SES面談(顔合わせ)で落ちる確率は、**平均30〜50%**だ。つまり2〜3人に1人が落とされる計算になる。
しかしHeydayで累計2,400件以上の面談に同席してきた実感では、準備の有無によって体感で2倍近い差が出る。「スキルはある、でも通らない」というケースの大半は、準備と伝え方の問題だ。
「スキルが足りないから落ちた」と思っているエンジニアは多い。 しかし実際には、スキルで落とされるケースよりも「プレゼンの仕方」「スキルシートの書き方」「面談での立ち回り」で落とされるケースの方が多い。
私はHeyday株式会社でSES営業を担当している篠田だ。 SES業界に10年携わり、エンジニアの面談への同席実績は累計2,400件以上になる。 クライアント側の反応を直接見る立場から、「なぜこの人が通らなかったのか」「どこが刺さったのか」を繰り返し観察してきた経験で、落ちる理由のパターンが見えてきた。
一つだけ先に言っておくと、面談で落ちるエンジニアの大半は「スキルが足りない」から落ちているのではない。同席していて「この人は通るだろう」と思ったエンジニアが落ちることもあれば、「正直厳しいかもしれない」と思った方が通ることもある。その差を生んでいるのは、スキルそのものではなく「スキルの見せ方」だ。
この記事では、SES面談で落ちる理由のトップ5を採用側の視点で解説する。 それぞれに対応する準備と当日の立ち回りを具体的に整理したので、次回の面談に直接使える内容になっている。
SES顔合わせの実態:一般的な採用面接とどう違うか
SES面談は、一般的な採用面接とは性質が異なる。
建前と実態の違い
建前:SESは「請負・準委任契約」であり、クライアント企業がエンジニアを直接選ぶ「採用面接」を行うことは違法(職業安定法違反)になる可能性がある。そのため法律上は「業務確認のための顔合わせ」という位置づけだ。
実態:クライアント企業のエンジニアリングマネージャーや技術リーダーが参加し、スキルシートを見ながら技術的な質問・チームフィットの確認を行う。実質的な「採用判断の場」として機能している。
通常の面接との3つの違い
1. 意思決定の構造が違う
通常の面接はHRと現場の二段階承認が多いが、SES面談は「現場のエンジニアリングマネージャーが即決に近い判断をする」ことが多い。 現場の負荷・チームのスキルギャップ・文化フィットが重視される。
2. スキルシートが「履歴書」の役割を果たす
通常の面接では職務経歴書を見ながら会話するが、SES面談ではスキルシート(技術スタック・業務経歴を一覧化したもの)が最重要ドキュメントになる。 面談前にスキルシートを共有し、面談はそれを深掘りする形が標準だ。
3. 「一緒に働けるか」が判断軸の中心になる
HRが行う面接では「自社のカルチャーフィット」を見るが、SES面談では「このプロジェクトで機能するか」「チームのコミュニケーションに問題ないか」が中心だ。 技術力と同じくらい、コミュニケーションの印象が評価される。
準備不足が引き起こす5つの典型パターン
理由1:スキルシートの情報量が少なすぎる
SES面談で最も多い「落ちる前の脱落」が、スキルシートでの足切りだ。
面談の場に来る前に、クライアントはスキルシートを見て「この人と話す価値があるか」を判断する。 情報量が少ないスキルシートは、その段階で候補から外れることがある。
よく見るNG例
【業務経歴】
2020年〜2023年:A社 Webシステム開発
使用技術:Java, Spring Boot, MySQL
これだけでは何もわからない。 どんな規模のシステムか、自分がどの工程を担当したか、チームの中でどんな役割を果たしたか——判断材料がない。
情報量を増やすために入れるべき項目
- プロジェクトの規模(チーム人数・システムの規模感)
- 自分の担当範囲(詳細設計のみ / 基本設計〜テストまで / など)
- 使用技術の詳細バージョン(Java 17, Spring Boot 3.x など)
- 具体的な成果・改善(「○○の処理速度を30%改善」「○○の不具合件数を月10件から2件に削減」)
- クラウドの利用有無(AWS EC2/RDS, Azure App Service など)
理由2:単価の希望を「市場感覚とずれた金額」で言う
面談の場や事前の条件確認で、希望単価が市場相場から大きくずれていると候補が絞られる。
ずれ方には2つのパターンがある。
パターンA:高すぎる
スキルセットに対して希望単価が高すぎる場合、クライアント側の予算と合わなくなる。 特に「スキルはあるがアピールできていない状態」で高単価を希望すると、「なぜこの条件で?」という疑問が生じる。
パターンB:低すぎる
これが意外に多い。 「通過率を上げたくて単価を下げる」という判断をするエンジニアがいるが、これは逆効果になることがある。
クライアントは「なぜこのスキルレベルでこんなに安いのか?何か問題があるのではないか」と疑うことがある。 単価はスキルの自己評価の一部として見られている。
対策
市場単価を調べて、自分のスキルセットに適切な単価を設定する。 根拠のある単価設定は「自分のスキルを正確に把握しているエンジニア」という印象を与え、プラスに評価されることが多い。
理由3:「なんでもやります」で具体性がない
面談で「どんな技術が得意ですか?」「どんな案件を希望しますか?」と聞かれたときに、「なんでもやります」「どんなことでも対応できます」と答えるエンジニアは通過率が低い。
クライアント側が知りたいのは「この人は今のプロジェクトの何を解決してくれるか」だ。
「なんでもやります」という答えは、この問いに答えていない。
クライアントの心理
現場のエンジニアリングマネージャーは、具体的な課題を持って面談に来ることが多い。 「今の案件でPythonのデータ処理が遅くて困っている」「フロントエンドの設計経験がある人が欲しい」といった具体的な文脈がある。
「なんでもやります」は、この文脈に刺さらない。
面談に同席していて一番もったいないと思うのは、実際にはスキルがあるのに「なんでもやります」で終わらせてしまうケースだ。面談後にクライアントから「具体的に何ができる人なのか見えなかった」と言われ、こちらから補足説明をして再検討してもらったことが何度かある。最初から本人が語れていれば、補足は不要だった。
対策
得意領域を具体的に言えるように準備する。 「Javaバックエンドの設計〜実装が一番得意で、特にマイクロサービスの分割設計の経験があります。AWSとの連携設計は複数のプロジェクトで経験しています」という形で、具体的な強みを言えるようにする。
苦手な領域があってもいい。「モバイル開発は経験が少ないです」と正直に言える方が信頼性が上がる。
理由4:現場の課題・文化への関心を示せない
面談の後半で「うちのプロジェクトについて何か聞きたいことはありますか?」と聞かれたとき、「特にありません」や「よく知らないので…」と答えると印象が著しく下がる。
これはスキルの問題ではなく「このプロジェクトで働きたいか」という姿勢の問題として受け取られる。
クライアントが見ているもの
SES契約で現場に入るエンジニアは、チームの一員として機能することが求められる。 「このプロジェクトの課題や文化に関心がある」という姿勢は、現場での当事者意識につながる。
質問がない = 興味がない、という判断をされやすい。
対策
事前に調べて質問を作る。 最低でも3問は準備する。
調べる方法:
- 募集背景(営業担当から聞く)
- 現在のシステム構成・技術スタック(事前共有されている場合)
- 担当するプロジェクトのフェーズ(開発中・運用中・リプレイス中など)
例えば「現在のシステムはモノリシックな構成とお聞きしましたが、マイクロサービス化の計画はありますか?その場合、どの部分から着手する予定ですか?」という質問は、技術的な関心と現場への適合意欲を同時に示せる。
理由5:逆質問がない・薄い
「何か質問はありますか?」という場面は、エンジニアが評価される最後のチャンスだ。
逆質問がない・「特にありません」と答えるエンジニアは、面談全体の印象を下げる。
なぜ逆質問が重要か
逆質問は「このプロジェクトに本当に参加したいか」「必要な情報を自分から取りに行くか」という姿勢を示す場だ。
現場に入ってからも「わからないことを積極的に聞けるか」「チームに貢献するために情報収集できるか」——こうした能力を逆質問から読み取るクライアントも多い。
用意すべき逆質問の例
技術系:
- 「現在使用しているフレームワークのバージョンアップ計画はありますか?」
- 「テストの自動化はどの程度進んでいますか?」
- 「コードレビューはどんな形で実施されていますか?」
チーム・文化系:
- 「チームのエンジニアの経験年数の構成はどのくらいですか?」
- 「リモートとオンサイトの割合はどうなっていますか?」
- 「入場後の最初の1〜2週間はどんなオンボーディングがありますか?」
キャリア系:
- 「現場に入った後、どんなスキルが身につくと思いますか?」
- 「このポジションで成果を出している方の共通点はありますか?」
書類審査を突破するスキルシートの作り方:before/after比較
前述のとおり、スキルシートは「面談の前の書類審査」として機能する。 具体的なbefore/afterで書き方の差を示す。
before(情報量が少ない)
【業務経歴2】
期間:2021年6月〜2023年3月
案件名:ECサイトシステム開発
使用技術:Java, Spring Boot, MySQL, AWS
担当工程:製造、テスト
after(情報量が十分)
【業務経歴2】
期間:2021年6月〜2023年3月(1年9ヶ月)
案件名:大手小売業向けECサイト基盤リニューアル
クライアント業種:小売・通販(従業員数3,000名規模)
チーム規模:エンジニア8名(うち自分はバックエンド担当2名の一人)
【担当工程】詳細設計・製造・単体テスト・結合テスト
【担当領域】商品検索API・カート機能・注文処理バックエンド
【使用技術】
- 言語:Java 17
- フレームワーク:Spring Boot 3.1
- DB:MySQL 8.0(Aurora MySQL)
- インフラ:AWS(EC2, RDS, S3, CloudFront)
- その他:Docker, GitHub Actions(CI/CD)
【実績・特記事項】
- 商品検索APIのN+1問題を解消し、レスポンスタイムを平均2.3秒→0.4秒に改善
- 単体テストのカバレッジを40%→80%に引き上げ、リリース後の不具合件数が50%減少
情報量が増えると、クライアント側が「この人がいれば何ができるか」を具体的にイメージできるようになる。
顔合わせ当日:印象を最大化する3つのポイント
スキルシートの準備が完璧でも、面談当日の立ち回りで印象が大きく変わる。
自己紹介の構成
面談冒頭の自己紹介は2〜3分が目安だ。 以下の構成で準備する。
-
現在の経験年数と専門領域(10秒) 「バックエンド開発を中心に、SESエンジニアとして5年の経験があります」
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直近の案件の概要(30〜40秒) 「直近では〇〇業界の基盤システムのリニューアルに携わり、Java/Spring Bootを使ったAPIの設計〜実装を担当しました」
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強み・得意領域(20〜30秒) 「特にパフォーマンス改善と設計の整理が得意で、前の案件では処理速度を〇〇倍に改善した経験があります」
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今回の案件への関心(20秒) 「今回の案件で〇〇の部分に関わりたいと思い、今日は来ています」
自己紹介の最後に「今回の案件への関心」を入れることで、「この現場で働きたい」という姿勢を最初から示せる。
技術的な質問への対応
技術的な質問に答えるとき、「わからない」を怖れて曖昧に答えることは逆効果だ。
OK例
「そのフレームワークは使ったことがありませんが、React Hooksの仕組みは理解しています。学習コストは最小限で対応できると思います」
「詳細は即答できませんが、設計の考え方として〇〇のアプローチで対応してきました。具体的なツールや構文は都度確認しながら進めます」
わからないことを認めつつ「だからどうする」を言えると、誠実さと実務対応力を同時に示せる。
逆質問リスト(使えるもの一覧)
面談当日に使える逆質問を10問リストアップしておく。 全部聞く必要はない。2〜3問を状況に合わせて選ぶ。
- 「このポジションでの稼働開始後、最初に取り組む業務はどんなものですか?」
- 「チームの中で今最も解決したい課題は何ですか?」
- 「コードレビューはどのくらいの頻度・規模で行われていますか?」
- 「リモートワークの頻度はどのくらいですか?」
- 「直近でリリースした機能や改善で、一番苦労したのはどんな点でしたか?」
- 「テストの自動化はどこまで進んでいますか?」
- 「ドキュメントの整備状況はどうですか?」
- 「技術的な意思決定はどのような形で行われていますか?」
- 「現場のエンジニアのバックグラウンドはどんな感じですか?」
- 「このプロジェクトの今後半年〜1年の方向性はどうなっていますか?」