PHPエンジニアの単価は、LaravelかWordPressかで月15〜20万円の差が出る。Heydayの2026Q1実案件データ(エンド直・1次のみ)では、PHP(Laravel)の平均成約単価は65万円で、業界相場58万円より7万円高い。一方、WordPressのみのエンジニアは45〜55万円台に集中している。「PHPは低単価」という通説は、この2種類を混在させた平均値から来ている。
「PHPエンジニアって、単価が低いと聞くけど本当ですか?」
答えは「半分本当で、半分嘘」だ。LaravelにAWSとAPI設計を組み合わせると月65〜80万円は現実的で、放置すれば「PHPだから」という理由だけで毎月10〜20万円を失い続けることになる。
Heydayでは創業以来、PHP案件を継続的に扱ってきた。この記事では、その現場データをもとに2026年現在のPHPエンジニアの単価実態と、スキル構成による差分を整理する。
PHPの需要構造:4つの用途
PHP案件は大きく4つの領域に分かれる。単価の傾向が用途によって大きく異なる。
1. Laravel(最高単価・モダン開発)
LaravelはPHPの中で最もモダンな設計のフレームワークで、2024〜2026年においてもPHPバックエンド新規開発の主流だ。RESTful APIの構築・認証・ORM(Eloquent)・キューシステムなど、現代的なWebアプリ開発に必要な機能が揃っている。
需要の特徴:
- ECサービス・HR・SaaSのバックエンドAPIで安定した需要
- Vue.js / React / Next.jsとのAPIサーバーとして採用されるケースが多い
- テスト・CI/CD・DockerなどDevOps周りもできるエンジニアが求められる
- アーキテクチャ設計ができるエンジニアの不足
2. WordPress(中〜低単価・最大ボリューム)
WordPressはWebサイト全体の40%以上で使われており、案件数は最大だ。しかし単価は低め〜中程度が多い。
WordPressの中でも、コーポレートサイト制作・テーマカスタマイズは単価が低く、EC連携・会員管理・高度なカスタム開発は単価が上がる傾向がある。
3. Symfony / CakePHP(レガシー・中規模)
SymfonyはLaravelの設計にも影響を与えた本格的なフレームワークで、大規模・エンタープライズ系に使われることがある。CakePHPは2010年代に多く採用された日本向けフレームワークで、既存システムの保守案件が主となっている。
いずれも新規開発での採用は少ないが、既存システムの保守・移行案件として継続的な需要がある。
4. ECcube・Shopify(EC特化)
日本製のECプラットフォームECcubeはPHPで書かれており、カスタマイズ案件が継続的にある。Shopifyのカスタマイズ(テーマ・アプリ開発)はPHP的な知識よりLiquid templateとAPI連携が中心になるが、バックエンド連携でPHPが使われることも多い。
EC系案件は決済・在庫管理・物流との連携が必要で、専門性が単価を押し上げる。
PHPエンジニアの単価相場(経験年数・スキル別)
以下はエンド直または1次請け案件における実勢レンジだ。 多重下請け構造(3次・4次請け)では、これより15〜25%低くなるケースが多い。
| 経験年数・スキル | 正社員SES(月額) | フリーランス(月額) | 年収換算(SES正社員目安) | 市場での立ち位置 |
|---|---|---|---|---|
| 1〜3年(WordPress中心) | 30〜42万円 | 42〜55万円 | 360〜504万円 | サイト制作・テーマカスタマイズが中心 |
| 3〜5年(Laravel) | 42〜55万円 | 55〜68万円 | 504〜660万円 | APIサーバー開発・チーム開発ができる |
| 5年以上(Laravel/設計) | 52〜65万円 | 65〜80万円 | 624〜780万円 | アーキテクチャ設計・テックリード |
| 上流工程あり(設計・要件定義) | +8〜15万円 | +8〜15万円 | 単価に直接反映 | 設計フェーズから参加できる |
重要な前提: 同じ「PHP経験5年」でも、WordPress保守中心のエンジニアとLaravel + AWS + 基本設計経験のエンジニアでは月20〜30万円の差が出ることがある。フレームワークと工程が単価を決める。
フレームワーク・技術スタック別の単価差
PHPの単価を決める最大の変数が「どのフレームワーク・スタックを使っているか」だ。
| 技術スタック | 単価レンジ(経験3〜5年) | 市場トレンド | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Laravel + AWS + 設計 | 58〜75万円 | 拡大中 | PHP最高単価帯。API設計・インフラもできる |
| Laravel(実装中心) | 48〜62万円 | 拡大中 | 現在のPHP主流。チーム開発経験が評価 |
| Symfony(エンタープライズ) | 52〜68万円 | 横ばい | 大規模システムでの需要。希少性あり |
| CakePHP(保守) | 40〜55万円 | 縮小中 | 既存システムの保守・改修が中心 |
| WordPress(高度なカスタム) | 42〜58万円 | 横ばい | EC連携・会員管理など複雑なカスタマイズ |
| WordPress(テーマカスタマイズ) | 28〜40万円 | 横ばい | コーポレートサイト・LP制作が中心 |
| ECcube(カスタマイズ) | 42〜60万円 | 安定 | EC専門知識との組み合わせで単価上昇 |
LaravelとWordPressで月15〜20万円の差が出る理由
同じ「PHP5年経験」でも、WordPress中心のエンジニアとLaravel中心のエンジニアでは、市場から見た評価が全く異なる。
WordPressはノーコード・ローコードツールとの競合が激しく、技術的な差別化が難しい。一方、LaravelはAPI設計・認証・非同期処理・テストといった現代的なバックエンド開発の標準的なスキルセットが求められる。この差がそのまま単価に反映される。
もしWordPress中心で活動してきた場合、Laravelへの移行が単価アップの最短ルートになる。Laravelを使ったRESTful APIの構築・Eloquent ORMの活用・テスト実装(PHPUnit)のサンプルプロジェクトをGitHubに公開するだけで、面談評価が大きく変わる。
上流工程・クラウド経験による単価プレミアム
PHPの基本単価に上乗せされるスキルの効果を示す。
上流工程経験
| 上流工程の経験 | 月額への影響 | 備考 |
|---|---|---|
| テスト設計・PHPUnit | +2〜5万円 | テスタブルなコード設計の評価 |
| 詳細設計 | +3〜8万円 | データベース設計・API仕様書作成 |
| 基本設計 | +6〜12万円 | システム全体の構成設計力 |
| 要件定義 | +8〜15万円 | ビジネス要件の整理・クライアントとの折衝 |
| PM / テックリード | +10〜18万円 | チームの技術判断を担う |
クラウド・インフラ経験
| スキルの組み合わせ | 月額への影響 | 備考 |
|---|---|---|
| PHP + AWS(EC2/RDS/S3) | +5〜12万円 | Laravel + AWSの組み合わせは高評価 |
| PHP + Docker / Docker Compose | +3〜8万円 | コンテナ化環境での開発経験 |
| PHP + ECS / Fargate | +5〜12万円 | コンテナ本番運用の経験は希少 |
| PHP + Vue.js / React | +5〜10万円 | フロントも扱えるフルスタック的評価 |
私が経営するHeydayでの実例を挙げると、Laravel + AWS(EC2/RDS/S3)+ 基本設計経験の組み合わせを持つ経験5年のエンジニアは、同じ経験年数でWordPress保守中心のエンジニアより月18〜25万円高い単価で案件が決まることが多い。
フレームワークとクラウドの「掛け算」が単価を決める。
「PHPは単価が低い」という通説の真実
PHPが低単価というイメージがある理由を整理する。
通説が生まれた背景
1. WordPress案件のボリュームの大きさ
PHP案件全体の中でWordPressの割合が高く、WordPress案件は単価が低めになりやすい。これがPHP全体の印象を引き下げている。
2. 参入障壁の低さ
PHPは学習コストが低く、プログラミング初学者がまず触れることが多い言語だ。そのためエンジニアの供給が多く、供給過多による価格競争が起きやすい下位レイヤーが存在する。
3. レガシーシステムの多さ
PHP4・5時代に作られたシステムが保守案件として続いており、これらの案件単価は更新されにくい。
通説が当てはまらないケース
しかし、以下の条件が揃うとPHPエンジニアの単価は十分に高くなる。
- Laravelを使ったAPI開発ができる(月55〜68万円以上)
- AWS・Dockerとの組み合わせ経験がある(+5〜12万円)
- 設計フェーズから参画できる(+8〜15万円)
- フリーランスかつエンド直・1次請けの案件(+10〜20万円)
これらが組み合わさると、「PHPエンジニアで月80万円フリーランス」は珍しくない。重要なのは言語よりも「その言語で何ができるか」だ。
