「AZ-104を取ったら単価は上がりますか」
この質問に対して、私は毎回「単価そのものより、レンジのどこに入るかで考えたほうがいい」と答えている。抽象的に聞こえるので、実測データで説明する。
Heydayでは2026年3月から8月にかけて案件データベースに入った14,090件を技術タグ別に集計している。Azureタグは364件。単価上限の中央値は85万円で、AWS(80万円)を5万円上回っている。
ここだけ見ると「Azureのほうが得」に見える。だが分布全体を見ると、話は逆になる。
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Azure案件の実測データ——中央値は高い、しかしレンジが狭い
| 項目 | Azure | AWS | GCP |
|---|
| 案件数 | 364件 | 1,390件 | 174件 |
| 単価上限 p25 | 70万円 | 70万円 | 77万円 |
| 単価上限 中央値 | 85万円 | 80万円 | 90万円 |
| 単価上限 p75 | 90万円 | 90万円 | 110万円 |
| 単価上限 最大 | 150万円 | 220万円 | 140万円 |
| 単価下限 中央値 | 75万円 | 72万円 | 85万円 |
| リモート可率 | 69.3% | 73.3% | 84.0% |
| 直近3ヶ月の案件数 | 51件 | 165件 | 20件 |
(出典:Heyday案件データベース実測・2026年3月〜8月・N=14,090件。単価上限の記載件数はAzure 150件、AWS 521件、GCP 60件)
読み取るべきは中央値ではなく、p25とp75の幅だ。
- Azure:70万円 〜 90万円(幅20万円)
- AWS:70万円 〜 90万円(幅20万円)、ただし最大220万円
- GCP:77万円 〜 110万円(幅33万円)
Azureは p25 も p75 もAWSと同じで、中央値だけが5万円高い。つまり分布の真ん中が持ち上がっているだけで、上に抜ける余地はAWSと変わらない。しかも最大値は150万円で、AWSの220万円に70万円離される。
この構造は資格投資の判断に直結する。Azureで資格を取っても、単価分布の天井そのものが低いため、上振れリターンを期待しにくい。 代わりに単価下限の中央値75万円(AWS 72万円)が示すように、下を割りにくい安定性がある。
クラウド3社の総合比較はAWS・Azure・GCPどれを選ぶべきか、Azureエンジニアの職種としての単価・業種別特性はAzureエンジニアのSES月単価で扱っている。本記事は「認定資格を投資として見たときの回収可能性」に絞る。
AZ-104は「上げる資格」ではなく「落ちない資格」
Microsoft認定資格の体系は、おおむね次のように整理される。
| 資格 | レベル | 主な範囲 |
|---|
| AZ-900(Azure Fundamentals) | 基礎 | Azureの概念・課金・サービス概要 |
| AZ-104(Azure Administrator Associate) | 中級 | 仮想ネットワーク・ID管理・監視・バックアップの運用 |
| AZ-305(Azure Solutions Architect Expert) | 上級 | アーキテクチャ設計・可用性・コスト設計 |
| AZ-400(DevOps Engineer Expert) | 上級 | CI/CD・IaC・リリース管理 |
| SC-100(Cybersecurity Architect Expert) | 上級 | セキュリティ設計・ゼロトラスト |
AZ-104はこのうち中級にあたる。AWSでいえばSAAに相当するポジションで、Azure案件の要件に最も頻繁に登場する。
ではAZ-104を取ると何が起きるか。実測データの構造から言えることは、p25の70万円ラインを割らないための材料として機能するということだ。
Azure案件は364件しかない。AWSの1,390件と比べると4分の1で、直近3ヶ月では51件(AWSは165件)。この母数では、案件側が候補者を絞る際に資格を足切りに使いやすい。AZ-104を持っていないことが理由で候補から外れる——これがAzure領域で起きる最も現実的な損失だ。
逆に、AZ-104を持っていることで90万円(p75)に届くかというと、それは資格ではなく実務内容で決まる。同じ構造をAWS側で検証した記事がAWS SAA取得でSES単価はいくら上がるかなので、あわせて読んでほしい。
小川(代表)コメント
Azure案件を扱っていて一番よく見るのは、「Microsoft 365やEntra IDの運用から入って、そのままAzureインフラに広がった」というキャリアの人だ。この層はAZ-104を後追いで取ることが多い。実務が先で資格が後、という順番になっている。
そして、その順番の人のほうが単価が伸びている。理由は単純で、面談で「なぜその構成にしたか」を自分の言葉で説明できるからだ。資格から入った人は、ここで詰まる。
Heydayでは案件データベースの単価上限をエンジニア本人に開示している。Azureの中央値85万円という数字を見て「今の自分は下に外れている」と分かれば、次に何をすべきかも決めやすくなる。数字を渡さずに「頑張りましょう」と言うのは、経営者として不誠実だと思っている。
資格投資の費用対効果をどう計算するか
Azure認定資格は受験料がかかり、上級資格ほど学習時間も伸びる。投資として見るなら、次の3つで判断してほしい。
1. 今の単価が p25(70万円)を下回っているか
下回っているなら、AZ-104の投資回収は現実的だ。Azure案件の下限中央値は75万円で、p25の70万円を超えれば分布の下半分から抜けられる。60万円台で停滞している人にとって、10万円前後の改善は資格代を大きく上回る。
上回っているなら、AZ-104単体での上積みは期待しにくい。AZ-305やSC-100といった上級側、あるいは実務での設計主導実績のほうが効く。
2. Azure案件に到達できる経路があるか
資格を取っても、Azure案件を提案してもらえなければ意味がない。直近3ヶ月のAzure案件は51件で、月あたり17件前後。この流通量にアクセスできるかどうかが前提条件になる。所属先がAWS案件しか扱っていないなら、資格より先に環境を変えるほうが早い。
3. リモート条件を単価と同じ重みで見ているか
Azureのリモート可率は69.3%(リモート可否の記載があった199件が母数)。AWS 73.3%、GCP 84.0%と比べるとやや低い。Azure案件は情報システム部門・社内インフラ寄りの案件が多く、その分だけ出社要件が残りやすい。単価が5万円高くても、通勤が週5に戻るなら手残りは変わらない。
Azure資格を取る順番の現実解
| 現在地 | 次の一手 | 理由 |
|---|
| クラウド未経験 | AZ-900より先にAzure案件に入る | 基礎資格は単価に効かない。実務接点を作るほうが早い |
| Azure運用1〜2年 | AZ-104 | 案件要件に最も出てくる。足切り回避の効果が最大 |
| Azure運用3年以上・設計経験あり | AZ-305 | p75(90万円)を要求するときの説明材料になる |
| セキュリティ寄りに進みたい | SC-100 | セキュリティ/SOC/CSIRT案件(358件・上限中央値75万円)への横展開 |
| データ基盤に広げたい | Azureに閉じずデータ基盤/ETL(150件・上限中央値80万円)を視野に | 単価の伸びしろは隣接領域にある |
(資格の位置づけは案件票の要件記載傾向から整理。単価差を実測したデータではない)
各資格の詳細な扱われ方はAzureエンジニアのSES月単価に資格別セクションがあるので、そちらを参照してほしい。
「Azureか、AWSか、GCPか」を単価で決めるなら
実測データだけで判断するなら、こうなる。
- 案件数で選ぶならAWS(1,390件・直近3ヶ月165件)。待機リスクが最も低い
- 中央値の安定で選ぶならAzure(上限中央値85万円・下限中央値75万円)。下を割りにくい
- 上振れとリモートで選ぶならGCP(上限中央値90万円・p75 110万円・リモート84.0%)
GCPの資格側の検証はGCP PCAの市場価値とフリーランス単価に書いた。3つを並べると、Azureは「一番堅いが、一番伸びない」というポジションになる。安定を取るか伸びを取るかは、キャリアの段階次第だ。
よくある質問(FAQ)
Q. AZ-104を取ると単価はいくら上がりますか?
「取得で何万円上がる」という形では答えられない。Heydayの実測は案件側の提示単価であり、資格保有者を追跡したデータではない。Azure案件の単価上限は p25 70万円・中央値85万円・p75 90万円(2026年3月〜8月・N=14,090件)で、AZ-104はこの分布の下半分から抜けるための材料として働くと考えるのが実態に近い。
Q. AzureとAWS、どちらの資格を取るべきですか?
案件数を優先するならAWS(1,390件、Azureの約4倍)。単価の下限の堅さを優先するならAzure(下限中央値75万円 vs AWS 72万円)。ただしAzureは単価上限の最大が150万円でAWSの220万円に届かず、上振れの余地は小さい。今いる現場がどちらを使っているかで決めるのが最も合理的だ。
Q. AZ-900だけでも意味がありますか?
単価への効果はほぼ期待できない。Azureに全く触れたことがない状態でAZ-104の難易度が高すぎると感じる場合の足がかりとしては意味があるが、AZ-900の取得自体を目標にする価値は低い。可能ならAZ-104を直接狙ったほうが時間対効果は高い。
Q. Azure案件はリモートで働けますか?
実測ではリモート可率69.3%(リモート可否の記載があった199件が母数)。AWS 73.3%・GCP 84.0%よりやや低い。Azureは社内インフラ・情報システム部門寄りの案件が多く、出社要件が残りやすい構造がある。
Q. Azure案件は今後増えますか?
Heydayの実測では、直近3ヶ月のAzure案件は51件。6ヶ月累計364件に対して約14%で、大きな増減は見られない。同期間のAWSは165件(累計1,390件の約12%)、GCPは20件(累計174件の約11%)で、3社とも足元の流通比率は近い水準にある。
Q. AZ-305(Solutions Architect Expert)まで取る価値はありますか?
Azure案件のp75が90万円であることを踏まえると、AZ-305は「90万円レンジを要求するための材料」として位置づけるのが妥当だ。ただし単価上限の最大が150万円である以上、上級資格を積んでも天井は限られる。100万円超を狙うなら、Azure単体ではなく生成AI/LLM/RAG(上限中央値100万円)などの隣接領域と組み合わせるほうが現実的だ。
まとめ
- Azure案件は364件、単価上限中央値85万円でAWS(80万円)を上回る(Heyday案件データベース実測・2026年3月〜8月・N=14,090件)
- ただしp25 70万円〜p75 90万円とレンジが狭く、最大値150万円もAWSの220万円に及ばない
- レンジが狭い以上、Azure資格は「上振れを取る道具」ではなく「下限を割らない道具」
- AZ-104が最も効くのは、現在の単価が70万円(p25)を下回っている層
- 案件数はAWSの約4分の1。資格より先に「Azure案件に到達できる経路」があるかを確認したほうがいい
自分が今この分布のどこにいるのかが分からないなら、そこから確認したほうが早い。
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