「3年間、AWSがやりたいとずっと言い続けてた。でも、それが叶わなかった理由はスキルじゃなかったって気づいたとき、正直、拍子抜けしたんです」
Heydayで営業サポートをしている野沢です。今回お話を伺ったのは、Y.Mさん(26歳・クラウドインフラ)。文系・営業職出身のSES未経験入社で、3年目にHeydayへ転職した方だ。
入社からの3年間、AWSを触りたいと思い続け、独学でAWS SAAまで取得した。それでも案件に入れず、単価も上がらなかった。その理由が「自分のスキル不足」ではなかったと知ったのは、転職してからだった。
オンライン取材の冒頭、Y.Mさんは少し笑いながら「拍子抜け」という言葉を選んだ。3年分の焦りや諦めが、あっけなく解けた瞬間の話を、できるだけそのまま残しておきたいと思う。
26歳、「手に職」という動機だけで飛び込んだ
Y.Mさんがエンジニアになったのは23歳の終わりだった。文系の大学を卒業して、新卒で入った会社では3年間営業をやっていた。
「営業がすごく嫌だったわけじゃないんです。ただ、5年後10年後の自分が今と同じことをやってる気がして、それがしんどかった」
転機は、コロナ禍のリモートワークだった。家で過ごす時間が長くなり、Progateを試してみたら、思ったより手が動いた。次にUdemyでLinuxの基礎、次にJavaの入門講座、次にネットワーク。半年ほど触っているうちに「これを仕事にしたい」と思うようになった。
「手に職、っていう言葉が一番近いと思います。プログラミングが特別好きだったというより、自分の手で何かを作れる職業に変わりたかった。営業だと、会社の看板で売れる部分が大きくて、自分の力で何ができるのか分からなかったので」
26歳になる年、未経験者を採用しているSES企業に転職した。研修2ヶ月。Java・SQL・Linuxの基本を一通り学んで、3ヶ月目から現場に出た。
「採用面接のときに『AWSをやりたいです』って伝えてあったんです。クラウドの時代だから、これからのエンジニアはAWSができないとまずいって、自分なりに調べてた。担当の方は『将来的には可能です』って答えてくれて、それで決めました」
「将来的には」がいつ来るのかは、そのときは分からなかった。
配属されたのは「見えない場所」だった
最初に配属されたのは、金融系の基幹システム保守案件だった。
「業務内容は、マニュアルに沿ってバグ修正をする仕事でした。仕様書があって、テストケースがあって、Javaのコードを5行直す。そういう作業を1日に何件もこなす」
クラウドはまったく使っていなかった。オンプレのサーバー、社内のネットワーク、専用線で繋がれた業務システム。Y.Mさんが学んでいたAWSの知識は、現場で1度も活きる場面がなかった。
「最初の半年は、それでもよかったんです。仕事を覚えるのに必死だったし、Javaのコードを読めるようになっていく実感があった。1年目の終わりに、保守の中でも少し設計に近いタスクを任せてもらえて、嬉しかった記憶があります」
ただ、単価が誰からも教えてもらえないことだけは、ずっと引っかかっていた。
「面談で営業の方に聞いたことがあるんです。『自分の単価っていくらですか』って。そしたら『会社の規定で、契約単価は社員には開示しない決まりなんです』って。なんでだろう、と思ったけど、それ以上は聞けなかった」
あとで分かることだが、入社時のY.Mさんの単価は月35万円だった。本人は3年後、転職してから初めてその数字を知ることになる。
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2年目、「AWS希望」を伝えた日
2年目に入って、同じ保守案件の継続が決まった。設計タスクは増えたが、本質的な仕事の内容は変わらなかった。Javaのコードを修正する。テストを書く。リリース手順書を作る。
その頃から、Y.Mさんは少しずつ焦りを感じ始めた。
「同期で入った中に、自社開発に転職した人がいて。その人がSlackで『AWSのインフラ構築楽しい』って書いてるのを見たんですよね。自分はまだJavaの保守をやってる。差がついてる気がしました」
2年目の夏、四半期面談で営業に伝えた。「次の案件ではAWSを触れる現場に行きたいです」。
「その面談では『検討します』って言われました。具体的な話は出なかったけど、やっと前に進む気がして、ちょっと期待してました」
3ヶ月後の更新タイミング。営業から提示された次の案件は、別の金融系の保守だった。Java中心。AWSは使わない。
「『今回はAWS案件のタイミングが合わなかった。次の更新で検討します』って言われて。まあ、そういうこともあるか、と思ったんです」
半年後、また同じことが起きた。「今は空きがない、次の更新で」。
「3回目は、もう何も言いませんでした。『どこのSESも同じだろうな』って思ってたので。希望は伝えるけど、結果は変わらない。営業を恨んでたわけじゃないんです。会社のシステムってこういうものなんだろうな、って」
SAAを取った。なのに何も変わらなかった
3年目の春、Y.Mさんは決意してAWS SAA(Solutions Architect Associate)の勉強を始めた。
「希望を伝えるだけじゃ動かないなら、自分で動くしかないと思ったんです。資格があれば、営業も案件を出しやすくなるはずだって」
平日は仕事終わりに2時間、休日は4時間。Udemyの教材を1周、模擬試験を3周、Black Beltの動画を必要なところだけ。3ヶ月で合格した。
「合格通知が出た日、嬉しかったんですよ。深夜だったけど、ガッツポーズしました。これで自分も『AWSやれる人』のカテゴリに入った気がして」
翌週の面談で、営業に報告した。スマホで合格証を見せた。
「『お疲れ様でした』って言われました。それだけです」
Y.Mさんは少し間を置いてから、続けた。
「『次の更新でAWS案件を探しますね』みたいな話もなくて、本当に『お疲れ様でした』だけだったんです。その日の帰り道、なんとも言えない気持ちで電車に乗ってました。達成感と、何かが足りない感じが、同時にあって」
更新のタイミングが来た。提示された次の案件は、また保守だった。AWSではなかった。
「そのときに気づいたんです。資格があっても、会社が出す案件のラインナップが変わらないなら、自分には届かないんだって」
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達成感は、虚無感に変わった。
「3ヶ月かけて取ったのに、何も変わらなかった。じゃあ、自分は何のために頑張ったんだろうって。資格を取った行為自体が無駄だったような気がして、しばらくモチベーションが上がらなかったです」
深夜の検索と、「会社の問題だった」という気づき
転機は、3年目の秋、深夜の検索だった。
「金曜の夜、寝る前にスマホをいじってて。『SES AWS 資格 案件 入れない』みたいな検索ワードを打ち込んでた記憶があります。自分と同じ状況の人がいるのか、いるならどう抜け出したのかを知りたくて」
検索結果の中に、Heydayの記事があった。AWS実務経験の積み方を解説している記事だった。
「途中まで普通の解説記事として読んでたんです。資格の話、案件の話、単価の話。でも、ある段落で手が止まりました」
その段落には、こう書かれていたという(Y.Mさんの記憶のままを引用する)。
「『資格を持っていてもAWS案件に入れないエンジニアは多い。理由はスキル不足ではなく、所属会社が持つ案件ラインナップの問題だ。AWS案件は商流の上流に集中しており、保守中心の3次請けSESには物理的にAWS案件の在庫がない』」
「読みながら、ああ、って声が出ました。今まで自分のスキルが足りないんだと思ってたんです。資格を取ってもダメなのは、まだ何かが足りないからだって。でも違った。会社の問題だった」
Y.Mさんはその夜、診断ツールを開いた。
言語、経験年数、AWS資格、希望する働き方を選んでいくと、最後に単価レンジが表示された。
「『AWS SAA保有・実務3年・Java経験あり』で、市場単価は58〜68万円って出たんです。自分の単価がいくらかは分からなかったけど、その数字を見て『これが自分の値段なのか』って」
数日後、Y.Mさんは前職の経理担当者に頼んで、自分の契約単価を確認してもらった。月35万円だった。
「分かったときは、怒りとも悲しさとも違う、静かな驚きでした。3年経って42万から45万くらいかなと勝手に思ってたんです。実際は35万。20万以上のギャップが、自分の知らないところでありました」
面談で起きた3つの変化|単価開示・AWS案件3件・選択権
その週末、Y.MさんはHeydayに問い合わせを送った。月曜の朝には返信が届き、金曜の夜にオンライン面談が組まれた。
面談で起きたことを、Y.Mさんは「3つあった」と表現した。
1つ目は、単価の開示だった。
「面談の冒頭で、『Y.Mさんのスキルなら、AWS構築寄りの案件で初回62〜65万、設計まで関われる案件なら70万前後の提示が可能です』って言われました。前の会社では1度も聞けなかった数字を、初対面の人が、面談の最初に出してくれた」
担当者は単価レンジの根拠を画面で見せた。直近3ヶ月でAWS関連案件に成約した実績データ、Y.Mさんと近い経験年数・資格保有のレンジ、商流別の単価分布。
「数字の根拠まで見せてくれて、これは適当に言ってる数字じゃないんだなって分かりました」
2つ目は、AWS案件3件の提示だった。
「その面談のあと、3日後に案件を3つ送ってもらえました。EC2/RDS/S3を使った構築案件、コンテナ移行案件、設計フェーズから入る案件。全部AWSでした」
Y.Mさんは画面の前で笑ってしまった。
「3年間、希望しても1件も出てこなかったAWS案件が、3日で3件来たんです。びっくりしたというより、何だったんだろう、3年間って」
3つ目は、「自分で選べる」という体験だった。
「『この3件の中からY.Mさんが行きたい案件を選んでください』って言われたんです。前の会社では『次はこの案件です』って言われて行く形だったので、自分で選ぶっていう感覚がなくて」
3件を比較して、Y.Mさんは1件目のEC2/RDS/S3を使った構築案件を選んだ。最も実装に手を動かせる現場だと判断したからだ。
問い合わせから案件決定まで、約3週間だった。
初めてAWSの現場に入った日
新しい現場の初日、Y.Mさんはオフィスのドアを開ける前に少し立ち止まった。
「3年間、AWSやりたいって言い続けてた現場が、ついに目の前にあるって思って。緊張してたし、嬉しかったし、ちゃんとやれるかなって不安もあって」
業務の内容は、社内向け業務システムのAWS基盤構築だった。EC2、RDS、S3、ALB、Route53。最初の1ヶ月はTerraformでのIaC化に取り組み、2ヶ月目からはマルチAZ構成への移行を担当した。
「初めて触るサービスもあったけど、SAAで体系的に学んでた範囲だったので、ドキュメント読みながら手を動かせばなんとかなりました。資格って、こういうときに効くんだなって、3年越しに理解しました」
初回の単価は62万円だった。
「前の会社が35万だったので、差額が27万。手取りで月15万以上違います。家賃を払って、生活費を引いても、毎月貯金できる額が全然違う」
3ヶ月後の更新タイミングで、設計フェーズへの参加が決まった。クライアント側のアーキテクトと一緒に、新しいワークロードのAWS設計に入る役割だ。
更新交渉の場で、Y.Mさんは初めて「単価交渉」というものを経験した。
「Heyday側から『設計フェーズ参画の単価レンジは68〜72万なので、今回は68万でクライアントに交渉します』って先に提示があって。クライアントOKが出て、68万になりました」
3年間、保守の中でじりじり待っていたAWS案件が、転職から半年で「設計に関われる立場」まで来ていた。
「3年間のやりたかったことが、急に現実になった感覚でした。なんで前の会社では3年かかっても無理だったものが、ここでは半年で来るんだろうって」
その答えは、もうY.Mさん自身が知っていた。会社が持っている案件のラインナップと、商流の差だ。スキルは、入社時から3年間、ずっとY.Mさんの中にあった。
「遅くなかった」という話
取材の最後に、3年間を振り返って思うことを聞いた。
Y.Mさんは少し考えてから、ゆっくり答えた。
「3年が無駄だったとは思ってないんです。Javaのコードをちゃんと読めるようになったのも、保守の中で要件を整理する力がついたのも、あの3年があったからで」
「ただ、もう少し早く『会社の問題かもしれない』って疑えてたら、1年か2年は短縮できたなって思います。自分のスキルが足りないって思い込んでた時間が長すぎた」
資格についても、はっきり言葉にしてくれた。
「SAA取ったのは正解でした。前の会社では活かせなかったけど、転職してから一気に活きた。資格は無駄じゃなかったんです。場所が違っただけで」
「もし同じ状況の人がいるなら、伝えたいのは、希望が叶わない理由を全部自分のせいにしなくていいってことです。会社が持ってる案件のラインナップが、そもそも自分の希望と合ってない場合がある。それは自分のスキル不足じゃない」
少し間を置いてから、Y.Mさんは静かに付け加えた。
「3年経って、26歳で、ようやくAWSの現場にいる。遅いと思ってたけど、今は遅くなかったと思います。気づけたタイミングが、自分にとっての適正だったんだろうなって」
穏やかな声だった。3年間の焦りや諦めの重さは、もうそこにはなかった。
Y.Mさん / 26歳 / クラウドインフラ / 正社員エンジニア
掲載にあたり、プライバシー保護のためイニシャル表記としています。取材は2026年5月に実施しました。
Y.Mさんへのよくある質問
Q. AWS SAAを取得すれば未経験でもAWS案件に入れますか?
結論:資格だけでは入れない。所属会社が持っている案件ラインナップに左右される。Y.Mさんは前職でSAAを取得したが、保守中心の3次請け会社にいたためAWS案件の在庫がなく、3年間入れなかった。資格は「実務経験を補強する材料」であり、案件アサインを保証するものではない。資格を活かしたい場合は、AWS案件に直接アクセスできる商流の浅い会社(エンド直・1次請け)への転職が最短ルートになる場合がある。
Q. 入社時の単価35万円は安すぎますか?
結論:未経験入社の単価としては業界水準だが、3年経って35万のままなのは商流の問題が大きい。SES未経験入社の初回単価は30〜40万円が一般的で、35万円自体は不当に低いわけではない。ただし3年経っても単価が動かない場合、次の3つを疑う必要がある:(1)商流が深い(3次・4次請け)、(2)会社の還元率が業界平均(60〜65%)を下回っている、(3)案件の単価設計に上限がある。Y.Mさんのケースは(1)と(3)の組み合わせだった。
Q. 「自分の単価が分からない」と言われたら違法ですか?
結論:違法ではないが、開示しない会社を選ぶ理由は基本的にない。SES会社が契約単価を社員に開示する法的義務はないため、「会社の規定で開示しない」という運用自体は違法ではない。ただし、自分の市場価値を判断する材料を従業員に与えない経営姿勢は、長期的なキャリア設計の上で大きな不利益になる。Heydayでは契約単価を稼働前に本人開示している。「単価を聞いても答えてもらえない」状態が続く場合、転職を検討する妥当な理由になる。
「資格は持っているが案件に入れない」と感じている方へ
Heydayでは、AWSを含むクラウドインフラ案件への参画実績がある。「資格は持っているが案件に入れない」という状況に心当たりがある場合、まず単価診断から始めることを勧める。Y.Mさんも、診断ツールで自分の市場単価を確認したことが最初の一歩だった。
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