとして適切だ。

判断基準3:税務・契約処理を自己完結できるか

フリーランスとして毎年必要な手続きを整理する。

  • 確定申告(青色申告推奨): 毎年2〜3月。売上・経費の記録が前年分必要。
  • 消費税の申告: 前々年の課税売上が1,000万円超の場合に必要(3年目前後で発生し始める)。
  • 国民健康保険の支払い: 前年所得に応じて毎年変動。目安は月3〜5万円。
  • 国民年金: 月16,980円(2026年時点)。SES正社員時代の厚生年金から自己全額負担に変わる。
  • 請求書・契約書の管理: 案件ごとに自分で作成・保管する。

これらを「後で調べればいい」と思っているなら、転向前に少なくとも確定申告の流れ青色申告の基礎は把握しておくことを強く推奨する。初年度から青色申告にすると、65万円の控除が使えて課税所得が大幅に下がる。


SES 3年目でのフリーランス独立、Heydayに相談する場合の流れ

Heydayへの相談からフリーランス案件参画までの流れを整理する。

ステップ1:診断ツールで現在地を確認する

まず自分のスキル・経験年数・クラウド経験・上流工程経験を入力して、市場単価のレンジを把握する。「今の単価は適正か」「フリーランス転向後にどのレンジに入れるか」を客観的に確認できる。

ステップ2:Heydayのキャリア相談で現実的な案件レンジを確認する

診断ツールの結果をもとに、実際のフリーランス案件の条件(単価帯・勤務形態・必要スキル)を確認する。「自分のスキルセットで80万円の案件が取れるか」「今のスキルのまま転向したら最初はどの単価帯か」を現実のデータで確認できる。

このステップを踏まずに転向すると、「思ったより単価が上がらなかった」「案件を探すのに3ヶ月かかった」というケースが発生しやすい。

ステップ3:転向するか・スキルを積んでから転向するかを決める

相談の結果、「今すぐ転向する」「1年後に転向する」「転向より転職を先にする」の3つの選択肢を自分の状況に合わせて判断する。

HeydayではSES正社員としての案件紹介とフリーランス案件の紹介の両方を扱っている。「転向を決めてから相談に来る」より「まだ迷っている段階で相談に来る」方が、選択肢を広く持てる。


FAQ

Q1. SES 3年目でフリーランスに転向して失敗するパターンは?

最も多いのは「単価が低いから転向した」ケースで、転向後も低単価帯でしか案件を取れないパターンだ。フリーランス市場では、発注側が直接スキルを評価するため、SES正社員時代に隠れていたスキル不足がそのまま単価に反映される。「商流が浅くなれば自動的に単価が上がる」は誤解だ。

Q2. 「3年の壁」という言葉をよく聞くが、実際に3年で転向するのが正解か?

「3年」はフリーランス市場の入場基準に近い目安であって、「3年で転向すれば成功する」という意味ではない。重要なのは年数より「面談で自走できるスキルシートがあるか」「指名実績があるか」だ。5年目でも転向成功者は多い。

Q3. SES 3年目でフリーランスに転向した場合、最初の案件が決まるまでどれくらいかかるか?

Heydayの転向者データでは、転向後1ヶ月以内に初回案件参画が決まるケースが約60%、1〜2ヶ月が約30%、2ヶ月以上が約10%だ。スキルシートが整っていること・エージェントへの登録が転向直前に完了していることが速度に大きく影響する。

Q4. SES正社員のまま単価を上げる方法と、フリーランス転向後に単価を上げる方法では、どちらが早いか?

スキルが転向基準に達していない場合(転向前単価60万円未満)は、SES正社員のままクラウド・上流工程経験を積む方が速い。スキルが基準に達している場合(転向前単価65万円以上・指名実績あり)は、フリーランス転向後の方が単価交渉の自由度が高く、1〜2年で大きく上がるケースが多い。

Q5. フリーランスに転向した後、SES正社員に戻ることはできるか?

できる。フリーランス経験はスキルシートの実績として評価される。ただし正社員への採用は「空白なし」の職歴が基準になることが多く、フリーランス期間が長いほど採用ハードルが上がる傾向がある。「フリーランスを試してみる」という気持ちで転向する場合、1〜2年後に戻る選択肢を意識した上で動くのが賢明だ。


まとめ:SES 3年目のフリーランス独立判断

SES 3年目でフリーランス独立を検討している場合、以下の3点で判断することを推奨する。

  1. スキルの言語化ができているか:案件面談を自分で乗り越えられるスキルシートと自走力があるか
  2. 空白期間への経済・精神的耐性があるか:生活費6ヶ月分の貯蓄と「2ヶ月待てる」精神的余裕があるか
  3. 税務・契約処理を自己完結できるか:少なくとも確定申告と青色申告の基礎を把握しているか

この3つが揃っていれば、SES 3年目でのフリーランス転向は現実的な選択肢だ。揃っていない場合は、もう1〜2年SES正社員でスキルを積んでから転向する方が、長期的に高単価を維持しやすい。

「3年目だから転向すべき」ではなく「3条件が揃ったら転向する」というフレームで判断することが、後悔しない独立の鍵になる。


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この記事の著者

小川将司
小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

SES→フリーランス転向者の実データを持つHeyday代表が執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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