20代SESエンジニアに、ある質問をするとことがある。
「5年後、今と何が変わっていたいですか?」
答えられる人と、答えられない人がいる。答えられない人の多くは、5年後も同じ場所にいる可能性が高い——これはHeydayで採用・支援に関わってきた中で感じる、正直な印象だ。
20代は「まだ若いから大丈夫」という感覚があるから、キャリアを先送りしやすい。しかし、私が300人以上のエンジニアのキャリアに関わってきた経験から言えば、30代・40代になって市場価値が高いエンジニアのほぼ全員が、20代のうちに意図的な選択をしている。
逆に、「なんとなく続けてきた」という20代を過ごした人は、30代で自分の選択肢の狭さに気づき、焦ることになる。
この記事では、20代のSESエンジニアが「なんとなく」に陥らないための、具体的な考え方と行動を整理する。
20代エンジニアがよくやる3つの失敗パターン
失敗パターン1:「年収で会社を選ぶ」
20代の前半に陥りやすい罠が、給与や手取りを最優先に会社を選ぶことだ。
入社1〜2年目の段階で「この会社は還元率が高い」「手取りが多い」という理由で選ぶと、数年後に気づくことがある——技術が積めていない、市場価値が上がっていない、という現実だ。
20代前半の年収差は、30代以降の年収差に比べると小さい。たとえば1年目の年収が300万円か350万円かの差より、30代で500万円か800万円かの差の方がはるかに大きい。
20代前半で優先すべきは「どれだけ稼げるか」ではなく「どれだけ成長できるか」だ。
成長できる環境かどうかを見るポイントは、
- 現場にモダンな技術スタックがあるか
- コードレビューをしてくれる先輩エンジニアがいるか
- 担当営業が「どんなスキルを積みたいか」を聞いてくれるか
の3つだ。Heydayでエンジニアの定着率が高い理由の一つは、最初の現場選定を「給料ではなく成長環境」で考えていることにある。
失敗パターン2:「現場に流される」
SESエンジニアの宿命として、「案件ガチャ」がある。最初の現場が良いかどうかは、会社の配慮と運の両方に左右される。
問題なのは、悪い現場に入ったとき「まあ仕方ない」と諦めてしまうことだ。「技術スタックが古い」「やることが保守ばかり」「先輩が教えてくれない」という状況で1年・2年と過ごすと、積み上がるのは「古い技術の保守経験」だけになる。
6ヶ月ごとに「この現場でスキルが積めているか」を自己評価してほしい。 もし半年経っても成長実感がなければ、担当営業に「案件を変えてほしい」と明確に伝えることをためらわないでほしい。
私がよく言うのは「会社に遠慮しないで」ということだ。SES企業は基本的に、エンジニアが成長してくれた方がビジネスになる。主体的に案件を選ぼうとするエンジニアの方が、長く活躍できる可能性が高い。
失敗パターン3:「転職・フリーランスを先延ばしにする」
「30代になってから考えよう」——この先延ばしが、最も多い後悔パターンだ。
転職市場でも、フリーランス市場でも、20代後半(25〜29歳)のエンジニアは需要が高い。経験は3〜5年あり、ポテンシャルも高い。この時期に動けば選択肢が広い。
しかし30代になると、採用側の期待値が変わる。「即戦力」として見られるようになるため、スキルが中途半端だと評価されにくくなる。
転職や独立を考えるなら、28歳〜32歳のタイミングが動きやすい。 そのためには20代前半からスキル基盤を作り、遅くとも25〜26歳から意識的に準備を始めることが重要だ。
未経験からIT業界に入り、1年8ヶ月で「うまくいってないと言える」ようになるまでの過程は、Heydayスタッフの中村のインタビューで率直に語ってもらっている。20代で壁にぶつかっている人に読んでほしい。
技術基盤の作り方:何を、どう伸ばすか
20代前半(1〜3年目):1つで完結できるレベルを目指す
最初の3年間の目標は、「特定の言語で一人で設計から実装まで完結できるレベル」だ。
多くのものを学ぼうとして、全部中途半端になるのが20代前半のよくある失敗だ。まず1つ完全に習得してから、横展開する。 この順番が重要だ。
20代前半で押さえるべき技術(優先度順)
| 技術 | なぜ重要か |
|---|
| メイン言語の深い理解 | 他の言語を学ぶ際のベースになる |
| Git・GitHubの実践的な使い方 | チーム開発・転職活動の基礎 |
| リレーショナルDB(MySQL/PostgreSQL) | どの現場でも使う基礎インフラ |
| Linux基本操作 | サーバー系の作業で必須 |
| Docker基礎 | 2026年時点でほぼ標準スキル |
言語の選択については、Heydayの案件データから見ると、JavaとPythonが案件数・単価ともに安定している。TypeScriptはフロントエンド・バックエンド両方に使えるため、フロントエンドよりの現場に入りやすい。
20代後半(3〜5年目):専門性を一つ作る
3年目以降は「この技術なら任せて」と言える専門性を一つ作ることを意識する。
単価に直結しやすいスキル(2026年時点)
- AWS認定資格(SAA/SAPレベル):月単価+10〜20万円の案件に入れる
- GCP Professional Data Engineer:AI・データ案件で需要急増
- Python + LLM連携経験:AI開発案件で圧倒的に有利
- TypeScript + Next.js:フロントエンド案件で標準スペック
どれを選ぶかは、今の現場のスタックと、自分が面白いと感じる領域で決めて良い。ただし、AIとクラウドのどちらかは必ずカバーしておくことを強く勧める。2026年時点でこの2つを触れたことがないエンジニアは、30代で単価競争で苦しくなる可能性が高い。
「スキルの量」より「スキルの深さ」を優先する
20代は「あれもこれも学ばなければ」という焦りを感じやすい。しかし、転職市場・フリーランス市場のどちらでも、「浅く広く」より「深く狭く、外にも広げられる」人材の方が評価が高い。
1つの言語・1つのクラウド・1つのドメインで「これなら自分が担当する」と言える深さを持ってから、横展開する。この優先順位を守ることが、30代以降の単価に直結する。
会社選びの基準:「案件数が多い」より大事なこと
SES企業を選ぶ際に、20代が見るべき基準を整理する。
現場の成長環境を確認する
面接・面談の段階で、以下を確認してほしい。
- 「最初の現場でどんな技術スタックを扱えますか?」
- 「入社後、スキルアップの希望はどう反映されますか?」
- 「エンジニアの資格取得支援はありますか?」
これらを聞いたときに「案件は豊富にある」「頑張り次第」という曖昧な回答しか返ってこない会社は、エンジニアの成長を真剣に考えていない可能性が高い。
マージン率と還元率を確認する
同じ経験年数・スキルでも、SES企業のマージン率によって手取りが大きく変わる。
業界平均のマージン率は25〜35%程度だが、会社によっては40〜50%取るところもある。例えば月単価60万円の案件に入った場合、マージン30%の会社と40%の会社では手取りが月6万円、年間72万円変わる。
20代でも、マージン率の透明性を確認することをためらわないでほしい。 明かさない会社は、マージン率が高い可能性がある。
Heydayでは自社のマージン構造を公開している。詳細はSESマージン構造の完全解説を参照してほしい。
SES企業の「商流の深さ」を確認する
商流が深い(2次請け・3次請け)と、単価が下がりやすく、現場のコントロールも限定的になる。
可能であれば「プライムベンダー案件(エンドユーザーとの直接契約)の割合はどのくらいですか?」と聞いてみることをお勧めする。直接契約の割合が高い会社ほど、エンジニアに還元できる単価が高くなりやすい。
市場価値を作る行動:見える実績の積み方
技術が伸びても、それが「見えない」状態では転職・フリーランス市場での評価が上がらない。20代のうちから「見える実績」を作ることを意識してほしい。
GitHubアウトプットを始める
転職活動で「GitHubに何もない」状態は、採用担当にとって判断材料がない状態を意味する。特にモダンな技術を使う自社開発企業では、ポートフォリオの有無が合否に直結することが多い。
週2〜3時間でも、2〜3年継続すれば十分なポートフォリオになる。大きなプロジェクトを作ろうとしなくていい。「一つの機能を一人で実装してGitHubに上げる」という小さな一歩から始めることが、継続できる方法だ。
資格・スコアを持つ
スキルを「見える化」する最も確実な方法が資格だ。
20代のうちに取得しておくと効果が高い資格:
- AWS SAA(Solutions Architect Associate):3〜5万円の月単価増が見込める
- AWS SAP(Professional):10〜20万円の月単価増が見込める
- G検定・E資格:AI案件へのアクセスが広がる
特にAWS SAAは、20代前半のうちに取っておくと「将来のクラウドエンジニア」としての道が開けやすい。
社内外でのアウトプット習慣
Zenn・Qiita・個人技術ブログへの記事投稿も「見える実績」の一つだ。週1本のペースで技術記事を書き続ければ、1〜2年後には専門性の証拠になる。
勉強会への参加・登壇も効果的だ。「この技術で登壇した」という実績は、転職先の技術者に対して強い印象を与える。
AI時代の20代に必要なこと
2026年時点で、AIはエンジニアの仕事を確実に変えている。20代のうちにAI活用スキルを身につけることは、30代以降の市場価値に直結する。
AIを「使われる側」にならない
GitHub Copilot・Cursor・Claude Codeなどのツールは、コーディングの定型作業を高速化してくれる。これを使わないエンジニアは、単純な生産性で不利になる。
しかし重要なのは「AIを使う」だけでなく、「AIが出力した結果を評価・改善できる」能力だ。
AIが出したコードの問題点を見つけられるか? これができるエンジニアとできないエンジニアは、数年後に評価が大きく分かれる。
20代が優先すべきAIスキル
- AIツールを日常に組み込む:GitHub Copilot/Cursorを実務で毎日使う習慣
- プロンプト設計を学ぶ:「どう指示すれば良い出力が得られるか」を体感的に理解する
- AIの出力を検証する力を養う:生成されたコードのバグ・セキュリティ問題を見つける
AI活用の実践的なガイドはエンジニアのAIツール活用実践ガイドで詳しく解説している。
「コードを書けること」だけでは差別化できない時代
2026年、コーディングの定型部分はAIが担うようになった。これは20代エンジニアにとって脅威でもあり、チャンスでもある。
脅威の側面:初心者・若手エンジニアが担っていた「コードを書く」という作業の価値が下がっている。「コードが書けます」だけでは差別化が難しくなった。
チャンスの側面:AIを使いこなすことで、同期比2〜3倍の生産性を実現できる。その余力を「設計」「要件定義」「上流工程」に使えるエンジニアは、20代から上流の仕事を経験できる。
AI時代に20代エンジニアが優先すべきは、「AIに仕事を奪われないようにする」という防御的な発想ではなく、「AIを武器に、上のレベルの仕事に踏み込む」という攻撃的な発想だ。
3年・5年で差がつく行動チェックリスト
1〜3年目(基盤構築期)
3〜5年目(専門性確立期)
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AI・スキル
市場価値・単価
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よくある質問
Q. 20代でSESに入ったのは失敗でしたか?
SESは「入口」として悪くありません。複数の現場・業界を経験でき、スキルの伸びを実感しやすい。問題なのは「出口」を考えないことです。20代のうちから「3年後どうなりたいか」を意識し、意図的に行動するなら、SESは市場価値を上げるための有効な場所になります。
Q. 20代のうちにフリーランスになるのはありですか?
実務3〜4年以上で特定のスキルが確立していれば、可能です。ただし待機リスクへの備え(生活費6ヶ月分)と、案件獲得手段の確保(エージェント複数登録)が必須です。準備なしで独立すると、最初の待機期間で精神的に追い詰められるケースが多い。
Q. AWS資格は独学で取れますか?
AWS SAAなら独学で十分です。2〜3ヶ月、週10〜15時間の学習で合格を目指せます。推奨教材はUdemyの「AWS SAA 合格対策」系コースと、公式の模擬試験です。資格取得後は、次の案件で「AWSを使う現場を希望します」と担当営業に伝えることで、資格を活かした現場に入りやすくなります。
Q. 転職を考えているが、今の現場を途中で抜けることに罪悪感がある
SES企業の正社員なら、退職は基本的にいつでも法的に可能です(民法627条)。現場のプロジェクトに迷惑をかけないよう、引き継ぎの準備と十分な退職申告期間(1〜3ヶ月)を設けることがマナーです。「現場への迷惑」を理由に引き止めようとする場合は、それ自体が問題のある会社のサインかもしれません。