SES未経験エンジニアの初期単価は月額35〜45万円。年収換算では280〜360万円が現実的な水準だ。だが3年後には、同じ入社時期でも年収450万円台で停滞する人と、年収500万円を超える人に分かれる。この差は年間で200万円以上の収入差になる。
Heydayでは2024〜2025年度に未経験で採用したエンジニア8名のうち、2年以内に月額60万円(年収換算約504万円)を超えたのは5名だ。全員に共通していたのは、入社初期から「次にやりたい工程」を営業に伝えていたことだった。
私はHeyday株式会社でSES営業を担当している篠田だ。未経験エンジニアの案件紹介・面談同席・単価交渉を担当してきた。差を生むのは能力の差ではなく「最初の選択と積み方の差」だということを、案件を紹介する側の視点から伝えたい。
SES市場全体の単価推移(2022〜2026年)
「エンジニア単価推移」を語る上で、まず市場全体のトレンドを把握しておく必要がある。未経験エンジニアの初期単価は、個人のスキルだけでなく市場全体の需給バランスに左右されるからだ。
2022〜2026年の単価トレンド
2022年以降、SES市場のエンジニア単価は全体的に上昇局面が続いている。背景にあるのは以下の3つだ。
- DX推進によるIT需要の急拡大: 大手製造業・金融・小売のDX投資が加速し、ITエンジニアの発注量が増加した
- IT人材不足の深刻化: 経済産業省の試算では2030年に最大79万人のIT人材が不足するとされており、需要過多の状態が続く
- AI関連案件の増加: LLMを活用したシステム開発・AIエージェント導入案件が急増し、エンジニア全体の市場価値が底上げされた
Heyday実績データ:未経験者の初期単価推移
「Heydayでは未経験エンジニアの初期単価が2024〜2025年にかけて平均38万円→41万円に上昇した(篠田担当、n=23名、2026Q1時点)」
具体的な数値でいうと、2024年上半期に参画した未経験者の初回単価の平均は38.2万円だったが、2025年下半期〜2026年Q1に参画した未経験者の平均は41.4万円になっている。約3万円、率にして8%の上昇だ。
ただし、この上昇は工程・職種によって大きく差がある。
| 職種・工程 | 2024年上半期平均 | 2025年下半期〜2026Q1平均 | 変化 |
|---|
| テスト・運用 | 34万円 | 35万円 | +1万円(+3%) |
| 実装(バックエンド) | 38万円 | 42万円 | +4万円(+11%) |
| 実装(フロントエンド) | 37万円 | 41万円 | +4万円(+11%) |
| 設計補助 | 44万円 | 50万円 | +6万円(+14%) |
上流工程ほど単価上昇幅が大きく、テスト・運用は横ばいに近い。この傾向は今後も続くと私(篠田)は見ている。AI・自動化によるテスト工程の効率化が進む一方で、設計・上流工程の需要は増し続けているからだ。
市場のトレンドとして押さえるべき重要な点は「未経験でも入れる工程の単価が上がっている」という事実だ。 スタート時点の年収が上がっているということは、そこから積み上げた場合の3年後・5年後の年収も全体的にシフトアップする。2023年以前に入社した先輩と同じ経験を積んでも、今から入る人のほうが高い単価に到達しやすい環境になっている。
未経験入社後の単価・年収推移|1年・2年・3年の現実
入社直後〜1年目の単価と年収
未経験でSESに入社した場合、最初の案件は月額35〜45万円が現実的な範囲だ。
| 経験 | 単価レンジ(月額) | 年収換算目安 | 主な案件内容 |
|---|
| 入社直後(3〜6ヶ月の研修後) | 35〜45万円 | 280〜360万円 | テスト実施、運用監視、データ入力・移行作業 |
| 1年目後半 | 40〜50万円 | 320〜400万円 | 簡単な実装タスク、バグ修正、既存機能の改修 |
この段階では、技術スキルより「現場に入れるかどうか」の判断が優先される。クライアントは未経験エンジニアに即戦力を期待していない。信頼できるか・コミュニケーションが取れるか・素直に吸収するか——これが案件参画の最初の評価軸だ。
2年目の単価と年収
2年目になると、実装案件のタスクを一定量こなした実績ができてくる。
| 状況 | 単価レンジ(月額) | 年収換算目安 |
|---|
| テスト・運用中心で2年経過 | 45〜55万円 | 360〜440万円 |
| 設計補助・実装を担当して2年経過 | 55〜65万円 | 440〜520万円 |
| 需要の高い言語(Python/Go等)で2年の実装経験 | 58〜68万円 | 464〜544万円 |
2年目に大きな差が出るのが「設計・実装に関与できているかどうか」だ。テスト・運用中心で2年が経過した場合と、実装タスクを積極的に担当した2年では、単価に月額10〜15万円の差が出始める。年収差にすると120〜180万円になる。
3年目の単価と年収
SESで3年経験を積んだエンジニアの単価は、経験の質によって大きく分かれる。
| 経験の積み方 | 3年目の単価(月額) | 年収換算目安 |
|---|
| テスト・運用が中心 | 50〜60万円 | 400〜480万円 |
| 実装中心、設計経験あり | 60〜72万円 | 480〜576万円 |
| 上流(設計〜要件定義)に参画 | 68〜80万円 | 544〜640万円 |
| 需要の高い技術(AWS/Go/Python)専門 | 70〜82万円 | 560〜656万円 |
3年目の「上限」は、最初の2年をどう使ったかでほぼ決まる。テスト・運用だけで3年経過した場合、60万円の壁を超えることが難しくなる。
職種別の初期単価テーブル
未経験でもどの職種・工程から入るかで、初期単価と3年後のポテンシャルが変わる。以下は職種別の目安だ。
| 職種・工程 | 未経験初期単価(月額) | 3年後の上限単価(月額) | 特徴 |
|---|
| テスター(テスト実施・品質確認) | 30〜38万円 | 50〜60万円 | 案件数が多く入りやすい。ただし単価上限が低い |
| 実装(バックエンド・フロントエンド) | 38〜48万円 | 65〜80万円 | 技術の積み上げが単価に直結。言語選択も重要 |
| 設計補助(基本設計・詳細設計) | 45〜60万円 | 72〜90万円 | 未経験で入れるケースは少ないが高ポテンシャル |
| PM補助(進捗管理・議事録等) | 55〜70万円 | 80〜100万円 | ドメイン知識(金融・医療等)があると評価されやすい |
重要な注意点がある。 未経験で最初からPM補助や設計補助に入れるケースは稀だ。多くの場合はテスター・実装から始まり、実績を積んで上の工程に上がっていく。この「最初の工程をできるだけ実装寄りにする」判断が、3年後の単価に大きく影響する。
年収換算テーブル|単価→還元率→月給→年収のフロー
SESの場合、月額単価がそのまま手取りになるわけではない。SES企業のマージン(運営コスト・利益)が引かれた後の還元率で給与が計算される。
還元率とは
還元率=給与 ÷ 月額単価 × 100(%)
Heydayの場合、還元率は70〜75%が目安だ(業界平均は65〜70%程度)。
月額単価別の年収換算表(還元率70%の場合)
| 月額単価 | 月給(還元率70%) | 賞与なし年収 | 賞与2ヶ月時の年収 |
|---|
| 35万円 | 24.5万円 | 294万円 | 343万円 |
| 40万円 | 28.0万円 | 336万円 | 392万円 |
| 45万円 | 31.5万円 | 378万円 | 441万円 |
| 50万円 | 35.0万円 | 420万円 | 490万円 |
| 60万円 | 42.0万円 | 504万円 | 588万円 |
| 70万円 | 49.0万円 | 588万円 | 686万円 |
| 80万円 | 56.0万円 | 672万円 | 784万円 |
フロー例:未経験1年目
月額単価 40万円
× 還元率 70%
= 月給 28万円
× 12ヶ月
= 基本年収 336万円
+ 賞与(会社による)
注意点が2つある。1つ目は、還元率は会社によって60〜80%と幅がある。入社前に必ず確認すること。2つ目は、社会保険料・所得税が控除されるため、手取りはさらに20〜25%程度少なくなる。
SESの手取り計算の詳細は SESのマージン構造を金額で分解する で確認してほしい。
3年で分かれる道:年収500万超と停滞組の違い
Heydayで見てきた複数のエンジニアのケースから、単価の早期上昇を決める要因を整理する。
実例1:3年で月額70万円(年収560万円)に到達したAさん
2023年にJava未経験で入社したAさん。入社時の案件単価は38万円(年収換算約320万円)だった。
1年目のテスト案件で空き時間に「実装タスクも任せてほしい」と現場リーダーに直接相談し、簡単なバグ修正から任されるようになった。私(篠田)に対しても「次の案件では詳細設計から入りたい」と1年目の後半には伝えてきていた。
2年目には設計補助を担当する案件にアサインし、単価は58万円に(年収換算約487万円)。3年目の現在はPython案件で月額68万円で稼働している(年収換算約571万円)。入社時から3年で単価は1.8倍になった。
Aさんのケースで印象的だったのは、営業である私に「次はこの工程をやりたい」だけでなく「このポートフォリオを面談で出していい?」と聞いてきたことだ。営業としても提案しやすく、クライアント面談での評価が明確に変わった。
Aさんに共通する行動パターン:
- 1年目から「実装させてください」と手を挙げた
- 自分の単価(契約単価)を入社時から把握していた
- 次の案件で入りたい工程を先に伝えていた
- 副業・個人開発でアウトプットを積み、GitHubを活用していた
実例2:3年経過しても単価が停滞したBさん(匿名)
同時期に同じくテスト・運用案件から入ったBさんのケースも紹介する(本人承諾済み)。
入社時の単価は36万円。3年間、同じ現場でテスト実施・不具合票作成・運用監視を担当し続けた。技術的なミスはなく、現場での評価は安定していた。しかし単価の伸びは鈍く、3年目時点で44万円(年収換算約370万円)にとどまっている。
Bさんに話を聞くと、「実装に移りたいとは思っていたが、現場が忙しくて言い出せなかった」「単価がいくらか、最初に聞いたきり確認していなかった」という。
私(篠田)への要望も「お任せします」が多く、案件を探す際の具体的な条件を伝えてもらえなかった。結果として、テスト・運用案件しか紹介できない状態が続いた。
Bさんの停滞パターン:
- テスト・運用案件が続いても「言われるがまま」だった
- 自分の単価(契約単価)を3年間確認しなかった
- 技術習得が業務内のみに限られていた
- 営業への要望が常に「お任せ」だった
AさんとBさんの差は、3年後の年収で約200万円になっている。この差は「能力の差」ではなく、「意思表示の有無」で生まれた。
最大の差異は「受け身か能動か」だ。 SESという働き方は、案件を選ぶ余地がある程度あるため、受け身のままでいると単価が上がりにくい構造になっている。営業は案件を選ぶ代理人ではなく、希望をもとに動く実行者だ。
言語選択が初期単価に与える影響
未経験の段階では「言語を選ぶ余裕はない」という現実もあるが、選択の余地がある場合は知っておく価値がある。
言語別の単価ベース(未経験〜1年の案件単価)
| 言語 | 入社後の初期案件単価(目安) | 2〜3年後の単価ポテンシャル | 案件数 |
|---|
| Java | 40〜50万円 | 60〜75万円 | 最多 |
| Python | 42〜52万円 | 62〜80万円 | 多 |
| PHP | 38〜48万円 | 55〜68万円 | 多 |
| JavaScript/TypeScript | 40〜50万円 | 58〜75万円 | 多 |
| Go | 45〜55万円(未経験者の採用は少ない) | 68〜85万円 | 中 |
| C# | 40〜50万円 | 58〜72万円 | 中 |
Javaは案件数が最多であり、未経験エンジニアが最初の案件に入りやすい環境が整っている。PythonはAI/MLへの発展性があり、中長期的な単価ポテンシャルが高い。
注意すべきなのはPHPで、案件数は多いが単価ポテンシャルがJavaやPythonより低めだ。PHPからのキャリア転換でPythonやGoを学ぶエンジニアも多いため、最初の言語として選ぶ場合は意識しておくと良い。
言語別の詳細な年収データは SESエンジニアの年収は言語で決まるのか? で確認できる。
未経験でも選ぶべき案件の条件
最初の案件選びは、その後の単価に大きく影響する。特に以下の点を意識して案件を選ぶべきだ。
優先すべき条件
1. 開発案件(新規・改修)であること
テスト・運用・データ移行が中心の案件は、短期的なスキルアップが見込みにくい。コードを書く機会がある案件を選ぶことが、単価上昇の前提となる。
2. コードレビュー文化がある現場であること
コードレビューを受けることで、実装スキルが急速に伸びる。「レビューはほとんどない」という現場では、自己流の悪い癖が固定化されるリスクがある。
3. Git・バージョン管理が適切に運用されていること
GitのブランチModel・PRレビューの運用が整っている現場は、開発文化が整っている目安になる。
4. モダンな技術スタックが使われていること
レガシーな技術スタック(Java 8以前、jQuery、古いCMS等)のみの現場は、そこで積んだスキルの市場価値が低くなりやすい。
避けるべき条件
- 常駐先の人数が1〜2名のみ(孤立しやすく、スキルアップの機会が少ない)
- 単価が低く、「経験のために」という説明しかない案件(単価には経験の対価が含まれているべき)
- 商流が3次請け以上(単価が低い上に、エンド企業の情報が届きにくい)
案件の商流が手取りに与える影響は大きい。同じスキル・同じ経験年数でも、2次請けと4次請けでは年収に200万円以上の差が出ることがある。商流の仕組みと手取りへの影響を詳しく知りたい場合は SESのマージン構造を金額で分解する を読んでほしい。
SES企業の選び方そのものについては SES企業の選び方とホワイト見分け方 で詳しく解説している。
Heydayでは契約単価・マージン・商流をすべて開示しています
「自分の単価が適正か分からない」「もっといい条件の案件があるのでは」という方のご相談を受け付けている。Heydayでは稼働前に契約単価を本人に開示し、マージン構造についても質問があればすべて回答している。
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よくある質問(FAQ)
Q. 未経験からSESに入る場合、最初の年収はどのくらいになりますか?
最初の年収は280〜360万円程度が多いです。月額単価が35〜45万円の案件に入り、還元率65〜75%程度で計算すると、月の基本給は23〜34万円程度になります(賞与・各種手当で変動あり)。SESの場合、単価が上がれば給与が上がる仕組みが多いため、最初の年収より「単価がどれだけ早く上がるか」を重視する視点が重要です。
Q. プログラミングスクールを経ずにSESに入った場合と、スクール卒業後では単価に差がありますか?
入社時点での単価に大きな差はありません。スクールで学んだ内容と、現場で求められるスキルにギャップがある場合も多く、結局は現場で1〜2年経験を積むことで単価が上がる構造は同じです。スクールを経ることで「最初の案件に入りやすくなる」という効果はあります(基礎が整っているため、クライアントへの提案がしやすい)。
Q. 未経験でも高単価案件に入れますか?
入社直後に高単価案件に入ることは基本的に難しいです。SES市場では、クライアントはエンジニアのスキルに対して単価を支払うため、実績のない未経験者が月額60万円以上の案件に入れるケースは稀です。ただし、他業界での専門知識(医療・金融・製造等)があれば、ドメイン知識の価値として評価されるケースがあります。
Q. 3年間テスト・運用が続いた場合、巻き返しはできますか?
できますが、追加の努力が必要になります。業務外での学習(プログラミング・クラウド・設計知識)を積み、ポートフォリオを作成してから「実装・設計案件に移りたい」と所属企業の営業担当に伝えることが現実的なルートです。また、現在の所属企業が「実装案件を紹介できない」構造であれば、転職を検討する価値があります。3年テスト・運用でも、追加1〜2年で設計・実装の実績を作れれば、単価60〜65万円の水準に追いつくことは可能です。
Q. SES企業を選ぶ時に未経験者が特に注目すべき点は何ですか?
3点あります。1つ目は、研修後の案件の「工程」を確認することです。テスト・運用中心か、実装も含むかを事前に聞いてください。2つ目は、単価(契約単価)を自分に開示してくれるかどうかです。自分の市場価値を把握できない環境は、長期的にキャリアに不利に働きます。3つ目は、定期的な単価交渉の機会があるかどうかです。スキルアップに連動して単価・給与を見直す仕組みがある企業を選ぶことが、長期的な収入向上につながります。
Q. エンジニア単価の市場全体の推移は今後どうなりますか?
2026年以降も、上流工程・クラウド・AI関連のスキルを持つエンジニアの単価は上昇が続く見込みです。一方、テスト・運用・単純な実装工程はAIによる自動化の影響を受けやすく、単価は横ばい〜下落するリスクがあります。未経験でスタートする場合も、最初の案件でできるだけ実装工程に関わることが、市場トレンドへの対応になります。
まとめ
SES未経験からの単価・年収推移と市場トレンドを整理した。
- 入社直後の単価は月額35〜45万円、年収換算280〜360万円: テスト・運用案件が中心になることが多い
- SES市場全体の単価は2024〜2025年に上昇局面: Heydayの未経験者初期単価は平均38万→41万円に上昇(n=23名)。上流工程ほど上昇幅が大きく、テスト・運用は横ばい
- 職種別初期単価はテスター30〜38万、実装38〜48万、設計45〜60万、PM55〜70万: 最初の工程選択が3年後の年収に大きく影響する
- 3年後の年収は経験の質で大きく開く: テスト・運用中心なら年収400〜480万円、設計・実装を積んでいれば年収480〜640万円も現実的
- 早期単価上昇の鍵は「能動的な姿勢」: 次に担当したい工程を事前に伝え、案件を選ぶ意識を持つ
- 年収換算は「単価×還元率×12ヶ月」で計算: 還元率70%なら月額40万円→年収336万円
現在のスキルセットで市場単価がいくらになるか、診断ツールで確認してみてほしい。
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