SES企業を経営していると、退職代行から連絡が来る日がある。
「弁護士法人〇〇です。本日付で貴社所属の△△氏が退職する旨をお伝えします」——電話やメールで突然来る。本人とは一切連絡が取れない。貸与PCもセキュリティカードもまだ手元にあって、常駐先には今日も出社する予定になっていた。
この記事は、SES企業の代表として退職代行を「受けた側」から書く一次情報だ。弁護士サイトや退職代行業者が書く「退職代行の使い方」ではなく、経営者として何を考え、何に困り、何を諦めたかを正直に書く。
退職代行を検討しているSESエンジニアにとって、「会社側がどう受け止めるか」「損害賠償は本当に来るのか」「貸与品はどうすればいいのか」——この3点が一番気になるはずだ。すべて答える。
書いている人: 小川将司(Heyday株式会社代表 / SES経営7年目 / 累計エンジニア在籍100名超)。
SES退職代行の現状──件数・タイミング・業界傾向
退職代行サービスは2018年頃から急速に普及した。SES業界も例外ではなく、2024年以降は「退職代行経由の退職」が珍しくなくなっている。
Heydayでも年に数件、退職代行経由の退職連絡を受ける。100名規模の在籍人数の中で、年に2〜4件のペース。割合としては全退職者の1〜2割程度だ。これは業界の他社経営者と話していても同水準で、SES業界全体で「退職の1割前後は退職代行経由」という肌感が共有されている。
退職代行が増える3つのタイミング
経営者として観察していると、退職代行が来やすいタイミングがある。
- 常駐現場でのストレスが限界に達した直後: 現場でハラスメント・過剰残業・スキル乖離があり、本人が「もう一日も行きたくない」状態になっている
- SES会社側との関係が冷えきっている: 担当営業との信頼関係が崩れていて、直接退職を切り出すのが心理的に困難
- 次の転職先が決まり、引き止めを警戒している: 引き止めや単価アップ提示で揺れたくない、清算的に去りたい
このうち最も多いのは1と2の組み合わせだ。「現場が限界 + 会社の担当者にも言いづらい」という二重の状態で、退職代行という選択肢が現実的になる。
SES特有の「言いづらさ」が退職代行需要を生む
SESには、自社開発企業にはない特殊な「言いづらさ」がある。
- 退職を切り出す相手(自社の営業)と、不満の対象(常駐先)が違う。話を整理して伝えるエネルギーが要る
- 営業担当が「退職を引き止めるインセンティブ」を持っているケースがある(売上に直結するため)
- 常駐現場での契約途中離脱は、自社にとって損失が大きい。空気で「途中で抜けないでほしい」と感じさせる会社もある
- 自社のオフィスにほぼ行かないため、対面で話す機会がない。Slack・メール・Zoomで重い話を切り出すのが心理的に重い
これらが積み重なると、「直接言うコスト」が「退職代行費用(2〜5万円)」を上回る。退職代行を使う合理性が成立してしまう。
SES特有の退職代行トラブル4選──経営者として実際に起きたこと
退職代行が来たときに、経営者として実務上困ることが4つある。順に書く。
トラブル1: 貸与PC・セキュリティカードが回収できない
SESエンジニアには会社支給のPC・スマートフォン・セキュリティカード・社員証・USBトークンなどが渡っていることが多い。退職代行経由で連絡が来ると、本人と直接連絡が取れないため、これらの返却フローが止まる。
Heydayでも実際にあったケース: 退職代行から連絡が来た翌日、貸与PCが本人の自宅にあるまま、会社に着信ゼロ。退職代行経由で「返却用着払い伝票を送ります」とメッセージしてもらい、3週間後にようやく返ってきた。
本人にしてみれば、退職代行を使った時点で「会社と関わりたくない」状態にある。返却の催促も心理的に重い。退職代行業者によっては返却の連絡仲介もしてくれるが、業者によって質はバラバラで、最終的に着払い返送がスムーズになるかは運の要素もある。
エンジニア側の対策:
- 退職代行に依頼する時点で、貸与品リストを自分で書き出しておく
- 退職代行業者に「貸与品の返却仲介をしてくれるか」を契約前に確認する
- 着払い返送が原則。送料を会社に請求する形でOK
トラブル2: 常駐先への通知タイミング
SESでは退職と「常駐先からの離脱」が同時に発生する。本人が退職代行で会社に通知するとき、常駐先への通知をどうするかが問題になる。
経営者として実務的に困るのは、本人が常駐先に何も言わずに辞めるケースだ。常駐先からすると「昨日まで普通に働いていたエンジニアが、突然出社せず連絡も取れない」という状態になる。常駐先のPM・PLは、自社(SES企業)に問い合わせる。自社は「退職代行から連絡が来たため本日付で退職した」としか答えられない。
これが繰り返されると、常駐先との信頼関係が傷つく。「あの会社のエンジニアは突然辞める」というレピュテーションが付くと、次の案件取得に影響する。
ただし、ここで明確にしたいのは——この問題は会社の責任であって、エンジニアの責任ではないということだ。常駐先との関係維持はSES会社の仕事だ。エンジニアが「会社のために常駐先と直接話す義務」は法的にも契約上もない。
エンジニア側の対策:
- 退職代行で会社に通知した時点で、常駐先への対応は会社の責任になる
- ただし、常駐先のSlackやメールアドレスを持っている場合、退職代行経由で「明日以降出社しない」旨の事実通知だけ出してもらうと、常駐先側のパニックは少し減る
- 業務上の引き継ぎ書類は可能な範囲で残す(精神的に書ける状態であれば)
トラブル3: 有給消化の取り扱い
退職代行を使う場合、退職日までの有給消化を希望するケースが多い。「明日から最終出社日まで全部有給で消化したい」というパターンだ。
労働基準法上、有給休暇は「労働者が指定した日に取得できる権利」がある。会社は時季変更権を持つが、退職前で他に取れる時期がない場合は事実上拒否できない。法的には有給消化は通る。
しかし実務上、SESでは有給消化に関する微妙な問題がある。
- 案件契約上の稼働日が残っている: 月末締めの契約の場合、稼働日数不足で常駐先からの請求額が減る。会社の損失になる
- 月給制の場合の精算: 稼働日数が大幅に減ると、給与計算が複雑になる
- 引き継ぎ期間の確保: 退職代行を使うと引き継ぎ期間がゼロになる
これらは会社側の事情であり、エンジニアが我慢する理由にはならない。ただし、現実問題として「全有給消化+即日退職」を強行すると、最終月の給与計算で揉める可能性は出る。
エンジニア側の対策:
- 有給残日数を退職代行依頼前に確認する(給与明細・人事システムで確認可能)
- 退職代行業者に「全有給消化希望」と明示的に伝える
- 最終給与の振込まで、振込口座は閉じない
トラブル4: 損害賠償の脅し
これが最も多いトラブルだ。退職代行から連絡が来た会社の中には、本人や退職代行業者に対して「損害賠償を請求する」と圧力をかけるケースがある。
「契約途中離脱で常駐先との契約が切れた、その損害を支払え」「貸与PCを即日返却しないなら遅延損害金を請求する」「研修費用を返済してもらう」——こういった内容だ。
結論から書く: これらの損害賠償請求は、ほぼ全て法的根拠が弱い。次のセクションで詳しく書く。
「損害賠償される?」の実態──法律と経営者の本音
退職代行を検討しているエンジニアの最大の不安が「損害賠償」だ。法律面と経営者の本音、両方から正確に書く。
法律上の前提: 期間の定めのない雇用契約は2週間で退職可能
民法627条1項により、期間の定めのない雇用契約(正社員・無期契約)は、退職の意思表示から2週間経過すれば契約は終了する。会社の承諾は不要だ。
つまり、退職代行が会社に通知した日から2週間後には、法的に雇用関係は終了している。それ以前に「退職を認めない」と会社が言っても、法的効力はない。
損害賠償が認められる条件は極めて狭い
退職を理由に会社が労働者に損害賠償を請求するには、以下のような厳しい条件が必要だ。
- 労働者に故意または重大な過失があった
- 損害が労働者の退職と直接的因果関係を持つ
- 損害額が客観的に立証可能
判例上、「契約途中で辞めたから損害賠償」という単純な構図はほぼ認められない。会社は「労働者を雇い続ける義務」も「契約を埋め合わせる責任」も自社で負っている。エンジニアが辞めたことで案件が止まった場合、それは会社のリスク管理の問題であって、エンジニアの賠償責任ではない。
研修費用の返還についても、入社前に明示的な合意(一定期間以内の退職時は研修費用返済の契約)がある場合を除き、原則として請求できない。一般的なOJT・業務上必要な研修は、業務命令で行わせたものであり、返還義務は発生しない。
経営者として「損害賠償を請求したくなる瞬間」
ここからは経営者の本音だ。退職代行が来たとき、経営者として「損害賠償を請求したい」と一瞬思うことがある。
具体的には:
- 案件途中での突然離脱で、常駐先からの信頼が大きく傷ついたとき
- 大型プロジェクトのキー人物が急に抜けて、常駐先から契約解除を切り出されそうなとき
- 引き継ぎゼロで業務が止まり、他のメンバーに大きな負担がかかったとき
- 貸与PC・セキュリティカードの返却が1ヶ月以上遅れ、情報漏洩リスクが懸念されるとき
人間として「ちょっと待ってくれ」と言いたくなる場面はある。
「実際はほぼ請求しない」3つの理由
しかし、Heydayでも他のSES経営者の話を聞いても、実際に損害賠償請求を実行するケースはほぼない。理由は3つある。
理由1: 法的に勝てる見込みが薄い
前述の通り、判例は労働者の退職の自由を強く保護している。弁護士に相談しても「勝てる見込みは低い、訴訟費用の方が高くつく」と言われる。経営者として合理的に考えれば、損害賠償請求はビジネス上の損失でしかない。
理由2: 業界レピュテーションが悪化する
「あの会社は退職者に損害賠償を請求した」という情報は、エンジニアコミュニティで急速に広がる。X(旧Twitter)・退職代行口コミサイト・5ちゃんねる・転職会議などで拡散されれば、新規採用が止まる。100万円の損害賠償を取れたとしても、採用コストの増加で1000万円失う。割が合わない。
理由3: 自社の問題と直視せざるを得ない
退職代行が来るということは、本人が「直接話せない関係性になっている」ということだ。そこには会社側の問題が必ずある。営業担当のフォロー不足・現場の問題への対応の遅れ・心理的安全性の欠如。損害賠償を請求する前に、自社の運営を見直すべきだという認識が、まともな経営者にはある。
経営者として正直に書くと、退職代行が来た日に最初に考えるのは「損害賠償どうしよう」ではなく「なぜこの人が直接話せない関係になっていたのか」だ。
小川(Heyday代表)から一言:
退職代行を使われたとき、最初は感情的にきつい。「直接言ってくれよ」と思う。でも一晩経って冷静になると、直接言える関係を作れていなかった自分の責任だと思える。損害賠償を請求した経営者を一人だけ知っているが、その会社は2年後に採用が止まり、3年後にエンジニアの離職が連鎖した。経営判断として、損害賠償は短期の感情と引き換えに長期の信頼を失う行為だ。
退職代行を使うべき場面・直接言える場面──5つの判断基準
退職代行は便利な選択肢だが、全員が使うべきものではない。判断基準を5つ提示する。
基準1: 心身の安全が脅かされているか
最優先の基準だ。以下のいずれかに当てはまる場合、迷わず退職代行を使った方がいい。
- 上司・現場PM・自社営業から人格否定・恫喝・ハラスメントを受けている
- 過剰残業(月80時間超)が常態化し、心身に症状が出ている
- メンタルクリニックで休職を勧められている、またはそれに近い状態
- 「明日も出社する」と考えるだけで動悸・吐き気がある
この状態で「直接退職を切り出す」エネルギーを使う必要はない。退職代行に2〜5万円払って即日離脱する方が、医療費・休職リスクを考えれば合理的だ。
基準2: 自社営業・上司との信頼関係が完全に崩れているか
退職を切り出すには、「相手と建設的な会話ができる」前提が要る。以下に該当する場合、退職代行が現実解になる。
- これまでの面談で、退職や不満を口にすると引き止め・説得が始まる
- 営業担当に何度相談しても改善しない(半年以上放置)
- 退職を切り出した同僚が、長時間の引き止め面談を強いられたと聞いている
- 「相談すると逆に状況が悪化する」と感じる関係になっている
会話が成立しない相手に直接言うコストは、退職代行費用より高い。
基準3: 退職時期と引き止めリスクの兼ね合い
転職先がすでに決まっており、引き止めや条件交渉で揺れたくない場合、退職代行は有効だ。
- 「単価を5万円上げるから残ってほしい」という提示で揺れたくない
- 引き止め交渉で1〜2ヶ月退職時期がずれると、転職先の入社日に影響が出る
- 自分の決断を貫きたいが、対面で説得されると断り切れない自覚がある
このパターンは「人間として弱い」のではなく、合理的な意思決定だ。
基準4: 直接言える関係性なら、直接言った方がいい場面
逆に、退職代行を使わなくていい場面もある。次の条件が揃っているなら、直接退職を切り出すことを推奨する。
- 営業担当・上司との信頼関係が一定以上ある(普段から相談できている)
- 退職を切り出しても、引き止めに合うリスクが低い(または引き止めを断れる自信がある)
- 心身の安全に問題がない
- 引き継ぎや常駐先への挨拶を、自分のペースで行える状態にある
直接言える関係なら、直接言った方が後々のキャリアに有利だ。SES業界は狭い。10年後に違う立場で再会する可能性が十分ある。「円満退職」は実利のある資産だ。
基準5: 退職代行費用と「言うコスト」の比較
最終的に、退職代行費用(2〜5万円)と、自分が直接言うために必要な精神的・時間的コストを比較する。
直接言うコストが退職代行費用を上回るなら、退職代行を使う。下回るなら直接言う。これが最もシンプルな判断基準だ。
「2万円払って明日から自由になる」が、「精神を消耗しながら2週間引き止められる」より価値が高いと感じるなら、それが答えだ。
退職代行業者の選び方──SES特有の注意点
退職代行を使うと決めた場合、業者選びにもSES特有の注意点がある。
弁護士・労働組合・民間業者の3種類
退職代行サービスは大きく3種類ある。
| 種類 | 費用 | 交渉権限 |
|---|
| 弁護士事務所 | 5〜10万円 | 退職通知・有給交渉・損害賠償対応・未払い賃金請求すべて可 |
| 労働組合 | 2.5〜3万円 | 退職通知・有給交渉・未払い賃金請求は可。損害賠償対応は不可 |
| 民間業者 | 2〜3万円 | 退職通知の伝達のみ。交渉権限なし |
SES退職で損害賠償の脅しを受ける可能性がある場合や、未払い残業代がある場合は、弁護士事務所が安心だ。費用は高いが、交渉が必要な場面で対応してもらえる。
通常の退職(揉める要素なし、有給消化のみ希望)なら、労働組合系で十分だ。費用とサービスのバランスがいい。
SES退職で確認すべき業者の対応範囲
退職代行業者を選ぶときに、SES特有の以下の項目を契約前に確認する。
- 貸与品(PC・セキュリティカード等)の返却仲介をしてくれるか
- 有給消化交渉に対応してくれるか
- 常駐先への事実通知(出社しない旨)の仲介をしてくれるか
- 最終給与・退職金の振込確認まで対応してくれるか
- 万一会社から損害賠償の通知が来た場合の対応範囲
これらに対応していない業者だと、退職代行を使った後も会社とのやり取りで疲弊する。費用が安くても、対応範囲が狭い業者は避けた方がいい。
Heydayが退職代行を「受けやすい」会社である理由
ここからは経営者の方針論として書く。
Heydayでは、退職代行を「敵視しない」「使われても困らない」という方針で経営している。具体的には次のような運営をしている。
方針1: 損害賠償は原則として請求しない
過去にも今も、退職代行経由の退職に対して損害賠償を請求したことはない。前述の通り、法的にも経営的にも合理性がないからだ。
退職者には「貸与品を着払いで返送してもらう」「最終給与を予定通り振り込む」「有給消化を認める」——これだけを淡々と行う。
方針2: 常駐先への対応は会社側で完結させる
退職代行経由で本人と連絡が取れない場合でも、常駐先への説明・引き継ぎ調整は自社の営業が担当する。「エンジニアに代わりに謝罪させる」ような運営はしない。
方針3: 退職代行の前に直接言える関係を作る
最も重要な方針はこれだ。退職代行を使われないように、普段から直接退職を切り出せる関係性を作る。具体的には:
- 月1回の1on1(営業担当 × エンジニア)で、現場の不満・キャリアの悩みを話せる場を作る
- 「退職を考えています」と言われても引き止め一辺倒にしない、まず理由を聞く文化を維持する
- 単価・マージン率・案件選定基準を透明化し、「会社に対する不信感」が積み上がらないようにする
- 営業担当の評価指標に「離職率」だけを使わない(離職率を下げるための引き止めにつながるため)
これらは「退職代行を使われないため」のテクニックではなく、「働きやすい会社を作るため」の運営だ。結果として退職代行率が下がる。
方針4: 退職代行を使われても、次は使われない設計を続ける
退職代行が来たときに、Heydayでは社内で振り返りを行う。「なぜこの人は直接言えなかったのか」「営業担当のフォローはどうだったか」「現場の問題を会社が把握できていたか」——これを記録し、次の運営に活かす。
退職代行を「使われた側」を被害者として扱わず、「会社の運営を見直す機会」として捉える。これがエンジニアにとって安全な環境を作る最短経路だと考えている。
小川(Heyday代表)から一言:
「退職代行を絶対に使われない会社を作る」のは難しい。エンジニアの個人的な事情・性格・タイミングで、どんなに良い会社でも退職代行は使われる。だから目指しているのは「使われても会社として動揺しない・損害賠償で報復しない・次の運営を改善する」という体制だ。退職代行は会社にとって痛いが、それを罰として使うのではなく、運営改善のシグナルとして使う。これが経営者として一番健全だと思う。
よくある質問(FAQ)
Q. SES退職代行を使うと損害賠償される?
法的には、退職を理由とした損害賠償は極めて狭い条件でしか認められない。判例上、契約途中離脱だけでは賠償責任は発生しない。経営者が脅しで「損害賠償する」と言っても、実際に訴訟するケースはほぼない(業界レピュテーション悪化と訴訟費用が見合わないため)。
Q. SES退職代行を即日で使える?
可能。多くの退職代行業者は、依頼日当日または翌営業日に会社へ通知する。法的には民法627条で「退職の意思表示から2週間で雇用契約終了」となるため、最短で2週間後に正式退職となる。それまでは有給消化または欠勤扱いになる。
Q. SES退職代行の費用相場は?
労働組合系で2.5〜3万円、弁護士事務所で5〜10万円が相場。民間業者は2〜3万円だが交渉権限がないため、SES退職では弁護士または労働組合をおすすめする。
Q. SES退職代行を使った後、貸与PCはどう返却する?
着払いで会社に返送する。退職代行業者経由で「着払い伝票を送ってください」と依頼するか、自分で着払い伝票を貼って発送する。返却が遅れても、会社が損害賠償を請求できるケースはほぼない(法的根拠が弱いため)。
Q. SES退職代行を使うと業界で噂が広がる?
SES業界は狭いが、退職代行を使ったこと自体が個人名で広まることは稀だ。会社側も「退職代行を使われた」を表立って言わない(自社の運営問題として捉えるため)。次の転職活動でも、転職先に退職代行使用が伝わるルートは原則ない。
Q. SES退職代行を使うと有給消化できる?
法的には可能。労働基準法上、有給休暇は労働者の権利であり、会社は時季変更権しか持たない。退職前で他に取れる時期がない場合、有給消化は事実上拒否できない。退職代行業者に「全有給消化希望」と伝える。
Q. 常駐先への挨拶はどうすればいい?
退職代行を使う場合、常駐先への対応はSES会社の責任になる。エンジニア個人が常駐先に直接連絡する義務はない。ただし、業務上の引き継ぎ書類を可能な範囲で残しておくと、後々の人間関係維持に有利になる(SES業界は狭く、再会する可能性がある)。
Q. 退職代行を使った後、会社から連絡が来たら?
退職代行業者を通じて対応する。本人に直接電話・メール・自宅訪問が来た場合も、すべて退職代行経由に誘導してもらう。労働組合や弁護士であれば、会社側の連絡を遮断する権限がある。
Q. 研修費用の返還を求められたら?
入社前に明示的な合意(一定期間以内の退職時は研修費用返済の契約)がない限り、原則として返還義務はない。一般的なOJT・業務上必要な研修は業務命令で行わせたものであり、返還請求は法的根拠が弱い。弁護士系の退職代行であれば対応してもらえる。
Q. SES退職代行はバックレと違う?
違う。退職代行は法的に正式な退職通知であり、損害賠償リスク・社会保険手続き・離職票発行などすべて適切に処理される。バックレ(無断欠勤のまま消える)は雇用契約が継続したまま放置されるため、社会保険料・住民税の請求が続き、転職先への離職票も出ない。退職代行は合法的な選択肢で、バックレとは全く異なる。
Q. SES会社が退職代行を断ることはある?
法的には会社は退職を拒否できない。民法627条により、期間の定めのない雇用契約は2週間で終了する。「退職を認めない」と言われても法的効力はない。退職代行業者がその交渉を代行する。
Q. 退職代行を使う前に、自社営業に相談すべき?
ケースバイケース。営業担当との信頼関係があり、相談で状況が改善する見込みがあるなら相談する価値はある。一方、何度相談しても改善しない・相談すると逆に状況が悪化する・引き止めで時間を奪われる——これらに該当するなら、相談せずに退職代行を使う方が合理的だ。
Q. 退職代行を使うと転職先にバレる?
原則バレない。退職代行は退職通知の代行であり、雇用記録上は通常の退職と同じ扱いになる。離職票・源泉徴収票も問題なく発行される。転職先の人事は退職代行使用を確認する手段がない。
Q. SES経営者は退職代行を使われた本人を恨む?
経営者によるが、Heydayの方針では恨まない。退職代行を使われたという事実は、会社側の運営課題のシグナルとして捉える。本人個人を責める文化を持つ会社は、業界レピュテーションを失う構造になっている。
まとめ
SES退職代行は、SES業界全体で全退職者の1〜2割に達する一般的な選択肢になっている。退職代行を「使われた側」のSES経営者として、3つのことを伝えたい。
- 損害賠償はほぼ来ない: 法的根拠が弱く、業界レピュテーションも悪化するため、まともな経営者は実行しない。脅しに屈する必要はない
- 判断基準は明確: 心身の安全・営業との信頼関係・引き止めリスクの3点で判断する。直接言えるなら直接言った方が長期的に有利、言えない関係なら退職代行が合理的
- 会社側の問題でもある: 退職代行を使われる会社は、直接言える関係を作れていない。これは会社の運営課題であり、エンジニア個人の責任ではない
Heydayでは退職代行を敵視せず、「使われても困らない」運営を続けている。損害賠償は請求しない、常駐先対応は自社で完結させる、普段から直接言える関係を作る——これがSES経営者として誠実な対応だと考えている。
SES退職代行を検討しているエンジニアにとって、最も大切なのは「自分の心身を最優先する」ことだ。会社の都合・損害賠償の脅し・常駐先への配慮——これらに振り回される必要はない。
転職を検討している場合は、Heydayの診断ツールで自分の市場単価を確認してから動くことをおすすめする。次の転職先を慎重に選ぶことが、退職代行を再び使わなくて済む環境につながる。
転職前のキャリア相談を希望する場合は、キャリア相談から連絡してほしい。退職代行を使った後の再就職についても、現場視点で対応している。
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