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SOCは外注か内製か|中小企業の判断基準と人材の置き方【2026年】

小川将司
小川将司代表取締役

Heyday が 2026 年 3〜8 月に受信したセキュリティ案件 358 件の集計と、個人情報保護委員会・IPA・警察庁などの公表資料をもとに執筆

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この記事でわかること

  • 判断は社内、運用は外部。外に出すかどうかの前に、アラートが鳴ったとき誰が何を決めるかを決める
  • EDR や MDR を入れても、通知の窓口、隔離の承認、取引先や当局への連絡、経営への報告は社内に残る
  • MM 総研の調査では、対策の方針は外部委託中心が 39%、外部委託と内製の半々が 29%、内製中心が 33% と報じられている
  • 案件票に書かれた提示単価の上限は、中央値 75 万円、p75 90 万円(単価つき 166 件、Heyday の案件データベース、2026 年 3〜8 月受信、重複除去前)。SOC だけの分布ではなく、タグ全体の集計
  • 外部サービスと、社内の窓口、参画する要員を組み合わせるハイブリッド構成もある

この記事の対象: SOC運用を外注するか内製するかを検討している中小企業・中堅企業の経営者・情シス・セキュリティ担当者

SOC(セキュリティ運用センター)の外注と内製は、「どちらか一方に決める」ものではない。基本は「判断は社内、運用は外部」で、外に出す範囲を決める前に、社内に残る仕事を先に決めると整理しやすい。EDR や MDR を入れても、アラートを受ける窓口、隔離の承認、取引先や当局への連絡、経営への報告は社内に残る。この記事では、SOC が指す範囲、内製・全面外注・ハイブリッドの比較、費用の見方、人材面と案件票に見る提示単価を整理する。全体像は セキュリティ人材・体制の相談先 にある。

なお、この記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではない。個人データの取扱いの委託など、個人情報保護法に関わる点は専門家に確認してほしい。製品やサービスの優劣は評価しない。

結論:判断は社内、運用は外部。残る仕事を先に決める

外に出しやすい仕事と、社内に残る仕事を分けると、判断がしやすい。

  • 外に出しやすい:ログやアラートの監視、一次分析、手順が決まっている初動
  • 社内に残る:優先度と業務への影響の判断、取引先・当局・本人への連絡、経営への報告

外注するかどうかを決める前に、次の問いに答えられるようにする。アラートが鳴ったとき、誰がそれを受け、誰が何を決めるのか。夜間や休日はどうするのか。

公表データでも、外部委託は有力な選択肢として挙がっている。MM 総研の調査(2026 年 9 月 8 日発表)では、対策の方針は外部委託中心が 39%、外部委託と内製の半々が 29%、内製中心が 33% と報じられている(合計が 100% を超えるのは、丸めなどによる可能性がある)。(出典:MM総研『民間企業におけるサイバーセキュリティ対策の動向調査』。報道:ScanNetSecurity、2026 年 9 月 15 日)

同じ調査の 2025 年版では、外部に委託している業務のうち「戦略の意思決定」が 36% と最も多いと報じられた。判断まで外に出す企業があるということだ。ただし、事故のときに取引先や当局へ説明するのは自社であり、判断の材料と責任の所在は社内で持っておく必要がある。(出典:MM総研の 2025 年版調査。報道:ScanNetSecurity、2025 年 9 月 11 日)

また、警察庁の公表では、2026 年上半期のランサムウェアの被害報告は 123 件で、半期として過去最多とされる。うち中小企業は 79 件と報じられている。(出典:警察庁『令和8年上半期のサイバー空間の脅威情勢』、2026 年 9 月 10 日公表。警察庁の資料)

SOC が指す範囲(監視・分析・対応・改善)

「SOC」という言葉は、組織を指すことも、サービスを指すこともある。含まれる機能を 4 つに分けて考える。

段階何をするか例
監視ログやアラートを集め、見続ける夜間・休日を含む監視
分析アラートが本当の脅威かを切り分け、影響範囲を見立てる一次分析、優先度づけ
対応被害の拡大を止め、復旧を支える端末の隔離、アカウントの停止、連絡
改善検知の精度を上げ、再発を防ぐ検知ルールの調整、再発防止策、報告

MDR は、EDR などの端末側の検知を監視し、封じ込めの支援まで関わるサービスとして提供されることがある。ただし、範囲はサービスによって異なる。契約の前に、どこまでが含まれるかを確認する。

内製・全面外注・ハイブリッドの比較

3 つの構成を比べる。全面外注でも、判断は社内に残る。

観点内製全面外注ハイブリッド
夜間・休日の監視交代で入る人数が要るサービスに含められる外部サービスが担い、社内は窓口になる
判断社内社内(通知を受けて判断する)社内。参画する要員が補佐する
費用の構造人件費、製品、教育サービスの月額、製品サービスの月額、要員の費用
知見の残り方残りやすい残りにくい記録を残す運用にすれば残りやすい
向く企業専任を置ける規模の企業窓口は置けるが、運用の人手がない企業窓口はあるが、運用と改善の手が足りない企業

夜間・休日も監視するには、交代で入る人数が要る。中小企業が自前で用意するには負担が大きい。このため、監視の部分は外部サービスに出し、社内は判断と窓口に集中する構成が検討されやすい。

どの構成から始めるか

次の 4 点で見る。

  • 扱う情報と、止まったときの影響が大きいか。大きいほど、夜間・休日を含む監視の必要性が高い
  • 社内に、通知を受けて判断できる窓口を置けるか。置けないなら、窓口の役割から先に決める
  • 取引先や業界から、監視や報告の体制を求められているか
  • 自社の環境を知り、検知の調整や改善を担う人がいるか。いなければ、要員の参画で補う方法がある

先に窓口と判断の役割を決め、そのうえで監視を外に出すか、要員を足すかを選ぶ順番が失敗しにくい。

外注できる範囲・できない範囲と、EDR/MDR を入れても残る仕事

外に出しやすい範囲

  • ログやアラートの監視
  • 一次分析と、優先度の仮判定
  • 手順書に沿った初動(通知、あらかじめ決めた端末の隔離)
  • 定期のレポート

社内に残る範囲

  • 優先度と、業務への影響の判断(止めてよいか)
  • 取引先、顧客、当局、本人への連絡
  • 経営への報告と、予算の判断
  • 例外設定の承認

EDR/MDR を入れても残る仕事

EDR や MDR は、端末側の検知と対応を助ける。しかし、導入しただけでは運用は回らない。次の仕事が残る。

  • 通知の窓口:アラートを受ける人と、不在時の代理
  • 隔離の承認ルール:誰が承認するか。連絡がつかないとき、自動での隔離を許すか
  • 例外設定の管理:業務に必要な通信を止めないための調整
  • 定期のレビュー:検知の内容を見直し、設定を更新する
  • 報告の判断:個人データが関わるとき、報告が必要かの判断

個人情報保護委員会は 2026 年 10 月 7 日の注意喚起で、フィッシング耐性のある多要素認証、EDR による監視、アクセス権限の最小化、ログの保存・分析、侵害されたシステムの隔離などを対策例として示している。EDR だけでなく、権限やログの運用を含めて設計する必要がある。(出典:個人情報保護委員会「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について(注意喚起)」、2026 年 10 月 7 日)

米国 NIST の SP 800-61 Rev.3(2025 年 4 月)は、インシデント対応をサイバーセキュリティのリスク管理の一部として位置づけている。監視と対応を単発の作業にせず、改善まで含めた運用として設計するときの参考になる。(出典:NIST SP 800-61 Rev.3)

ログには個人データが含まれることがある。外部の事業者に取扱いを任せる場合は、個人データの取扱いの委託として、委託先の監督が求められる場合がある。管理項目は 委託先の情報漏えいは誰の責任か で扱う。

体制づくりの相談

セキュリティ体制の課題を相談する →

SOC・CSIRT・脆弱性診断・クラウドセキュリティの要員と体制づくりについて、Heyday がお話を伺います。

費用の見方:構成要素と、見積もりの取り方

EDR や MDR、監視サービスの費用について、出典のある相場は示さない。製品や契約によって差が大きいためだ。ここでは、費用の構成要素と、見積もりで確認する点を示す。

費用の項目見積もりで確認すること
ライセンス(製品)対象の端末・サーバーの範囲、期間
導入・設定初期の設定、既存環境への展開の範囲
監視サービスの料金監視する時間帯、対象のログの種類
社内の工数窓口、判断、報告にかかる時間
事故が起きたときの対応定額に含まれるか、別料金か

見積もりを比べるときは、条件をそろえる。

  1. 対象の範囲(端末、サーバー、クラウド、ログの種類)を同じにする
  2. 監視する時間帯を同じにする
  3. 通知の基準と連絡先を決める
  4. 一次対応の範囲(隔離まで含むか、調査は別か)をそろえる
  5. 事故対応の費用が定額に含まれるかを確認する
  6. 報告の頻度と形式をそろえる
  7. 契約期間と解約の条件を確認する

中小企業向けの価格の例としては、IPA が基準を定めた「サイバーセキュリティお助け隊サービス」がある。IPA の公表では、1 類には月額の上限が設けられ、ネットワーク監視は 1 万円以下、端末監視は 1 台 2,000 円以下とされている。これは基準に適合するサービスの上限であり、一般的な SOC や MDR の相場ではない。(出典:IPA『サイバーセキュリティお助け隊サービス』)

人材面:SOC の L1〜L3 と、案件票に見る提示単価

SOC の人材は、役割の深さで L1〜L3 に分けて語られることが多い。呼び方や範囲は組織によって異なる。

  • L1:アラートの一次受けと、切り分け
  • L2:詳細な分析と、対応の判断の補助
  • L3:高度な分析、検知の改善、インシデント対応の主導

外部の人に入ってもらう場合の月額の目安として、Heyday が受信した案件票の集計を示す。

項目値
案件票の掲載行数358 行
うち単価の上限が数値で読めた行166 件
単価の上限 p25(小さい順の 4 分の 1 の位置)65 万円/月
単価の上限 中央値75 万円/月
単価の上限 p75(同じく 4 分の 3 の位置)90 万円/月
単価の上限 最大200 万円/月

出典:Heyday の案件データベース(案件メール由来の掲載行)。2026 年 3〜8 月に受信、重複除去前。技術タグ「セキュリティ/SOC/CSIRT」は、必須スキルと案件名にセキュリティ関連のキーワードを含む行で、1 行が複数のタグに入ることがある。単価は案件票に書かれた上限(発注側から SES 会社への企業向けの契約単価)で、エンジニアへの支払額(人材向けの単価)とは別。商流の途中で金額が変わることがある。

この集計は「セキュリティ/SOC/CSIRT」のタグ全体であり、SOC だけの分布ではない。SOC 単独の集計は現時点で行っておらず、L1〜L3 別の単価も、信頼できる公表データが見つかっていない。この数字は Heyday の料金を示すものではない。エンジニア側から見た SOC の単価は SOCアナリストの単価と未経験からの入り方 にある。

ハイブリッド構成と、相談前のチェック

外部サービスと、参画する要員を組み合わせる

ハイブリッド構成は、役割を次のように分ける。

  • 外部サービス:夜間・休日を含む監視と、一次分析
  • 社内の窓口:通知の受け手、判断、連絡、経営への報告
  • 参画する要員:自社の環境を知る運用担当として、窓口の運用、検知ルールの調整の支援、事故後の実装を支える

SES(準委任)で要員が参画する形は、このうち窓口の運用や改善、事故後の実装で選択肢になる。要員への業務の指示は受託会社の責任者を通じて行い、発注側は直接指示しない。契約形態の違いは セキュリティ人材をSES・業務委託・派遣で入れる違いと費用 にまとめた。

相談前のチェック 8 項目

  1. 守る対象(システム、拠点、クラウド)
  2. 監視が必要な時間帯
  3. 通知を受ける人と、不在時の代理
  4. 隔離などの自動対応を許すか、承認者は誰か
  5. 一次対応の範囲(外部と社内の線引き)
  6. 個人データを外部に渡すか
  7. 取引先や業界から求められている要件
  8. 見直しの時期(契約期間、レビューの頻度)

事故が起きたときの体制は インシデント対応体制の作り方 で、ランサムウェアの入口対策は ランサムウェア対策 で扱っている。

よくある質問(FAQ)

Q. 中小企業に SOC は必要ですか?

SOC という組織を持つ必要があるかではなく、検知と初動の機能が必要かで考える。扱う情報と、止まったときの影響で決まる。専任を置けない場合は、監視を外部サービスに出し、社内は窓口と判断に集中する方法がある。

Q. MDR と SOC は何が違いますか?

SOC は監視・分析・対応・改善を行う機能や組織の総称で、対象のログが広い。MDR は、EDR などの端末側の検知を監視し、封じ込めの支援まで関わるサービスとして提供されることがある。ただし、呼び方と範囲はサービスによって異なるため、契約で含まれる範囲を確認する。

Q. 外注すると、社内に何が残りますか?

判断、連絡、報告、例外設定の承認、見直しが残る。外注しても、これらを担う人と手順は決めておく必要がある。

Q. 夜間対応はどう決めればよいですか?

検知から連絡までの時間、夜間に誰が判断するか、自動での隔離を許すか、業務への影響をどう扱うかを決める。連絡がつかない場合の代理も含めて、手順に書いておく。

Q. 常駐のエンジニアを置けば、外部の監視サービスは不要になりますか?

要員は、窓口の運用、検知の調整、事故後の実装を担える。しかし、夜間・休日を含む監視まで一人で担うのは難しい。外部サービスと組み合わせる構成が現実的だ。

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この記事の著者

小川将司
小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

Heyday が 2026 年 3〜8 月に受信したセキュリティ案件 358 件の集計と、個人情報保護委員会・IPA・警察庁などの公表資料をもとに執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、単価・商流の開示に取り組む。

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