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判断基準

SES の闇を業界6年の経営者が
名指しする — 業界の内側から見える悪習5つ

小川将司
小川将司代表取締役

IT業界12年・SES事業6年の現役経営者が業界の内側から悪習を名指しする

この記事でわかること

  • 現役SES経営者が「業界内で共有されている5つの悪習」を名指しで解剖
  • 各悪習がなぜ経営者側から見て合理的に見えてしまうのか(構造の再現性)
  • 悪習を避ける企業を選ぶ面接質問リスト
  • Heyday自身が各悪習に対してどう対処しているか

この記事の対象: 「SES 闇」「SES やばい」で検索し、業界の実態を知りたい・企業選びで失敗したくないエンジニア

この記事にはHeydayの独自データが含まれています

「SES 闇」と検索したあなたへ

「SES 闇」「SES やばい」で検索しているなら、業界への不信感か、入社前の企業選びで失敗したくないという防衛意識が動機のはずだ。

結論から言う。業界には確かに「闇」と呼ぶしかない悪習がある。それも体験談レベルではなく、経営者コミュニティでは暗黙に共有されている構造的な5パターンだ。

この記事は、現役SES経営者である私が、自社で採用しない経営判断として5つの悪習を名指しで開示する自白型の記事だ。匿名の個人ブログでも、転職エージェントの自社誘導記事でもない。自社を業界の反例として提示しながら、内側の悪習を言語化する。

関連: SES 地獄は本当か — 現役SES経営者が80案件データで解剖する2026年の真実


悪習1: スキルシート偽装の組織的黙認

何が起きているか

SES営業が案件を取るため、所属エンジニアの実務経験を水増ししたスキルシート(経歴書)をクライアントに提出する。「AWS業務経験1年」を「3年」にする、「保守のみ」を「設計〜実装」にする、「Pythonかじった程度」を「主要業務言語」にする。

この偽装は営業個人の暴走ではなく、営業部門全体で「売上目標達成のため黙認される」組織慣習として発生する。経営者が「数字のために見て見ぬふり」を選択した結果だ。

なぜ経営者側には合理的に見えるのか

短期的な視点では、偽装スキルシートのほうが案件を取りやすい。クライアント側も「即戦力」を求めるため、実態より盛った経歴のほうが通りやすい。営業も評価されやすい。経営者から見れば売上が上がる。

損をするのは現場に入ったエンジニア本人と、偽装を見抜けなかったクライアントだ。エンジニアは「できない仕事」を求められて疲弊し、クライアントは期待値を裏切られる。

どう見抜くか

面接でのNGサイン:

  • 「スキルシートは営業と相談しながら作ります」と言われる
  • 「未経験でもスキルシートを盛って提案する」と営業が説明する
  • 転職エージェント時代の経歴改竄を「業界慣習」と説明される

本来は、エンジニア本人が記載した内容をそのまま提出する運用が健全だ。営業が「調整」する必要があると説明する企業は、偽装文化がある可能性が高い。

Heydayではどう対処しているか

スキルシートはエンジニア本人が記載し、営業は文言の整理(誤字・表現のわかりやすさ)のみを行う。経験年数・使用技術・業務範囲の事実を変えることはない。結果として「盛ったシートより案件が取りにくい」瞬間は発生するが、中長期では本人のスキルに合う案件に継続的にアサインできるため、離脱率が下がる。


悪習2: 多重下請けでの単価圧縮(4次請け以下の常態化)

何が起きているか

案件をエンドクライアント→元請け→1次請け→2次請け→3次請け→自社、という構造で受注する。エンジニアが最下層の4次請けの位置で働く場合、エンドクライアントが支払っている単価のうち、到達する比率は50〜60%まで下がる。

例: エンドクライアントが月額120万円払っている現場で、4次請けにいるエンジニアの契約単価が70万円、月給38万円(還元率約54%)というケースは実在する。

なぜ経営者側には合理的に見えるのか

商流の深い案件は、元請けからすれば「自社で対応しきれない余剰を流す先」であり、継続的に発注される。4次請けで受注する中小SES企業から見れば「営業コストが低く、案件が安定して降ってくる」構造だ。短期の案件獲得と営業負担軽減の両面でメリットがある。

損をするのは、エンジニア本人(単価の目減り)と、中長期での自社ブランド(「4次請け専業」のレッテルが定着)だ。

どう見抜くか

面接で必ず聞くべき質問: 「この案件のエンドクライアントは誰ですか? 間に何社入っていますか?」

健全な企業は即答する。「言えない」「契約上の守秘義務」と曖昧に返す企業は、商流の深さを開示したくない可能性が高い。また、案件紹介時に「エンドクライアントの業界」しか示されない場合も要警戒だ。

Heydayではどう対処しているか

受注段階で商流3段以下を基準にしている。4段以上の案件は「短期的に取れても継続しない」経営判断で受注を絞る。結果として取扱案件数は制限されるが、エンジニアの還元率を業界水準より高い帯に保てる。

関連: SES商流の深さを構造的に理解する


悪習3: 待機給の実質カットと案件強制アサイン

何が起きているか

契約書上は「待機期間中は基本給の80%保証」と書かれているが、実運用では有給消化を強制されたり、「どうしても案件に入ってほしい」という圧力で希望しない案件に強制アサインされる。

結果として、エンジニアは「案件を断れない」状況に追い込まれる。希望しないスキル・業界・商流の現場でも受けるしかなくなる。

なぜ経営者側には合理的に見えるのか

待機給は人件費の純粋な流出だ。1ヶ月待機すれば、固定費として30〜40万円が出ていく。営業は「案件のマッチ度より稼働率」を優先するようになる。経営者も「遊ばせるより働かせる」判断をしやすい。

損をするのは、自分のキャリアと合わない案件で消耗するエンジニア本人だ。

どう見抜くか

面接質問: 「待機期間中の給与は基本給の何%保証されますか? 過去1年で基本給80%以上を実際に支給した実績はありますか?」

「制度上は80%ですが、実際には案件に入ってもらう前提です」と返す企業は、実運用で保証されない可能性が高い。また「有給消化で吸収する」という説明があれば、実質カットだ。

Heydayではどう対処しているか

基本給80%以上を契約書に明記し、有給消化による代替は行わない。案件選択権はエンジニア側にあり、待機中に複数案件を提示して選んでもらう。結果として待機コストは発生するが、エンジニアの離脱を抑えることで中長期では採算が合う。


悪習4: 案件ガチャの恣意化(営業個人による独占アサイン)

何が起きているか

案件のアサインが「営業個人の裁量」で決まり、エンジニアには選択肢が提示されない。「この案件に行ってください」と1件だけ提示され、断ると「次はしばらく紹介しない」という無言の圧力がかかる。

結果として、エンジニアは自分のキャリアと合わない案件でも受けざるを得ない。「案件ガチャ」と揶揄される構造そのものだ。

なぜ経営者側には合理的に見えるのか

案件アサインの意思決定を営業個人に委ねると、営業の裁量と責任が明確になる。経営者は個別の案件判断に関与しなくて済む。短期的には組織運営が効率化する。

損をするのは、営業個人の主観で案件を押し付けられるエンジニアと、長期的な定着率(アサインへの不満で離脱する)だ。

どう見抜くか

面接質問: 「案件のアサインは複数提示から選ぶ形ですか? 辞退した場合のペナルティはありますか?」

「営業が最適な案件を提案します」という回答は、選択肢が1つの可能性が高い。「複数提示→本人選択→辞退自由」と明確に返せる企業は健全だ。

Heydayではどう対処しているか

原則として3案件以上を同時提示し、エンジニア本人が選ぶ運用を標準化している。辞退時のペナルティはなく、次の案件紹介までの期間も短縮する努力をしている。営業個人の裁量は「案件発掘・交渉」に限定し、アサイン権はエンジニア側に残す。


悪習5: マージン率の非開示と「見せかけの高還元」

何が起きているか

自社がクライアントから受け取る金額(契約単価)と、エンジニアに支払う金額(月給)の差(マージン率)を開示しない。エンジニアは自分の働きがいくらで売られているか知らないまま働く。

さらに悪質なパターンとして、一部企業は「還元率80%」を謳うが、分母の計算に社会保険料会社負担や福利厚生費を含めていない「見せかけの高還元」を公表する。

なぜ経営者側には合理的に見えるのか

マージン率の非開示は情報の非対称性を維持し、交渉力を経営者側に残す効果がある。エンジニアが市場単価を知らない状態なら、低い月給でも「こんなものか」と受け入れられる。

「見せかけの高還元」は、採用競争での差別化を目的に数字を盛る。分母の計算方法を説明しなければ、表面の数字だけが独り歩きする。

どう見抜くか

面接質問: 「御社のマージン率はおおよそ何%ですか? その計算には社会保険料の会社負担分も含まれますか? 含まれる場合、エンジニアの手元に届く比率は何%程度になりますか?」

「具体数値は非公開」と返す企業でも、業界水準との比較は説明できるかを確認する。「還元率80%」を即答する企業は、分母の計算根拠を追加で確認する。

Heydayではどう対処しているか

マージン率の具体数値は非公開だが、「業界水準より低い」ことは論拠付きで説明する。還元率の分母計算も、社会保険料の会社負担分を含めた上での実質還元率を提示する。数字の透明性ではなく、構造の透明性を優先する方針だ。

関連: マージン開示の3段階レベル / SES還元率の相場は?IT業界12年・SES事業6年の経営者が実態を全公開


5悪習を避ける企業選びのチェックリスト

上記5つの悪習のどれが該当するかで、企業の健全性は数値化できる。

悪習面接質問NGサイン
スキルシート偽装「スキルシートはエンジニア本人が記載しますか?」「営業と相談しながら作る」
多重下請け「この案件のエンドクライアントは誰ですか?間に何社入っていますか?」「言えない」「守秘義務」
待機給実質カット「過去1年で基本給80%保証を実際に支給した実績は?」「案件に入ってもらう前提」
案件ガチャ「アサインは複数提示から選ぶ形ですか?」「営業が最適案件を提案」
マージン非開示「マージン率の計算には社保会社負担分も含まれますか?」「非公開」のみで業界水準比較すらできない

5つの質問全てに明確な回答が返せる企業は健全だ。2つ以上に曖昧な回答が返る企業は、複数の悪習が該当している可能性が高い。


「闇」は業界ではなく企業単位に存在する

「SES業界は闇だ」という一般化は、正確には「業界内の一部企業に悪習が集中している」が正しい。同じSESという契約形態で、5つの悪習のどれにも手を染めていない企業は実在する。Heydayもその1社であるように努めている。

エンジニアが取るべき行動は、「業界を避ける」ではなく「悪習のある企業を避けて、クリーンな企業を選ぶ」だ。そのために必要なのは、表面の給与条件ではなく、5つの悪習への対応を面接で確認することだ。


よくある質問(FAQ)

Q. 5つの悪習すべてに該当するSES企業はどれくらいありますか?

具体的な割合はデータとして出ていないが、業界内の経営者の感覚では「中堅SES企業の3〜4割は2〜3つの悪習に該当する」と言われる。5つすべてに該当する企業は少数派で、どちらかと言えば数個の悪習に部分的に該当する企業が多数派だ。重要なのは、個別企業単位で5つの質問に回答できるかを確認することだ。

Q. 大手SES企業は闇が少ないですか?

企業規模と闇の有無は直接的な相関がない。大手でも商流4段の案件を多く扱う企業はあり、中小でも直請け中心で運営している企業はある。規模で判断せず、面接での5つの質問への回答で判断するほうが正確だ。

Q. 転職エージェント経由でも闇を見抜けますか?

可能だが、エージェント自身も紹介先企業から報酬を受ける立場のため、悪習のある企業を推薦するインセンティブがゼロではない。エージェントの情報を鵜呑みにせず、面接で直接質問して確認することが必須だ。エージェントが「この企業は安心」とだけ言う場合、5つの質問を投げて返答を自分で評価する。

Q. 入社後に闇が判明した場合、どうすればいいですか?

地獄記事の脱出ステップと同じアプローチが有効だ。在職中に次の環境を確定させ、並行で退職を進める。「辞めてから探す」のではなく「次が決まってから動く」のが経済的・精神的な最適解だ。

関連: SES 地獄は本当か — 現役SES経営者が80案件データで解剖する2026年の真実

Q. Heydayは本当に5つの悪習に該当しないのですか?

該当しない運用を制度化している。スキルシートはエンジニア本人が記載、商流3段以下が原則、待機給は基本給80%以上を契約書に明記、案件は3件以上提示して本人選択、マージン率は数値非公開だが業界水準より低いことを論拠付きで説明。ただし、これは「努力している」であり、完璧ではない。不都合なケースがあれば指摘してほしいというスタンスを取っている。


おわりに

「SES 闇」は匿名の怪談ではなく、特定の経営判断の集積だ。5つの悪習のうち何個が該当するかで、企業の健全性は判定できる。

エンジニアが取るべきスタンスは明確だ。

  1. 業界ではなく企業単位で判断する
  2. 5つの質問を面接で使う
  3. 回答が曖昧な企業は候補から外す
  4. 同じSESでもクリーンな企業は存在するので、選ぶ

この記事の5悪習と、地獄記事の3条件を組み合わせれば、外から観測可能な企業の健全性を判定する精度が上がる。


まず自分の市場単価を知る

企業選びの前に、自分のスキルが市場でどう評価されているかを把握しておくと、面接での交渉力が変わる。

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まとめ

『SES 闇』は匿名の怪談ではなく、特定の経営判断の集積だ。5つの悪習のうち何個が該当するかで企業の健全性は判定できる。エンジニアは『闇がある業界だから避ける』のではなく、『闇がある企業を避けてクリーンな企業を選ぶ』という視点で行動するのが経済的合理性に適う。

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小川将司

この記事の著者

小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

IT業界12年・SES事業6年の現役経営者が業界の内側から悪習を名指しする

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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