SESエンジニアとして副業したい。でも会社の規則が気になって踏み出せない——そんな状況で検索した方に向けて、法的根拠と実務の両面から整理する。
結論を先に言う。就業規則に「副業禁止」と書かれていても、それが法的に完全に有効かどうかは別の話だ。 厚労省のガイドラインも、副業禁止を一律に認める立場ではない。
私はHeyday株式会社で営業サポートを担当している野沢だ。副業についての相談は定期的に受ける。「就業規則に禁止と書いてあるけど、待機期間中はどうなんですか?」という質問が特に多い。法律の話と実務の話が混在しているため、整理してみる。
SESエンジニアが「副業できるかどうか」は、一律に答えられない。自分がどのパターンに当てはまるかを確認することが先決だ。
就業規則に副業を禁止する条項がない会社では、副業は原則自由だ。会社が就業規則外の理由で副業を制限することは、法的根拠が薄い。
日本の労働法は労働者の私生活を原則として保護している。「仕事以外の時間に何をするか」は、原則として労働者の自由だ。ただし、後述する「本業への支障」「競業・情報漏洩」に該当する場合は例外になる。
多くの会社の就業規則には「許可なく他の会社に就職してはならない」あるいは「副業・兼業を禁ずる」という条項がある。
この条項が有効かどうかは、内容と状況による。後のセクションで詳しく解説するが、厚労省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2022年改定)は、副業禁止を一律に認める立場ではなく、むしろ副業を認める方向を推奨している。
近年、副業を明示的に認める会社が増えている。SES業界でも同様だ。Heydayでは、副業の可否について入社前の面談で必ず確認しており、副業可能な体制を整えている(野沢・相談ベース)。
副業OKのSES企業を選ぶことで、この問題自体を解消できる。選び方については後述する。
厚労省が2018年に策定し2022年に改定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、副業・兼業について以下の立場を示している。
副業・兼業は原則認める方向で考えるべき——これがガイドラインの基本方針だ。モデル就業規則も2018年に改定され、従来の「副業禁止」規定から「副業・兼業を認める」条項に変更された。
ただしガイドラインは「指針」であり、法律ではない。強制力はなく、違反しても罰則はない。
裁判例や法的見解を参照すると、就業規則の副業禁止規定が有効と認められるのは、以下の3条件に該当する場合だ。
条件1:本業の業務に支障をきたす
副業のせいで本業の労働時間中に居眠りをする、業務のパフォーマンスが著しく低下するといった状況が実際に生じている場合。「可能性がある」だけでは不十分で、実際の支障が求められる。
条件2:競業にあたる
本業の会社と競合する事業・業務を副業として行っている場合。SESエンジニアの場合、本業の会社と直接競合するSES会社の設立・参画などが該当しうる。
条件3:会社の信用・秘密情報を損なう
本業の顧客情報・技術情報を副業に流用している、または副業の内容が会社の評判を著しく損なうような場合。
逆に言えば、上記3条件に該当しない副業であれば、就業規則に禁止条項があっても懲戒解雇等の重い処分は難しいとされている。
副業を理由とした懲戒解雇について争われた裁判例では、単に就業規則違反だけでは解雇が認められず、「業務への実害」「信頼関係の破壊」の有無が判断基準になっている(マンナ運輸事件、京都地裁2012年等)。
ただし、これはあくまで過去の裁判例の傾向であり、個別の事例によって異なる。副業前に就業規則を確認し、可能であれば会社に相談することが現実的な対処だ。
SESエンジニアには「待機期間」(案件と案件の間の期間)がある。待機期間中の副業は特に注目されるトピックだ。
待機期間については、SES待機期間の完全ガイドで詳しく解説している。
**労働基準法第26条(休業手当)**は、使用者の責に帰すべき事由による休業に対して、平均賃金の60%以上の手当を支払う義務を課している。
待機期間は、案件が決まらない状態であり、実質的に「稼働できない状態」だ。労働者は就労の義務を果たせない状況に置かれている。この状態で会社が「副業もするな」と命じることの正当性は、法的に薄い。
実際に就業規則の副業禁止規定は「就業している時間帯に他社で働くことの禁止」という解釈が成り立つ。待機期間中は「就業していない」ため、規定の適用範囲外という解釈も成り立つ。
一方で、注意が必要な点もある。
- 会社が待機期間中も「いつでも案件に入れる状態にしておくこと」を求めている場合、副業で日程が埋まると問題になりうる
- 就業規則の副業禁止規定の文言が「在職中は一切副業不可」となっている場合、待機中も含まれると解釈される可能性がある
- 待機期間中の副業で得た収入が、会社の業務と競合する内容であれば問題になりうる
現実的な対処として、待機期間中の副業を始める前に担当者に確認することを勧める。 「副業していいですか?」と直接聞くことで、後のトラブルを防げる。
「副業がバレる」のを心配している方は多い。バレる主な原因と、対処法を整理する。
副業がバレる最大の原因は、住民税の「特別徴収」だ。
会社員の住民税は、原則として会社が給与から天引きして市区町村に納付する(特別徴収)。副業収入があると、翌年の住民税の金額が本業の給与だけから計算した場合より増える。会社の経理担当がこれに気づくことでバレる。
確定申告の際に、副業分の住民税を「普通徴収」(自分で直接納付)に設定することで、会社への通知を避けられる。
確定申告書の「住民税・事業税に関する事項」欄で「自分で納付」を選択する。ただし、給与所得が複数ある場合は完全に分離できないケースもあるため、税務署または税理士への確認を勧める。
副業先でも社会保険に加入する場合(週20時間以上・2ヶ月超の見込みなど)、「二重加入」の状態になり、主たる事業所(本業)に通知が届く仕組みになっている(2022年10月から106万円の壁が拡大)。
副業を個人事業主として行う場合や、週20時間未満の場合は社会保険への加入義務がなく、この経路でのバレは起きにくい。
就業規則を読んでも、副業に関する規定がどこにあるかわかりにくいことがある。確認ポイントを整理する。
副業関連の条項は、以下の名称の章・条項に含まれていることが多い。
- 「服務規律」「服務規程」
- 「兼業・副業の禁止(または許可)」
- 「競業避止義務」
- 「情報管理・秘密保持」
「副業・兼業の禁止」条項では、「会社の許可を得ずに」 という文言があるかどうかに注目する。「許可制」であれば、申請することで認められる余地がある。「一切禁止」であれば許可申請の余地がない可能性がある。
許可制の場合、許可の申請手順・基準が書かれているかも確認する。書かれていない場合、申請基準が不明確で裁量が曖昧になっている。
会社は労働者に就業規則を開示する義務がある(労働基準法第106条)。会社の担当者か総務部門に「就業規則を確認したい」と伝えれば、開示を求めることができる。
副業を巡るトラブルを根本から避ける方法は、副業OKを明示しているSES企業を選ぶことだ。
SES企業との面談・商談の場では、以下の質問で副業への姿勢を確認できる。
「副業・兼業についてのポリシーはどうなっていますか?」
この質問をした時の回答の種類と意味:
- 「原則禁止」→ 就業規則で禁止している可能性が高い
- 「禁止はしていないが、届出が必要」→ 許可制。申請すれば認められる
- 「自由にやってもらっている」→ 副業友好的な環境
- 「特に規定なし」→ 就業規則に条項がない。原則自由
政府の「副業・兼業の促進」施策に加え、エンジニアの採用競争が激しくなっている背景から、副業を認めるSES企業が増えている。
Heydayでも副業の可否は入社前の確認事項の一つだ。待機期間中に他のスキルを磨くことや、土日を使って副収入を得ることを制限することは、エンジニアのキャリア形成を妨げると考えている。
SES企業の選び方全般については SES企業の選び方完全ガイドも参照してほしい。
副業より先に、まず自分の市場単価を確認してほしい
副業で収入を増やしたいと思っているなら、本業の単価が市場水準に達しているかを確認することが先決だ。単価交渉や転職のほうが、副業より時間対効果が高いケースも多い。
案件例を見てみる →
キャリア相談をする →
A. 法的には就業規則の副業禁止規定が待機期間中に及ぶかどうかは解釈次第だ。ただし、競業に当たらず、本業への支障がない副業であれば、実際に問題とされるケースは少ない。担当者に確認できる環境であれば、確認してから始めることを勧める。
A. 就業規則違反だけで即懲戒解雇は、過去の裁判例では認められにくい傾向がある。「業務への実害」「競業」「信頼関係の破壊」といった実質的な損害が問われる。ただし、会社との関係や就業規則の内容によって異なるため、個別に判断する必要がある。
A. 副業の所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要だ(給与所得者の場合)。20万円以下であれば確定申告は不要だが、住民税の申告は別途必要な場合がある(金額を問わず)。詳細は税務署または税理士に確認してほしい。
A. 技術的には可能だが、本業のSES会社が扱う案件と競合する可能性がある点に注意が必要だ。フリーランスとして同業務を請け負う形は競業と見なされるリスクがある。ライティング、技術ブログ運営、教材制作のような周辺業務のほうが問題になりにくい。
A. 就業規則の内容と副業の内容によって異なる。多くの場合、まず口頭または書面での注意・指導がある。その後、就業規則違反として戒告・減給・停職といった段階的な処分に至ることがある。競業・情報漏洩が伴う場合は懲戒解雇に至るケースもある。
A. 副業が長期的に続ける計画であるなら、副業を認めている会社への転職は合理的な選択だ。会社のポリシーを変えさせるより、最初からポリシーが合っている会社を選んだほうが労力が少ない。ただし転職はコストもある。現職での副業が「待機期間だけ」や「軽量な副収入」であれば、転職を検討する前に会社への確認・相談が先だ。
A. フリーランスになれば、特定の会社の就業規則に縛られないため、複数の案件を並行して受けることが自由になる。ただし、フリーランスへの移行には別のリスク(収入の不安定・社会保険・税務)が伴う。SESからフリーランスへの移行を検討している方は SESからフリーランスへの転身ガイドを参照してほしい。
A. 就業規則が許可制の場合、正式に副業の許可を申請する。申請時には「競業しないこと」「本業に支障が出ないこと」「情報管理を徹底すること」を明示すると認められやすい。「禁止」と書かれていても、理由と内容を説明して上司に相談することで個別に認められるケースもある。
SES副業の規則について要点をまとめる。
就業規則の副業禁止の有効性:厚労省ガイドライン(2022年改定)は副業推進を基本方針とする。禁止規定が有効となるのは「業務への実害」「競業」「信頼関係の破壊」が伴う場合に限られる傾向がある。
待機期間中の副業:就業規則の副業禁止規定が待機期間に及ぶかは解釈次第。競業・情報漏洩に該当しない副業であれば、リスクは低いことが多い。担当者に確認できるなら確認してから始めよう。
バレる主な原因と対策:住民税の特別徴収が主因。確定申告で普通徴収を選択することで回避できる。社会保険は週20時間未満・個人事業主形態で加入義務がなくなる。
根本的な解決策:副業OKを明示しているSES企業を選ぶことで、この問題自体を回避できる。面談での確認が有効だ。
まず自分の就業規則を確認し、会社に相談できる環境であれば相談することを勧める。「副業したいが規則がわからなくて踏み出せない」という状態が一番もったいない。
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参考: