「インサイドセールスってフリーランスや業務委託でできるの? できるとしたら単価はいくらになるの?」
この疑問を持つ人が増えている。SESエンジニアとして技術現場を経験したのち、IT製品の提案・商談側に移るキャリアパスが現実的な選択肢になってきたからだ。
ただ、インサイドセールスのフリーランス案件は、エンジニア向けフリーランス市場ほど情報が整備されていない。「案件はあるの?」「いくらもらえるの?」「技術背景があると有利なの?」という基本的な問いに答えるコンテンツが少ない。
Heydayを運営して6年、IT/SaaS系の採用支援をしてきた経験から、この記事ではインサイドセールスのフリーランス・業務委託案件の実態を整理する。市場データの一部は推測を含むため、その旨を都度明記する。
まず、現在の市場でどの程度の単価が出ているかを整理する。以下はIT/SaaS系案件を中心とした業界水準の推測値だ。実際の単価は案件ごとに異なり、以下はあくまで目安(推測・業界水準)。
| 案件タイプ | 月単価の目安 | 備考 |
|---|
| コール中心のSDR(テレアポ型) | 30〜60万円 | スクリプトが整備された定型業務 |
| IT/SaaS BDR(新規開拓型) | 50〜90万円 | 企画・ターゲット選定も含む |
| SaaS向けSDR(リード育成型) | 50〜80万円 | マーケ連携・ナーチャリング中心 |
| IS責任者・プレイングマネージャー | 80〜120万円 | KPI設計・チームマネジメントあり |
| IS+CS兼任(スタートアップ向け) | 60〜100万円 | 幅広い役割を求められる |
(上記はすべて推測・業界水準。ITプロパートナーズ等の求人サイト掲載案件を参考に作成。実際の単価は経験・スキル・商材によって大きく変動する)
月100万円を超えるIS案件には、いくつかの共通点がある。
1つは「商材の複雑さ」だ。エンタープライズ向けの基幹システム、クラウドセキュリティ、データ基盤ツールなど、顧客側に技術的理解を求める商材は、IS側にも相応の技術知識が求められる。このタイプの案件は、純粋な営業出身者では対応しにくく、技術バックグラウンドを持つISへの需要が高い。
2つ目は「立ち上げフェーズへの関与」だ。スタートアップや大手のIS部門立ち上げに、プロとして入る案件は単価が高く設定されやすい。「月に何十件架電する」ではなく「IS組織をどう作るか」を問われる役割だ。
3つ目は「CRM設計・データ活用の知識」がある場合だ。Salesforce・HubSpot等のCRM設定や、データドリブンなKPI設計ができる人材は、純粋な架電要員とは異なる評価を受ける。
HeydayはSES事業を主軸にしており、毎月多数のエンジニア案件を扱っている。その経験から言えることがある。
技術背景を持つISの単価は、開発エンジニアと比較しても遜色ない水準になるケースがある。
SES案件で言えば、JavaやPython経験3〜5年のエンジニアの標準単価は月60〜90万円程度が多い(Heydayが扱う案件の概算・推測含む)。これと比較すると、IT/SaaS系のIS案件は同等かそれ以上の水準にある。
理由は3つある。
1. 顧客との技術的な対話ができる
SaaS製品の商談は、顧客側の担当者が情報システム部門やエンジニアであることが多い。「APIとの連携はどうなりますか」「既存のAWSインフラとどう統合できますか」という質問に答えられるISは、顧客からの信頼度が違う。営業スクリプトを覚えただけのISでは対応できない領域だ。
2. 製品デモや技術検証に関われる
特にスタートアップ系SaaSでは、IS段階でPoCやデモ環境の準備を担当することもある。エンジニアとしての実務経験があれば、デモ環境の構築や技術的な事前確認を自走できる。これは営業純粋出身者には難しいタスクだ。
3. カスタマーサクセス・FSへの橋渡しができる
IS → FS(フィールドセールス) → CSという商談の流れで、技術的な引き継ぎ情報を正確に伝えられることは重要だ。「このお客様はAWSのRDSでの構築を検討していて、PostgreSQLとの互換性を気にしている」という情報をFSやCSに渡せると、受注率・継続率が変わる。
インサイドセールス案件の働き方は、開発案件と比べてどうなのか。
IS案件のうち、フルリモートで対応可能なものは増えている。特にWeb会議・メール・MA(マーケティングオートメーション)ツールを使った業務は、物理的な場所を選ばない。
ただし、「スタートアップの立ち上げ段階に入る」「チームマネジメントも含む」といった案件では、週1〜2回の出社を求めるケースがまだある。エンタープライズ営業を支援するIS案件も、重要商談の前後に対面での打ち合わせを求めることがある。
ITプロパートナーズ等のプラットフォームで確認できる案件で言えば、「フルリモート」「基本リモート・一部出社」という条件の案件が多数を占める(2026年4月時点の掲載案件を参照)。
副業・複業としてIS案件に入る場合、週2〜3日稼働の案件を選ぶケースが多い。シューマツワーカーやAnycrew等の副業プラットフォームには、週1〜3日程度のIS案件が一定数ある。
フリーランスとしてフルコミットする場合は、週4〜5日稼働の案件が中心になる。この場合の月単価は50万円以上になることが多い(業界水準・推測)。
IS案件の業務委託契約には、「準委任」型と「成果物納品」型がある。
IS業務の性質上、準委任(時間・稼働量ベース)が主流だが、成果報酬型(アポイント件数、商談設定件数ベース)の契約も存在する。成果報酬型は、短期間で多くの案件をこなせる経験者には有利だが、未経験に近い状態での参入はリスクがある。
Heydayが案件を紹介する際は、契約形態・単価計算の根拠・成果物の定義を最初に開示するようにしている。IS案件特有の「曖昧な成果報酬」条件は、案件に入る前に必ず確認が必要だ。
実際にフリーランスとしてIS案件を獲得するために、何が求められるかを整理する。
インサイドセールス実務経験(1〜2年以上)
架電、商談設定、CRMへの入力、リードの管理といった基本的なIS業務を一通り経験していることが前提になる。未経験者向けのフリーランスIS案件は、現時点ではほぼ存在しない。
CRM/SFAツールの操作経験
Salesforce・HubSpot・SalesLoftなどのツール経験は、ほぼすべての案件で要求される。特にSalesforceの基本操作ができることは最低ラインとして扱われることが多い。
IT/SaaS商材の営業経験
今後の需要を考えると、汎用的な業界ではなくIT/SaaS領域の経験があることが差別化になる。
エンジニア・技術職出身でIS案件を検討する場合、以下の経験は明確な強みになる。
- クラウド(AWS/GCP/Azure)の基本的な理解
- API連携・データベース・セキュリティの基礎知識
- SaaS製品の構造(テナント管理・権限設定・連携設定等)への理解
- 開発現場でのツール利用経験(Slack・Notion・Jira等)
「技術がわかる営業」は希少で、IS案件でも同様に需要がある。SES現場でPMや技術リードに近いポジションを経験した人であれば、顧客折衝のスキルもISに転用できる。
Heydayには、SES出身者からのIS転換相談が複数届いている。その共通パターンを紹介する(個人が特定されないよう一般化している)。
「技術は伸びてきたが、もっと顧客と話す仕事がしたい」
SES現場で3〜5年経験を積み、スキルシートに書けるものは揃った。でも、コードを書き続けるより「製品を使ってもらう側」に関わりたい。そういう動機でIS転換を考えるエンジニアは少なくない。
「SaaSツールの導入支援をしていて、その製品を売る側に興味が出た」
SES案件でSalesforce・ServiceNow・SAP等の導入支援をしていると、「これを企業に売り込む仕事はどういうものか」という関心が生まれることがある。その製品の強み・弱みを理解しているからこそ、IS/CSとしての価値提供ができる。
「SES会社のPMをしていたが、受注前の商談フェーズに関わりたい」
SES企業内でPMやアカウントマネージャー的な役割を担っていた人が、ISやBDとして独立・副業を始めるケースもある。顧客折衝の経験があるため、IS業務への適性は高い。
SES→IS転換で注意が必要なのは、「IS経験がない状態でいきなりフリーランスIS案件に挑む」ことだ。
IS案件のクライアント側は、即戦力を求めている。「エンジニアとしてのキャリアを活かしつつISを学びたい」というスタンスよりも、「ISの実務を一通りできる上で技術知識も持っている」という状態で案件に入ることが望ましい。
転換の現実的なルートとしては、まずSES会社やSaaS企業の正社員IS職でIS実務を積み、そこからフリーランスに移行するのが安定する。
Heydayは、IT/SaaS系のインサイドセールス業務委託案件も扱っている。エンジニア向け案件と同様、IS案件についても以下の情報を最初から開示する方針だ。
- 月単価・報酬計算の根拠: 「どのくらいもらえるか」を最初の段階で明示する。「詳細は面談で」という進め方はしない
- 稼働日数・稼働形態: フルリモートか、週何日か、コアタイムはあるかを案件票に明記する
- 商流の深さ: 直接受注かどうか、中間に何社入るかを開示する。商流が深い場合はその旨を先に伝える
- クライアント企業の規模・フェーズ: 大手かスタートアップか、IS組織が確立しているかどうかを開示する
この方針は、Heydayが創業以来一貫して持つ「ITをもっとフェアに」という考え方に基づいている。IS案件の業務委託市場は、報酬条件が不透明なものが多い。「後から成果報酬の条件を変更される」「稼働後に単価が下がる」といった問題を防ぐためにも、案件の条件を事前に整理することが重要だ。
対応可能なケースはある。週1〜3日稼働、フルリモートのIS案件は副業に適している。ただし、クライアント側が「本業に影響しない範囲での副業」を条件としている案件も多いため、自身の雇用契約の副業規定を確認することが先決だ。
また、副業IS案件は月単価が10〜30万円程度と、フルタイムより単価が落ちる傾向がある。成果報酬型の案件は副業でも参加しやすいが、架電件数・アポイント件数のKPIを設定されることが多いため、時間管理が重要になる。
はっきり言うと、難しい。フリーランスIS案件はほぼすべてが即戦力前提だ。「ISを学びながら案件に参加したい」という状態では、案件獲得の難易度が高い。
未経験からのルートとしては、まずIS職の正社員・契約社員として実務経験を1〜2年積んでから、業務委託・フリーランスへの移行を検討する方が現実的だ。Heydayでは、IS転換のキャリア相談にも対応している。
条件次第だが、上がるケースがある。技術バックグラウンドを持つISへの需要は、IT/SaaS市場が成熟するにつれて高まっている。
ただし、エンジニアとしての単価とISとしての単価を単純に比較するのは難しい。経験3年・Pythonエンジニアとしての月単価が70万円だとして、IS転換初期は50〜60万円に下がることもある。技術知識をIS業務で活かして実績を積んでいくと、再び70万円以上の水準に戻るイメージだ(推測・一般的なパターン)。
IS転換の単価推移についても、Heydayのキャリア相談で具体的な話ができる。
一部はある。ITプロパートナーズやレバテックフリーランス等のエンジニア向けフリーランスサイトでも、IS・セールス系の案件を扱っている。ただし、メイン掲載はエンジニア案件であり、IS案件の数は限られる。
IS案件に特化したプラットフォームとしては、シューマツワーカー・Anycrew・Warisなどがある。また、Heydayのように「技術バックグラウンド × IS転換」という文脈で案件を持っているエージェントに相談するのも一つの手段だ。
インサイドセールスのフリーランス・業務委託案件は、確実に市場として存在する。特にIT/SaaS系案件は月50〜120万円(業界水準・推測)の単価レンジがあり、技術バックグラウンドを持つIS人材への需要は高まっている。
ただし、「ISを学びながらフリーランス」は難しい。IS実務経験1〜2年以上、CRM操作経験、IT商材の知識——この3点を揃えた状態で市場に出ることが、IS案件を獲得するための現実的な前提条件だ。
SES出身者や技術バックグラウンドがある人がIS転換を考えるなら、その技術知識は確かな差別化になる。ただし、IS実務の基礎を固めてから市場に出ることが重要で、いきなりフリーランスIS案件に挑むのはリスクがある。
HeydayではIT/SaaS系のIS案件を複数扱っており、案件紹介時には単価・稼働条件・商流の深さを最初に開示している。IS転換のキャリア相談も含め、まずは診断ツールで自分の市場価値を確認してほしい。