キャリア・働き方10独自データあり

SES新卒1年目にやるべきこと
12ヶ月ロードマップ

小川将司
小川将司代表取締役

Heyday代表小川将司が、新卒SESエンジニア採用・育成の経営者実務から執筆

シェア:B!

この記事でわかること

  • SES1年目の12ヶ月ロードマップ(月ごとの具体的目標)
  • 1年目の終わりに達成すべき状態(Heydayの経営者が期待する水準)
  • やらないと後悔する1年目の行動3つと、やりすぎると裏目に出る行動

この記事の対象: SES新卒入社を控えたエンジニア、SES1年目で何をすればいいか迷っているエンジニア

SESに新卒で入社する人から、いちばんよく聞かれる質問はこれだ。

「1年目、何をすればいいですか」

漠然とした不安の裏返しの質問だと思う。研修が終わって現場に出ると、教科書通りの「先輩から教わって育つ」という構図はあまり機能しない。自分が何を学べばいいか、何ができたら成長したと言えるのか、誰も明確に教えてくれない。

私はHeyday株式会社を6年経営し、新卒・第二新卒のSESエンジニアを採用・育成してきた。そして毎年、新卒入社のメンバーに「1年目の終わりにこの状態にいてほしい」という具体的な期待値を伝えている。

この記事ではその内容を公開する。Heydayが新卒に実際に伝えている12ヶ月ロードマップだ。月ごとの目標と、1年目の終わりにどこまで到達していてほしいか、そしてやりすぎると裏目に出る行動まで含めて、経営者の本音で書く。


なぜ「1年目」が決定的に重要なのか

結論から言うと、SESエンジニアの市場価値は1年目で7割が決まる

Heydayでこれまで関わってきたエンジニアを観察すると、3年目以降に伸びる人はほぼ例外なく1年目で「ある状態」に到達している。逆に、1年目を漫然と過ごした人は、2〜3年目で必ず壁にぶつかる。

理由は3つある。

1つ目は、1年目に作る学習習慣がその後10年続くこと。1年目で業務時間外に勉強する習慣をつけられなかった人は、2年目以降もつけられない。これは300人以上のエンジニアを見てきて確信している事実だ。

2つ目は、1年目の最初の現場での評価が、2年目以降の案件の質を決めること。SES業界では「あの現場で評価された人」という情報が営業に伝わり、次の提案単価・難易度に直結する。

3つ目は、1年目の終わりに「自走できるか」が判定されること。自走できると判定されれば2年目から指示なしで動かせる人材になり、できないと判定されれば指示待ちのままになる。この差は単価で月10万〜20万円違ってくる。


12ヶ月ロードマップ:月ごとの具体的目標

1〜3ヶ月目:基礎の土台と「報連相」の徹底

最初の3ヶ月で達成すべきは、技術より先に社会人としての基本動作を体に染み込ませることだ。

技術力の差は1年目では大きく開かない。しかし「報連相が当たり前にできる新人」と「できない新人」の差は、3ヶ月で歴然とする。そして現場のリーダーは、3ヶ月時点でこの判定を済ませる。

この時期の目標

  • 業務開始・終了・休憩のタイミングで必ずSlackやTeamsで一言入れる
  • 詰まったら15分以内に質問する(30分以上抱え込まない)
  • 議事録を取って、終わった会議の内容を自分の言葉で再構成する
  • 配属された現場の業務ドメイン(金融・物流・小売など)を1冊本を読んで概要を把握する

技術面では、研修で学んだ言語の基礎を「業務で書ける」レベルまで馴染ませる。ここでは新しいことを覚えるより、配属された現場のコードを読んで真似することに集中していい。

4〜6ヶ月目:単独タスクを完結させる

4ヶ月目以降は「指示されたタスクを最後まで一人で完結させる」フェーズに入る。

ここで多くの新人が躓く。なぜなら、「ここまでやればいい」のラインが自分でわからないからだ。タスクを振られて、なんとなく動かしてみて、レビューでひっくり返される、という繰り返しになる。

この時期にやるべきこと

  • タスクを受けたら、着手前に「これで完了と言えるか」の定義を文章でリーダーに確認する
  • 実装を始める前に、自分が書こうとしているコードの設計をテキストで書いて先輩に見せる
  • レビューで指摘された内容を全部メモに残し、同じ指摘を二度受けないようにする
  • 業務時間外で週5時間以上、配属領域の技術を学習する

重要な分岐点:この時期に「自分で考えて手を動かす癖」をつけられた人は1年目の後半で伸びる。逆に「指示を待って動く」癖がついた人は、2年目以降にどれだけ努力しても癖が抜けない。

7〜9ヶ月目:仕組みを理解し、改善提案を始める

半年を過ぎたら、次のレベルに進む。目の前のタスクをこなすだけでなく、現場の仕組みを理解する段階だ。

具体的には、自分の担当領域の前後の工程・関連システム・業務フローを把握する。「自分が書いているこのバッチ処理は、どのデータを誰がどう使っているのか」を説明できるようになる。

この時期の目標

  • 担当システムのアーキテクチャを自分で図に描けるようになる
  • 業務フロー全体の中で、自分のタスクがどこに位置するか説明できる
  • 小さくていいので、改善提案を1つ出してみる(ログの取り方、テストの追加、ドキュメント整備など)
  • 後輩や同期に対して、自分が学んだことを言語化して教える機会を作る

改善提案について補足する。新人が改善提案をするのは生意気だと思うかもしれない。しかし、Heydayが現場のリーダーから受け取るフィードバックで最も評価が高いのは「自分から動こうとする新人」だ。リスクは小さく、リターンは想像以上に大きい。

10〜12ヶ月目:1年目の集大成と次のステップへの布石

最後の3ヶ月は、1年目の総仕上げと、2年目以降のキャリアの布石を打つ時期だ。

この時期の目標

  • 自分が1年で何を学んだかを文書化する(職務経歴書の最初のドラフトを書く)
  • 取得すべき資格を1つ決めて受験する(基本情報技術者試験・AWS CLF・LPIC Lv1のいずれか)
  • 2年目以降にやりたいことを言語化し、上司や営業に共有する
  • 配属領域の「次の1段上」のタスクに自分から手を上げる

職務経歴書を1年目で書く意味。転職するためではない。自分が1年で何ができるようになったかを言語化する練習だ。これをやらないと、2年目以降に「自分がいま何ができるか」を聞かれても答えられない人になる。


1年目の終わりに達成すべき状態(Heydayの経営者基準)

ここからが、世の中の記事ではあまり語られない部分だ。

Heydayが新卒1年目の終わりに期待する状態を、経営者として正直に書く。これは綺麗事ではなく、「2年目以降に単価を上げて提案できるかどうか」の判定基準だ。

技術面

  • 配属言語で「仕様書から実装まで一人で進められる」レベル
  • ドキュメントとコードを読んで、初見のシステムでも1週間でキャッチアップできる
  • Git・CI/CD・基本的なクラウド(AWS or Azure)の基礎操作

業務面

  • 自分の担当領域の業務知識を、社外の人に5分で説明できる
  • レビューで指摘される内容が「設計レベル」になっている(命名や構文ではなく)
  • 朝会や定例で、自分の進捗を構造化して報告できる

姿勢面

  • 業務時間外で週5〜10時間、技術や業務知識の学習を継続している
  • 自分から改善提案や勉強会発表を1回以上やっている
  • 2年目以降に何をやりたいか、自分の言葉で説明できる

これらに到達していれば、2年目から「指示なしで動かせる人材」として現場に提案できる。単価で言うと、1年目の標準ラインから月5万〜10万円上がる位置にいる。


やらないと後悔する1年目の行動3つ

1. 業務外で技術書を1冊以上読み切る

業務で触れる技術の体系的な理解を、本で1冊押さえておくと2年目以降の成長速度が変わる。Webの記事だけで学ぶ人は、知識が断片的になる。

おすすめは『リーダブルコード』『達人プログラマー』のいずれか、それと配属言語の定番本(Javaなら『Effective Java』、Pythonなら『Fluent Python』など)を1冊。

2. 同期や先輩との関係を作る

SESは現場が分散するので、放っておくと孤立する。社内の同期と月1で会う、先輩エンジニアに月1で相談する、という最低限の関係性を作っておくと、2年目以降の心理的負荷が劇的に違う。

3. 自分の市場価値を1年目の終わりに必ず確認する

転職するかどうかは別として、自分が今どの位置にいるかは1年目の終わりに必ず把握しておくべきだ。

Heydayでは1年目の新卒に対して、自社で診断ツールを使って単価レンジを確認することを勧めている。これをやっておくと、2年目以降のキャリア判断が圧倒的にやりやすくなる。


やりすぎると裏目に出る1年目の行動

逆に、頑張りすぎが裏目に出るパターンもある。

資格を取りすぎる 1年目で資格を3つも4つも取る人がいる。悪くはないが、業務での実装力がついていないと「資格はあるけど現場で使えない人」になる。1年目は資格1個で十分。

転職サイトを見続ける 1年目から転職サイトを毎日見る人がいる。今の現場で結果を出していないのに次を考えるのは、ほぼ確実に失敗する。1年目は逃げずに目の前で結果を出すことが、2年目以降の選択肢を広げる唯一の方法だ。

新しい技術を追いかけすぎる 業務と関係ない新しい技術を追いかけて、目の前の業務知識が浅くなる人がいる。1年目は「配属領域の深さ」が最優先。横展開は2年目以降でいい。


経営者として、新卒に伝えたいこと

最後に1つだけ。1年目で大事なのは、上手にやることではなく、誠実にやることだ。

技術力で先輩を抜くことは1年目では絶対にできない。しかし「誠実に向き合っている新人」と思ってもらうことは、1年目でも100%できる。報連相を徹底する、わからないことを正直にわからないと言う、ミスをしたら隠さず報告する。これだけで、あなたは「育てる価値のある新人」と思われる。

技術は後からついてくる。誠実さは後からは作れない。


まとめ

SES新卒1年目の12ヶ月ロードマップを、Heydayが実際に新卒に伝えている内容で書いた。

整理する。

  • 1〜3ヶ月:報連相と基本動作の徹底
  • 4〜6ヶ月:単独タスクの完結と自走の習慣化
  • 7〜9ヶ月:仕組みの理解と改善提案
  • 10〜12ヶ月:総仕上げと次のステップへの布石

そして1年目の終わりに、技術・業務・姿勢の3軸でHeyday基準を満たしていれば、2年目から単価提案の幅が大きく広がる。

1年目はキャリアの土台であり、ここで作った習慣がその後10年続く。漫然と過ごすか、意識的に積み上げるかで、3年後の自分は別人になる。

20代以降のキャリア戦略についてはSESエンジニアのキャリアパス完全ガイドでさらに詳しく書いている。1年目を終えた次のフェーズで読んでほしい。

案件例を見てみる

技術スタック・単価帯・勤務形態がわかる具体的な案件情報

この記事の著者

小川将司
小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

Heyday代表小川将司が、新卒SESエンジニア採用・育成の経営者実務から執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

シェア:B!

次に読む