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フリーランスSEの手取りを
最大化するiDeCo月68,000円活用法

小川将司
小川将司代表取締役

Heyday代表小川将司が、FLパートナーへの節税アドバイス実務から執筆

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この記事でわかること

  • フリーランスエンジニアのiDeCo月上限は68,000円(正社員の3〜5倍)
  • 単価70万・90万・120万別の年間節税額シミュレーション
  • iDeCoと小規模企業共済の組み合わせ最適解と60歳ロックインリスク

この記事の対象: フリーランスエンジニアとして手取りを最大化したいSE、iDeCoの活用を検討しているフリーランス

Heydayでフリーランスパートナーの節税相談を受けていて毎回驚くのが、iDeCoの拠出上限を知らないまま月23,000円で止めているエンジニアが多いことだ。前職の正社員時代の上限額をそのまま使っている。

フリーランスエンジニアのiDeCo拠出上限は 月68,000円・年816,000円。正社員(企業年金なし)の月23,000円の約3倍、企業型DC加入者の約3.4倍だ。しかも掛金は 全額所得控除。単価90万のフリーランスが上限まで拠出すれば、年間の節税額は所得税・住民税合計でおよそ 24〜33万円に達する。

この記事では単価70万・90万・120万のSES常駐フリーランスを想定し、iDeCo月68,000円拠出時の手取りシミュレーションと、小規模企業共済との組み合わせ、60歳まで引き出せない流動性リスクの設計までを整理する。


1. なぜフリーランスのiDeCo上限は68,000円と高いのか

iDeCoの拠出上限は被保険者区分で決まる。フリーランスは 国民年金第1号被保険者で、月額68,000円・年816,000円が上限だ。

区分該当者iDeCo月上限
第1号フリーランス・個人事業主68,000円
第2号(企業年金なし)一般正社員23,000円
第2号(企業型DCあり)大企業正社員20,000円
第2号(DB+DC)公務員・大手12,000円
第3号専業主婦・主夫23,000円

なぜフリーランスだけ枠が大きいのか。フリーランスは厚生年金に入れないため、受け取れる公的年金は国民年金のみで正社員の半分以下になる。この 老後の不足分を自助努力で補えるよう、税優遇枠を厚く設計してある のが制度の趣旨だ。

注意点が2つある。1つ目は 国民年金基金・付加保険料との合算枠であること。国民年金基金に月20,000円拠出している人は、iDeCoは48,000円までしか入れられない。2つ目は 2027年から月75,000円・年90万円に引き上げ予定であること。本記事は2026年5月時点の68,000円ベースで計算する。


2. 単価70万・90万・120万の手取りシミュレーション

Heydayでフリーランスパートナーから一番聞かれる「実際いくら節税になるのか」を、SES常駐フリーランスの実勢単価3パターンで計算した。

前提: 客先常駐SES・経費率20%・東京都中野区40歳未満・青色申告特別控除65万円・基礎控除48万円・配偶者なし。

項目単価70万(年840万)単価90万(年1,080万)単価120万(年1,440万)
事業所得(売上−経費20%)672万円864万円1,152万円
国民健康保険料(概算)約78万円約97万円上限107万円
iDeCoなしの課税所得約460万円約633万円約911万円
iDeCo月68,000円拠出後の課税所得約378万円約551万円約829万円
iDeCoなしの所得税+住民税約97万円約171万円約298万円
iDeCo拠出後の所得税+住民税約73万円約138万円約265万円
年間節税額約24万円約33万円約33万円

※住民税10%固定、所得税は累進税率を適用した概算。社会保険料・経費・地域差で実額は変動する。

読み取れる3点

1. 単価90万・120万の節税額は同じ約33万円: 課税所得900万円超で所得税率33%帯に入るため。iDeCo拠出枠81.6万円×(33%+10%)≒ 35万円が理論最大値だ。

2. 単価70万でも年間24万円の節税: 「単価が低いとiDeCoは効かない」は誤解。月2万円の手取り増になる。

3. 実質負担は3〜4割引き: 単価90万の人が81.6万円拠出して33万円戻ってくれば、実質負担は48.6万円。残り33万は「税金として払うはずだったお金が老後資金として手元に残る」ことになる。


3. 小規模企業共済との組み合わせ最適解

iDeCoだけでは枠を使い切れない高単価フリーランスに有効なのが 小規模企業共済との併用だ。中小機構が運営する個人事業主向けの退職金制度で、月1,000〜70,000円・年最大84万円が 全額所得控除になる。iDeCoとは別枠だ。

項目iDeCo(第1号)小規模企業共済
月上限68,000円70,000円
所得控除全額全額
運用自己運用(投信)国が運用(予定利率1.0%)
引き出し原則60歳まで不可廃業時OK・任意解約は元本割れ
元本保証なし20年以上加入であり

両方を上限まで使うと年間 165.6万円が所得控除に。単価90万なら約66〜68万円、単価120万なら約71万円の節税が可能だ。

Heydayの推奨設計

  • 単価70〜85万: iDeCo月20,000〜30,000円・小規模企業共済月10,000〜20,000円。NISAで流動性確保。
  • 単価90〜110万: iDeCo月50,000〜68,000円・小規模企業共済月20,000〜40,000円。年間節税40〜55万円。
  • 単価120万以上: iDeCo月68,000円フル・小規模企業共済月50,000〜70,000円フル。年間節税65〜75万円。

ポイントは iDeCoを優先して埋めること。小規模企業共済は20年未満解約で元本割れ・iDeCoは60歳まで完全ロックという違いはあるが、所得控除のレバレッジに加え、自己運用で7%リターンを狙えるiDeCoの方が長期では有利になる。


4. 60歳まで引き出せないリスクをどう設計するか

iDeCoの最大のデメリットは 60歳まで引き出せないこと。フリーランスは収入が不安定で急な資金需要が発生しやすい。解は 「iDeCoに全振りしない」。流動性確保のための現金・NISAを残した上で、余剰資金をiDeCoに入れる。

Heydayが推奨する3階層設計

  1. 生活防衛資金(現金・普通預金): 月生活費の6〜12ヶ月分。単価90万・月生活費40万なら240〜480万円。
  2. 流動性のある中期運用(NISA): 新NISA成長投資枠240万・つみたて枠120万。いつでも現金化可能。法人化資金・住宅頭金・教育費など5〜10年スパンに対応。
  3. 老後専用(iDeCo + 小規模企業共済): 60歳まで触らない前提で、所得控除のレバレッジを最大化。

毎月の手取りから 「半年生きていける金額」を残してからiDeCo拠出額を決める。単価90万で月手取り50万・生活費35万なら、月15万を投資に回せる。iDeCo月68,000円・小規模企業共済月20,000円・NISA月60,000円という配分が現実的だ。

逆にやってはいけないのは「節税効果が大きいから上限まで」だけで決めること。単価70万で月68,000円フル拠出すると生活防衛資金を貯められない期間が長期化する。月20,000〜30,000円から始めて、収入が安定したら増額する方が長続きする。



5. 設定手順と証券会社選びのポイント

証券会社選びの3軸

iDeCoは運営管理機関を1つしか選べない。重要なのは以下の3点。

  1. 運営管理手数料が無料: SBI証券・楽天証券・マネックス証券は誰でも無料。地銀・信託銀行は月数百円取られ、30年積み立てで10〜20万円の差になる。
  2. 低コストインデックスファンドの有無: 全世界株(信託報酬0.06%前後)・S&P500(0.07%前後)が揃っているか。上記3社はいずれもカバー済み。
  3. 操作性: SBI・楽天はUI実績で安心感。マネックスはiFreeNEXT NASDAQ100が選べる。

加入手続きの流れ

  1. 証券会社のiDeCo申込ページから資料請求(2〜3日で郵送)
  2. 加入申出書に記入(第1号被保険者は事業主証明書不要)
  3. 書類返送後、国民年金基金連合会の審査に1〜2ヶ月
  4. 口座開設通知・拠出金額・運用商品設定
  5. 掛金引き落とし開始

第1号は事業主押印不要なので正社員より手続きがシンプル。ただし審査に1〜2ヶ月かかるので、思い立ったらすぐ動くのが正解だ。拠出額変更は 年1回のみ。最初は月20,000〜30,000円で始めて翌年に増額する形でもいい。

確定申告では 小規模企業共済等掛金控除として処理。年1回届く「払込証明書」を確定申告書に添付(電子申告なら番号入力)すれば完了する。


6. よくある質問

Q. 国民年金未納期間があるとiDeCoに入れる? 不可。iDeCoの加入条件は「国民年金保険料を納付していること」。免除・猶予期間中も基本的に拠出不可。

Q. 法人化したらiDeCoはどうなる? 第2号被保険者になり、月上限は23,000円(企業型DCなし)または20,000円(企業型DCあり)に下がる。既存拠出分は運用継続可能だが新規拠出は減額。法人化のタイミングはiDeCo枠との関係でも検討すべき。

Q. 小規模企業共済とiDeCoの優先度は? 所得控除のレバレッジはほぼ同じだが、 iDeCoは自己運用で7%リターンを狙える一方、小規模企業共済は予定利率1.0%。長期では差が大きく、Heydayの基本推奨は「iDeCo優先」。

Q. 受け取り時の税金は? 60歳以降に一時金(退職所得控除)・年金(公的年金等控除)・併用で受け取れる。30歳から30年加入なら退職所得控除枠は1,500万円で、運用元本+運用益がこの範囲ならほぼ無税。

Q. 2027年の上限引き上げで何が変わる? 第1号の月上限が68,000円→75,000円に引き上げ予定。年7万円の追加節税枠が生まれ、単価90万なら追加で約2.8万円の節税効果。


7. まとめ:iDeCo月68,000円は使わなければ損

フリーランスエンジニアのiDeCo拠出枠は正社員の3〜5倍。これは「フリーランスは厚生年金がない代わりに自助努力で老後を準備せよ」という制度設計上のメッセージだ。

  • 単価70万でも年間24万円の節税
  • 単価90万・120万なら年間33万円の節税
  • 小規模企業共済併用で年間65〜75万円まで到達

ただし60歳まで引き出せない流動性リスクは小さくない。生活防衛資金・NISAで流動性を確保した上で、余剰資金をiDeCoに振り向けるのが現実的だ。

Heydayでフリーランスパートナーと話していて感じるのは、節税の打ち手を知らないまま手取りを減らしている人が多いこと。iDeCo・小規模企業共済・経費・青色申告特別控除を全部使えば、単価が同じでも年間100万円以上の手取り差が生まれる。節税は「単価を上げる」のと同じくらい重要なレバーだ。

まずは月20,000〜30,000円から始めて、収入が安定してきたら上限まで増額する。これが多くのフリーランスエンジニアにとって現実的な入口になる。


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この記事の著者

小川将司
小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

Heyday代表小川将司が、FLパートナーへの節税アドバイス実務から執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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