「残業は少ない方です」という説明を信じて入場したら、月40時間超だった。
SESのエンジニアから聞く話の中で、これは特に多いパターンだ。Heydayで営業を担当している篠田が、残業が少ない案件を見分けるための実務的な方法を整理する。
結論を先に言う。「残業は少ないですか?」と直接聞いても意味がない。クライアントは悪意なく「少ない方です」と答えることが多いが、その基準が人によって違う。月20時間が「少ない」という現場もあれば、月10時間でも「たまに残業がある」と表現する現場もある。
残業量を正確に把握するには、間接的な質問と構造的な確認が必要だ。
なぜ「残業少ない」は信頼できないのか
面談でSESエンジニアに「残業の多さ」を確認するとき、直接質問が機能しない理由が3つある。
理由1:基準が人によって違う
「残業少ない=月20時間以内」と思っているエンジニアと、「月30時間なら少ない方」と感じているクライアント担当者では、同じ言葉の意味が噛み合わない。数字で確認しないと、感覚のすれ違いが生まれる。
理由2:案件のフェーズが変わる
面談時点が「運用フェーズ」で残業が少なくても、3ヶ月後に「大規模リリース」があれば一時的に増える。フェーズごとの変化を聞かないと、現状の一点だけを見て判断することになる。
理由3:「残業が多い」と言いにくい心理がある
クライアント担当者やSIerの営業担当者は、エンジニアを現場に入れたい側だ。残業が多いと正直に言えば断られる可能性がある。意図的な嘘ではなく、「大変な時期もありますが基本は少ない」という表現に着地しやすい。
残業が少ない案件の構造的な特徴
具体的な確認方法を説明する前に、「そもそも残業が少ない案件とは何か」を整理する。
残業が少なくなりやすい案件の構造:
スコープが固定されている 開発完了後の「運用・保守フェーズ」は、基本的に範囲が決まっている。新機能の追加要望がなければ、突発的な作業量の増加が起きにくい。
リリース日程がない、または頻度が低い リリース直前はどんな現場でも残業が増えやすい。「月1回のリリース」と「年2回のリリース」では、忙しさのペースが全く違う。
クライアント側の業務時間が決まっている 官公庁・教育機関・医療系など、クライアント企業自体が残業をしない文化の場合、SESエンジニアも「定時には終わる」ことが多い。クライアントが帰ったら作業が終わるという構造だ。
チームの人員構成が安定している 人員不足の現場は、一人あたりの負荷が高くなる。入場時に「今のチームは何人か、増員予定か」を確認することで、人員不足由来の残業リスクを把握できる。
面談前に確認すべき5つのポイント
ポイント1:「直近3ヶ月の平均残業時間を数字で教えてください」
「残業は少ないですか?」ではなく、数字で聞く。これが最も重要な確認だ。
「直近3ヶ月」を指定する理由は、繁忙期と閑散期を含む実態を知りたいからだ。「通常は少ないですが、先月は多かった」という回答が来ることもある。その場合は「先月が多かった理由」「今後同様のことが起きる可能性」まで聞く。
数字の目安:
- 月10時間未満:実質ほぼ残業なし
- 月10〜20時間:週1〜2時間程度
- 月20〜40時間:繁忙期を含むと「多い」と感じるエンジニアもいる水準
- 月40時間超:かなり多い部類
自分の基準を明確にしたうえで、数字を確認することが重要だ。
ポイント2:「このプロジェクトは現在どのフェーズですか?今後フェーズはどう変わりますか?」
残業量はフェーズで大きく変わる。
- 要件定義・設計フェーズ:比較的落ち着いていることが多い
- 開発フェーズ中盤:個人差と案件差が大きい
- リリース直前(結合テスト・UAT):どんな現場でも忙しくなりやすい
- 運用・保守フェーズ:インシデントがなければ残業が少ない傾向
「今は開発フェーズで、4ヶ月後にリリースを控えている」という状況なら、入場から2〜3ヶ月後に繁忙期が来る可能性がある。事前に知っていれば心構えができる。
ポイント3:「チームの人員構成と、今後の増員予定を教えてください」
人員不足の現場は、一人あたりの作業量が多い。「3人でやっていた仕事を2人でやっている」状態が長期化していると、残業は構造的に発生する。
確認内容:
- 現在のチーム人数(エンジニア・PM・テスター等の役割別)
- 欠員はあるか
- 今後の増員予定
「今は欠員補充のための採用中で、あなたが入場後すぐに増員予定」という状況なら、入場初期は負荷が高いかもしれない。
ポイント4:「入場後に残業が増えた場合の対応フロー(上限・申請など)はどうなっていますか?」
残業の「有無」だけでなく「管理の仕方」を確認する。
- 残業は事前申請制か・事後申告制か
- 月の残業上限は設定されているか
- 36協定の特別条項(月80〜100時間超の残業が起きうる契約)になっていないか
残業管理がルーズな現場は、「残業の文化」が染み付いている場合がある。「みんなやっているから」で残業が増えるケースは、明確な上限設定がないことが多い。
ポイント5:「前任者はどんな理由で案件終了になりましたか?」(可能であれば)
前任者が案件を離脱した理由を聞くことで、現場の実態が見えることがある。「労働条件が合わずに辞めた」という背景があれば、その中に残業問題が含まれているかもしれない。
ただしこの質問は、関係が良好な担当営業に対してのみ有効だ。初回面談でクライアントに直接聞くものではなく、間に入っているSES企業の担当営業に聞く質問だ。