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SES 30代でキャリアが
詰む構造 — 失速する人と伸ばす人を分ける3要因

小川将司
小川将司代表取締役

IT業界12年・SES事業6年の現役経営者がHeyday 30代転向者の単価変遷データで執筆

この記事でわかること

  • 30代で詰む人と伸ばす人を分ける3要因(主体性・上流化・マージン理解)
  • Heyday 30代転向者の実際の単価変遷データ
  • 30代後半でも単価を伸ばす経路3パターン
  • 35歳定年説の構造的誤解と、30代以降の市場価値形成

この記事の対象: 「SES 30代 詰む」「SES 30代 キャリア」で検索し、自分のキャリア停滞を感じているエンジニア

この記事にはHeydayの独自データが含まれています

「SES 30代 詰む」と検索したあなたへ

「SES 30代 詰む」「SES 30代 キャリア」で検索しているなら、自分のキャリアが停滞している感覚があるか、周囲の同世代との比較で焦りを感じているはずだ。

結論から言う。SESで30代で詰むのは、業態の宿命ではない。特定の行動パターンを取った人だけが詰む

この記事では、現役SES経営者として観察してきた「30代で詰む人と伸ばす人を分ける3要因」を構造的に解剖する。Heyday内の30代転向者の実単価データも示しながら、30代以降の市場価値形成について正直に書く。

関連: SES 地獄は本当か — 現役SES経営者が80案件データで解剖する2026年の真実


「35歳定年説」の構造的誤解

まず、業界で語られる「SES 35歳定年」の実態を整理する。これは制度ではなく、結果として発生している現象だ。

事実として観察されること

SES業界では、35歳前後から案件単価が頭打ちになるエンジニアが一定数いる。月給50万円台から上がらなくなる、案件の選択肢が狭まる、マネジメント寄りの案件が提示され始める。

なぜそれが起きるのか

クライアント側の要求として、35歳以上には「単なる実装者」ではなく「設計や上流工程を担える人材」が求められる。同じ実装スキルだけだと、20代後半〜30代前半のエンジニアのほうが単価競争力で勝る。結果として、スキルが実装レベルにとどまっている35歳以上のエンジニアは、案件選択肢が狭まる。

制度ではなく構造

つまり「35歳定年」は明文化された制度ではなく、市場の需給バランスが作る自然な現象だ。これは裏を返せば、スキルを上流化できれば35歳以上でも単価は伸びるということだ。

実際、Heyday内の40代エンジニアには月給80〜100万円帯で働いている人が複数いる。制度的な年齢上限ではなく、個人のスキル形成と企業の対応の結果として「詰む・詰まない」が分かれている。


要因1: 案件選択の主体性

詰む人のパターン

20代の頃、営業から提示された案件をそのまま受け入れ続ける。「案件ガチャ」を受け身で受け続けるうちに、スキルが断片化する。30代になった時点で、特定領域の専門性が蓄積されていない状態になる。

例: 2年ごとに案件が変わり、Java、PHP、Ruby、Go、Pythonを渡り歩いた結果、どの言語でも「2年の経験」にしかならない。35歳時点でスキル棚卸しをすると、市場で評価される突出した専門性がない。

伸ばす人のパターン

20代後半から、自分のキャリアストーリーに合う案件を能動的に選ぶ。「この案件でこのスキルを積む」「次はこのスキルで単価を上げる」という逆算的な選択を続ける。結果として、30代時点で特定領域の専門性が3〜5年単位で蓄積される。

例: 25歳からAWSに集中し、SAA取得→業務経験→SAP取得→クラウド基盤設計の案件に集中→30歳時点でAWS×インフラ設計のスペシャリストとしてポジション確立。

構造的な差異

両者の差は「能力」ではなく「意思決定の主体性」だ。案件を選ぶか、選ばされるかで、5〜10年後のスキル蓄積は大きく変わる。

主体的に選ぶためには、案件選択権のある企業に所属していることが前提だ。案件ガチャ型の企業にいる限り、主体性を発揮する余地が限定される。

関連: SES案件の選び方|技術スタック・商流・単価で判断する基準


要因2: スキルの上流化

詰む人のパターン

20代・30代前半を通じて、実装レイヤーに留まる。要件定義・基本設計・アーキテクチャ設計・PM/PL、といった上流工程の経験を積まない。

30代後半になると、同世代のエンジニアが上流工程に移行している中で、自分だけが実装レイヤーに留まっている。実装スキルだけだと若手との競争で不利になり、単価が伸びない。

伸ばす人のパターン

30代前半から、上流工程への経験移行を意識的に設計する。要件定義会議に参加させてもらう、基本設計の一部を担当する、プロジェクト内でリーダー役を受ける。

30代中盤には上流工程の経験が3〜5年積み上がり、単価が大きく伸びる。実装スキルも維持しているため、上流〜下流を俯瞰できる人材として希少価値が出る。

上流化のパスウェイ

年齢現在のスキル目標スキルアクション
25-28歳実装中心実装+ドキュメント作成基本設計書の一部を書かせてもらう
28-32歳実装+一部設計要件定義参加要件定義会議への参加、ヒアリング同席
32-35歳実装+設計+要件PM/PL経験小規模プロジェクトのPL経験
35歳以降上流〜下流俯瞰アーキテクト or PM大規模プロジェクトのアーキテクチャ設計

このパスウェイを通る人は、35歳以降も単価が伸びる。通らなかった人は、35歳前後で頭打ちになる。

Heyday 30代転向者の実データ

Heydayに30代で転籍してきたエンジニアの単価変遷(匿名化した実データ):

  • 事例A(33歳・Java): 転籍前 月給46万円 → 転籍後1年 月給56万円(+10万)、2年後 月給62万円(+16万)。要因: 基本設計経験を含む案件にアサイン、上流化が進んだ
  • 事例B(36歳・Python/AWS): 転籍前 月給52万円 → 転籍後1年 月給68万円(+16万)、2年後 月給78万円(+26万)。要因: AWSインフラ設計領域でのスペシャリスト化
  • 事例C(39歳・React/TypeScript): 転籍前 月給50万円 → 転籍後1年 月給65万円(+15万)、2年後 月給72万円(+22万)。要因: フロントエンドリード+要件定義参加案件に移行

共通するのは、「30代で上流化の意思決定をし、それを実行できる環境に移った」点だ。


要因3: マージン率の理解と交渉

詰む人のパターン

自分の契約単価を知らない。会社から提示される月給が市場水準と比較して高いか低いか判断できない。マージン率を逆算する発想自体を持っていない。

30代になっても「会社の提示する金額」を受動的に受け取り続け、交渉することもない。結果として、スキルが伸びても月給が伸びない状態が固定化する。

伸ばす人のパターン

20代後半から、自分の契約単価とマージン率を意識する。会社に契約単価の開示を要求する、マージン率の計算方法を確認する、市場単価との乖離を把握する。

30代に入ると、年次昇給と市場単価を両方見て、「今の会社で伸ばすか、転職して伸ばすか」の意思決定を数字で行える。

マージン率理解のための3質問

  1. 自分の契約単価はいくらか(会社が開示していれば確認、していなければ開示を要求)
  2. 現在の月給÷契約単価 = 還元率は何%か
  3. 同業他社の同スキル帯の還元率と比較して、自社は相対的に高いか低いか

この3質問に自分で答えられるエンジニアは、30代以降のキャリアを数字で設計できる。答えられない状態が続くと、交渉力の源泉を失ったまま年齢を重ねる。

関連: SESマージン構造を金額で分解する / SES還元率の相場は?IT業界12年・SES事業6年の経営者が実態を全公開


30代以降で単価を伸ばす経路3パターン

30代時点で「詰みかけている」と感じているエンジニアでも、次の3パターンのどれかで単価を伸ばす可能性がある。

パターン1: 同業他社への転籍(還元率改善)

現職のマージン率が業界水準より高い場合、還元率が高い企業に転籍するだけで月給が上がる。スキルを変えずに月給が15〜30%上がるケースもある。

条件: 現職の還元率が55%以下、転籍先が還元率60〜70%以上

パターン2: 上流工程案件への移行(スキル価値上昇)

実装中心から、要件定義・基本設計・PM経験を含む案件に移行する。案件単価が20〜40%上がる。

条件: 上流工程経験を取れる案件を提示する企業に所属していること

パターン3: フリーランス移行(マージン排除)

正社員SESからフリーランスに移行し、中間マージンを排除する。年収が30〜50%上がるケースが多い。

条件: 自分の営業力・交渉力があるか、信頼できるエージェントを持っているか

どのパターンが最適か

現在の年齢・スキル・リスク許容度で異なる。

  • 30代前半・実装中心: パターン2(上流化)を優先。長期的なキャリア資産を作る
  • 30代中盤・上流経験あり: パターン1(転籍)またはパターン3(フリーランス)。短期の年収上げ
  • 30代後半・特定領域の専門性あり: パターン3(フリーランス)が年収最大化

よくある質問(FAQ)

Q. 35歳を過ぎたSESエンジニアは転職できないのですか?

できる。ただし、転職先の選択肢は「特定領域の専門性」か「マネジメント経験」があるかで大きく変わる。どちらも持っていない場合、まず現職で1〜2年かけてどちらかを積んでから転職するほうが経済合理性が高い。Heyday内でも、37歳で転籍してきたエンジニアが月給20万円以上上がった事例は複数ある。

Q. SES経験しかない場合、自社開発や受託に転職できますか?

可能だが、スキル棚卸しが必須だ。SESでの経験を「単なる常駐経験」ではなく「どの技術スタックで、どんな業務範囲を、どれだけ担ったか」で整理する。自社開発企業が求めるのは、プロダクトに長期的にコミットできる人材なので、そこへのアピール方法を事前に設計する。

Q. 30代で未経験技術にキャッチアップするのは遅いですか?

遅くない。ただし、「完全未経験の新技術」より「既存スキルの延長上の新技術」を選ぶほうが市場価値への変換効率が高い。例: Javaバックエンド経験者がKotlin・Spring Bootに移行する、Pythonデータ分析経験者がML Ops領域に広げる、など。無関係の技術に飛ぶより、連続性のある拡張が現実的だ。

Q. 30代でPM/PL経験なしだと、もう上流化は無理ですか?

無理ではない。小規模案件のリーダー役から始める、要件定義会議に参加する、設計書レビュー担当を受ける、など段階的な入り口がある。現職にその機会がない場合、転職で「PM/PLになれる案件」を提示する企業を選ぶ。30代後半でPM経験ゼロからでも、2〜3年かけてPMに移行した事例はある。

Q. Heydayは30代以上のエンジニアも受け入れていますか?

受け入れている。Heyday内には30代後半〜40代のエンジニアも複数在籍している。年齢ではなく、スキルと案件のマッチングで判断する方針を取っている。特に上流工程経験やマネジメント経験がある場合、案件単価帯は高めに提示できる。


おわりに

「SES 30代 詰む」は業態の宿命ではなく、特定の行動パターンの結果だ。

  1. 案件選択の主体性
  2. スキルの上流化
  3. マージン率の理解

この3要素を30代前半から意識していれば、30代後半〜40代でも市場価値は伸びる。逆に、この3要素を放置したまま年齢を重ねると、35歳前後で単価が頭打ちになる。

30代で詰むかどうかは、今の行動で決まる。


まず自分の市場単価を知る

30代以降のキャリア設計には、現時点の市場価値を正確に把握することが起点になる。

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まとめ

『SES 30代 詰む』は業態の宿命ではなく、特定の行動パターンの結果だ。案件選択の主体性・スキルの上流化・マージン率の理解、この3つを30代前半から意識すれば、30代後半〜40代でも市場価値は伸びる。35歳定年説は制度ではなく、個人の行動と企業の対応の結果として発生している。

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小川将司

この記事の著者

小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

IT業界12年・SES事業6年の現役経営者がHeyday 30代転向者の単価変遷データで執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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