「KotlinはJavaの後継だから、Java経験があれば単価が上がりやすいと聞いた。本当か?」
この質問をエンジニアから受けることがある。
答えはYesだが、どの方向でKotlinを使うかによって単価レンジが大きく変わる。
KotlinはAndroidアプリ開発が最も需要の大きい用途だ。しかし同時に、サーバーサイド(Spring Boot with Kotlin、Ktor)やKotlin Multiplatform Mobile(KMM)でも使われるようになっている。それぞれの用途で市場の評価が違い、単価の天井も異なる。
Heydayでは2024〜2026年にかけてKotlin案件の扱いが増えており、EC・HR・メディア系のクライアントからの依頼が特に多い。その現場データをもとに、Kotlinエンジニアの単価相場を整理する。
Kotlinの需要構造:3つの用途
Kotlin案件は大きく3つの領域に分かれる。それぞれ求められるスキルと単価の傾向が異なる。
1. Androidアプリ開発(最大の需要領域)
KotlinはGoogleが2017年にAndroid公式言語として採用したため、現在のAndroidアプリ開発ではKotlinが標準だ。JavaからKotlinへの移行が完了した企業も多く、新規開発はほぼKotlinで行われている。
需要の特徴:
- 金融・EC・HR・メディア系アプリで安定した需要
- Jetpack Compose(宣言的UI)の案件が2024年以降急増
- テスト・CI/CDを含む開発全体を担える人材の不足
2. サーバーサイドKotlin(バックエンドAPI)
Spring BootはJavaとKotlinの両方で動作する。Kotlinの書きやすさ(null安全性・data class・コルーチン等)を採用してバックエンドをKotlinで構築する企業が増えている。
また、KotlinネイティブのWebフレームワーク「Ktor」も中規模のAPIサーバー構築で採用事例が増えている。
需要の特徴:
- Spring Boot + KotlinはJava案件の延長として扱われることが多い
- KtorはGo/Rustほど需要は大きくないが、スタートアップや自社開発企業では選ばれている
- Java移行プロジェクト(JavaコードベースをKotlinに書き直す)案件も存在する
3. Kotlin Multiplatform Mobile(KMM)
KMMはiOSとAndroidのコードを一部共有できるクロスプラットフォーム技術だ。 Flutter・React Nativeと競合する位置にあり、大企業での採用事例が出始めている。
2026年現在、KMM案件はまだ少数派だが、習得しているエンジニアはさらに少ないため、希少性による単価プレミアムがつく。
Kotlinエンジニアの単価相場(経験年数別)
以下はエンド直または1次請け案件における実勢レンジだ。Androidアプリ開発として主に整理している(サーバーサイドは後述)。
| 経験年数 | 正社員SES(月額) | フリーランス(月額) | 年収換算(SES正社員目安) | 市場での立ち位置 |
|---|---|---|---|---|
| 1年未満 | 32〜42万円 | 45〜58万円 | 384〜504万円 | Android基礎・Kotlin文法習得段階 |
| 1〜3年 | 45〜55万円 | 60〜70万円 | 540〜660万円 | 単体機能の実装・テストが一人でできる |
| 3〜5年 | 55〜65万円 | 70〜85万円 | 660〜780万円 | アーキテクチャ設計・チームリード |
| 5年以上 | 65〜80万円 | 85〜100万円 | 780〜960万円 | テックリード・Jetpack Compose対応 |
前提: 多重下請け構造(3次・4次請け)では、これより15〜25%低くなるケースが多い。フリーランス単価は個人での稼働前提。
用途・技術スタック別の単価差
Kotlinの用途によって、同じ経験年数でも単価レンジが変わる。
| 用途・技術スタック | 単価レンジ(経験3〜5年) | 市場トレンド | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Androidアプリ(Jetpack Compose) | 60〜78万円 | 拡大中 | 宣言的UIへの移行需要が高い |
| Androidアプリ(View/XML) | 55〜70万円 | 横ばい | 保守案件が多い。旧UIの知識も必要 |
| Spring Boot + Kotlin(バックエンド) | 62〜80万円 | 拡大中 | Java経験者が移行しやすい |
| Ktor(バックエンド) | 65〜85万円 | 拡大中 | 採用企業は少ないが単価プレミアムあり |
| Kotlin Multiplatform Mobile | 72〜95万円 | 拡大中 | 希少性が高く単価プレミアム |
| Java → Kotlin移行プロジェクト | 60〜80万円 | 安定 | 両言語の知識が必要 |
Java経験者がKotlinに移行した場合の単価への影響
「JavaエンジニアがKotlinも扱えると単価が上がる」というのは事実だ。
ただし、単価への影響は移行のパターンによって異なる。
パターン1: Spring Boot(Java)→ Spring Boot(Kotlin)
同じSpring Bootでも、Kotlinで書けることで提案できる案件の幅が広がる。 移行後の単価への影響は月3〜8万円程度の上昇が多い。
理由は、Kotlinを採用する企業は比較的新しいシステムを構築していることが多く、案件単価も高めに設定されているためだ。
パターン2: Java(業務系)→ Androidアプリ(Kotlin)
これは単純な移行ではなく、実質的なキャリアチェンジになる。 Android UIの知識・Jetpack Compose・非同期処理(Coroutines)など、学び直しが必要なスキルが多い。
移行に6〜12ヶ月かかることが多く、その間は単価が一時的に下がることもある。 ただし移行完了後は月5〜10万円の単価上昇が見込める。
パターン3: Java + Android(XML UI)→ Kotlin + Jetpack Compose
同じAndroid開発者としての移行で、最もスムーズなルートだ。 JetpackComposeへの対応は需要が急増しており、移行後1〜3ヶ月で単価に反映されやすい。 影響は月5〜12万円の上昇が多い。
Jetpack Composeの登場が単価に与えた影響
Jetpack Composeは2021年に正式リリースされたAndroid向けの宣言的UIフレームワークで、従来のXML/ViewシステムからReact/Swiftに近い書き方に変わった。
2026年現在、新規Android開発案件のうち70〜80%がJetpack Composeを採用しており、ComposeができるKotlinエンジニアの需要が高い。
| スキル | 単価への影響(経験3〜5年基準) |
|---|---|
| XML/View のみ | 標準(55〜65万円) |
| Jetpack Compose(基礎) | +3〜6万円 |
| Jetpack Compose(設計・アーキテクチャ) | +6〜12万円 |
| Compose + Hilt(DI)+ Coroutines + Flow | +8〜15万円 |
Composeとあわせてアーキテクチャ設計(Clean Architecture / MVI / MVVM)への理解があると、テックリード案件として評価されやすくなる。
KMMの登場と市場への影響
Kotlin Multiplatform Mobile(KMM)は、iOSとAndroidのビジネスロジックを共有できる仕組みだ。
2026年現在、KMMは以下のような企業で採用が進んでいる:
- 自社開発企業でコストを抑えてiOS/Androidを両対応したいスタートアップ
- Kotlin既存資産を活用したいAndroid中心の開発チーム
- 大企業の一部のアプリ(Netflix、Philipsなど海外事例)
ただし案件数はまだ少なく、React NativeやFlutterと比べると普及は限定的だ。
KMMエンジニアの単価への影響:
- KMM経験があるエンジニアは市場にほぼいないため、希少性で月5〜15万円プレミアムがつく
- iOSの知識も求められるケースがあり、Swiftの基礎知識があるとさらに評価が上がる
- 2026〜2028年にかけてKMM採用企業が増えると予測されており、先行習得のコスパは高い
