「SES 闇」と検索したあなたへ
「SES 闇」「SES やばい」で検索しているなら、業界への不信感か、入社前の企業選びで失敗したくないという防衛意識が動機のはずだ。
結論から言う。業界には確かに「闇」と呼ぶしかない悪習がある。それも体験談レベルではなく、経営者コミュニティでは暗黙に共有されている構造的な5パターンだ。
この記事は、現役SES経営者である私が、自社で採用しない経営判断として5つの悪習を名指しで開示する自白型の記事だ。匿名の個人ブログでも、転職エージェントの自社誘導記事でもない。自社を業界の反例として提示しながら、内側の悪習を言語化する。
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悪習1: スキルシート偽装の組織的黙認
何が起きているか
SES営業が案件を取るため、所属エンジニアの実務経験を水増ししたスキルシート(経歴書)をクライアントに提出する。「AWS業務経験1年」を「3年」にする、「保守のみ」を「設計〜実装」にする、「Pythonかじった程度」を「主要業務言語」にする。
この偽装は営業個人の暴走ではなく、営業部門全体で「売上目標達成のため黙認される」組織慣習として発生する。経営者が「数字のために見て見ぬふり」を選択した結果だ。
なぜ経営者側には合理的に見えるのか
短期的な視点では、偽装スキルシートのほうが案件を取りやすい。クライアント側も「即戦力」を求めるため、実態より盛った経歴のほうが通りやすい。営業も評価されやすい。経営者から見れば売上が上がる。
損をするのは現場に入ったエンジニア本人と、偽装を見抜けなかったクライアントだ。エンジニアは「できない仕事」を求められて疲弊し、クライアントは期待値を裏切られる。
どう見抜くか
面接でのNGサイン:
- 「スキルシートは営業と相談しながら作ります」と言われる
- 「未経験でもスキルシートを盛って提案する」と営業が説明する
- 転職エージェント時代の経歴改竄を「業界慣習」と説明される
本来は、エンジニア本人が記載した内容をそのまま提出する運用が健全だ。営業が「調整」する必要があると説明する企業は、偽装文化がある可能性が高い。
Heydayではどう対処しているか
スキルシートはエンジニア本人が記載し、営業は文言の整理(誤字・表現のわかりやすさ)のみを行う。経験年数・使用技術・業務範囲の事実を変えることはない。結果として「盛ったシートより案件が取りにくい」瞬間は発生するが、中長期では本人のスキルに合う案件に継続的にアサインできるため、離脱率が下がる。
悪習2: 多重下請けでの単価圧縮(4次請け以下の常態化)
何が起きているか
案件をエンドクライアント→元請け→1次請け→2次請け→3次請け→自社、という構造で受注する。エンジニアが最下層の4次請けの位置で働く場合、エンドクライアントが支払っている単価のうち、到達する比率は50〜60%まで下がる。
例: エンドクライアントが月額120万円払っている現場で、4次請けにいるエンジニアの契約単価が70万円、月給38万円(還元率約54%)というケースは実在する。
なぜ経営者側には合理的に見えるのか
商流の深い案件は、元請けからすれば「自社で対応しきれない余剰を流す先」であり、継続的に発注される。4次請けで受注する中小SES企業から見れば「営業コストが低く、案件が安定して降ってくる」構造だ。短期の案件獲得と営業負担軽減の両面でメリットがある。
損をするのは、エンジニア本人(単価の目減り)と、中長期での自社ブランド(「4次請け専業」のレッテルが定着)だ。
どう見抜くか
面接で必ず聞くべき質問: 「この案件のエンドクライアントは誰ですか? 間に何社入っていますか?」
健全な企業は即答する。「言えない」「契約上の守秘義務」と曖昧に返す企業は、商流の深さを開示したくない可能性が高い。また、案件紹介時に「エンドクライアントの業界」しか示されない場合も要警戒だ。
Heydayではどう対処しているか
受注段階で商流3段以下を基準にしている。4段以上の案件は「短期的に取れても継続しない」経営判断で受注を絞る。結果として取扱案件数は制限されるが、エンジニアの還元率を業界水準より高い帯に保てる。
悪習3: 待機給の実質カットと案件強制アサイン
何が起きているか
契約書上は「待機期間中は基本給の80%保証」と書かれているが、実運用では有給消化を強制されたり、「どうしても案件に入ってほしい」という圧力で希望しない案件に強制アサインされる。
結果として、エンジニアは「案件を断れない」状況に追い込まれる。希望しないスキル・業界・商流の現場でも受けるしかなくなる。
なぜ経営者側には合理的に見えるのか
待機給は人件費の純粋な流出だ。1ヶ月待機すれば、固定費として30〜40万円が出ていく。営業は「案件のマッチ度より稼働率」を優先するようになる。経営者も「遊ばせるより働かせる」判断をしやすい。
損をするのは、自分のキャリアと合わない案件で消耗するエンジニア本人だ。
どう見抜くか
面接質問: 「待機期間中の給与は基本給の何%保証されますか? 過去1年で基本給80%以上を実際に支給した実績はありますか?」
「制度上は80%ですが、実際には案件に入ってもらう前提です」と返す企業は、実運用で保証されない可能性が高い。また「有給消化で吸収する」という説明があれば、実質カットだ。
Heydayではどう対処しているか
基本給80%以上を契約書に明記し、有給消化による代替は行わない。案件選択権はエンジニア側にあり、待機中に複数案件を提示して選んでもらう。結果として待機コストは発生するが、エンジニアの離脱を抑えることで中長期では採算が合う。
悪習4: 案件ガチャの恣意化(営業個人による独占アサイン)
何が起きているか
案件のアサインが「営業個人の裁量」で決まり、エンジニアには選択肢が提示されない。「この案件に行ってください」と1件だけ提示され、断ると「次はしばらく紹介しない」という無言の圧力がかかる。
結果として、エンジニアは自分のキャリアと合わない案件でも受けざるを得ない。「案件ガチャ」と揶揄される構造そのものだ。
なぜ経営者側には合理的に見えるのか
案件アサインの意思決定を営業個人に委ねると、営業の裁量と責任が明確になる。経営者は個別の案件判断に関与しなくて済む。短期的には組織運営が効率化する。
損をするのは、営業個人の主観で案件を押し付けられるエンジニアと、長期的な定着率(アサインへの不満で離脱する)だ。
どう見抜くか
面接質問: 「案件のアサインは複数提示から選ぶ形ですか? 辞退した場合のペナルティはありますか?」
「営業が最適な案件を提案します」という回答は、選択肢が1つの可能性が高い。「複数提示→本人選択→辞退自由」と明確に返せる企業は健全だ。
Heydayではどう対処しているか
原則として3案件以上を同時提示し、エンジニア本人が選ぶ運用を標準化している。辞退時のペナルティはなく、次の案件紹介までの期間も短縮する努力をしている。営業個人の裁量は「案件発掘・交渉」に限定し、アサイン権はエンジニア側に残す。
