AI・スキル10独自データあり

『AIが使えない』で
SES契約を切られた実例

小川将司
小川将司代表取締役

Heyday代表小川将司が、客先からのフィードバックと契約更新判断の経営者実務から執筆

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この記事でわかること

  • 2026年のSES現場でAI活用度が契約更新評価軸に入り始めた実態(Heyday観察)
  • AIが使えないことで切られる4つのパターン(実例ベース)
  • 契約継続のための最低限のAI活用スタートライン(具体的な5ステップ)

この記事の対象: AIツールをまだ使えていないSESエンジニア、契約更新が不安な30代・40代エンジニア

「来月でこのメンバーは入れ替えてください」——客先のリーダーから、こう告げられた朝を覚えている。理由は「AIを使う前提のチーム編成に切り替えるから」。スキル不足ではない。勤務態度でもない。AIを業務で使えるか否かが、契約継続の評価軸に入り始めたということだ。

私はHeyday株式会社代表の小川将司だ。SES事業6年・取り扱った案件は80件超。本記事では2026年に入って現場で起き始めている「AIが使えないことを理由にした契約打ち切り」を、経営者として観測している立場から書く。

結論を先に書く。2026年のSES現場でAI活用度が契約更新評価軸に入り始めたのは事実だ。ただし求められているのは難しいAI構築スキルではなく、「日常業務でAIを当然のように回せるか」というスタートラインだ。越えていれば切られることはほぼなく、越えていないと本人のスキルに関係なく評価されにくくなる。

Heydayで実際にあった「AI使えない→切られた」3ケース(匿名)

固有名詞・技術スタック・業界は加工しているが、Heydayで2026年Q1に観測した事例だ。

ケース1:Java保守・経験10年・契約更新断られたAさん(30代後半)

10年の保守経験を持つJavaエンジニア。技術品質は高く、面談での印象も悪くなかった。ところが、6ヶ月後の更新タイミングで客先から「次の更新は見送りたい」と連絡が来た。

理由は「指示書通りには動いてくれるが、AIを使った効率化提案が一切出てこない」。同じチームの若手がCopilotで生産性を上げ、コードレビュー前にClaudeで一次チェックを通している中で、Aさんだけ従来のやり方を変えなかった。スキル不足ではなく、「Aさんを使い続けるよりAIに慣れた人にスイッチした方がチーム全体の生産性が上がる」という経済合理性の判断だ。

ケース2:インフラSE・経験7年・現場交代要請が出たBさん

AWS構築・運用案件。技術的にはちゃんとしているが、問題は客先がAIで何をしようとしているかを把握していなかったことだった。

客先がAmazon Q DeveloperやBedrockを業務に組み込み始め、運用チームにも「AI前提のアラート対応・ログ分析」が降りてきていた。Bさんは従来通りCloudWatchで対応していたが、隣の若手はBedrockに障害ログを投げて要約させてからエスカレーションする運用に切り替えていた。客先マネージャーから「Bedrock前提の運用にしていくので、ついてこれる人に入れ替えたい」と相談が入り、別案件に転換した。

ケース3:要件定義の上流SE・経験15年・コマ落ちしたCさん(40代)

要件定義の現場で技術的AI実装スキルは問われないが、契約延長時に客先から「議事録・要件整理ドキュメントをClaudeで一次ドラフト化してから打ち合わせに持ってきてほしい」と要望が出た。

Cさんは生成AIに「使う必要性を感じない」スタンス。15年の経験で培った要件整理スキルがあるからだ。ただ客先からすると「議事録30分」が「AIで5分」に短縮できる。同じ役割の社内メンバーがAIを使う側で、最終的にCさんの工数を半分に削減する形で更新となった。AIを使わない人の単価・稼働時間が削られていく現象だ。

客先が変わった:AI評価軸が入るまで

1年前と比べて変わった点が3つある。

1. 契約面談時にAI活用度を直接聞かれる。「Copilotは日常的に使っていますか」「ChatGPTを業務でどう使いますか」が必ず入るようになった。

2. 生産性目標がAI込みで設定される。客先のチーム目標が「AI込みで前年比130%」のように設定され、AIを使わないメンバーが足を引っ張る構図ができている。

3. チーム単位のリプレースが議題になる。「AI前提のチームに作り変えたいので全員のスキルマップ再評価したい」という相談が増え、個人プレーで突破できない変化が起きている。

引き金は経営判断ではなく現場の生産性差だ。リーダーが「AI使う人と使わない人で出力が2倍違う」のを目の当たりにして、入れ替えを動かしている。

AIが使えないで切られる4パターン

パターン1:直接効率化要求型(最多)

ケース1のAさんがこれ。チームでAI活用が標準になり、AIを使わないメンバーの相対生産性が見劣りして契約更新が見送られる。スキル不足では切られない人がこの理由で切られる点が特徴で、2026年特有のパターンだ。

パターン2:客先AI戦略への対応不能型

ケース2のBさん。客先上位層が「Bedrock前提運用」「Copilot前提開発」のような戦略を打ち出し、対応できないメンバーが選別される。AIに少しでも慣れていれば「キャッチアップしながら走る」選択肢があるが、まったく触れていないと初期の壁が高すぎて間に合わない。

パターン3:上流工程での生産性ギャップ型

ケース3のCさん。要件定義・設計・ドキュメントはAIで効率化余地が極めて大きい工程で、使う人と使わない人の出力差が極端に開く。実はコーディングよりドキュメント系の方がAI活用効果が分かりやすく、ここを使わない上級SEは「若手+AI」の組み合わせに置き換えられるリスクが高い。

パターン4:単価維持に対する説明力欠如型

「即切り」ではなく「単価交渉で負ける」形。更新時に「単価を上げたい」と打診したとき、客先から「AI使ってる人と同じ単価では出しにくい」と言われる。半年で増えているのが「AIで30分の作業を3時間かけている人に、月100万円は出しにくい」という客先の本音だ。

「AI使えない」の定義:何ができれば大丈夫か

客先が求めるハードルは想像より低い。**「AI研究者レベル」ではなく「日常業務でAIを当然のように回す姿勢」**が最低ラインだ。

具体的に、客先が「この人はAI使えてる」と判断する基準を整理する。

  1. コード生成系:CopilotまたはCursorを開発エディタに常駐させ、「最初の叩き台をAIに出させて自分で修正する」ワークフローが回せている
  2. ドキュメント系:議事録・設計書・仕様書のドラフトをClaudeやChatGPTで作っている。客先のセキュリティポリシーで使えない場合は社内代替AIで同じことをやっている
  3. 質問・相談系:技術的に詰まったら、StackOverflowを開く前にAIに聞いて検証する習慣がある(AIを最初の同僚として扱える状態)
  4. 業務改善提案:自分の担当業務で「ここはAIで効率化できそう」というポイントを1つでも提案・実行した経験がある

これらを満たしていれば、現時点で「AI使えない」を理由に切られる可能性は極めて低い。逆に、4つとも該当しないと契約期間中に評価が下がるリスクが高い

最低限のAI活用スタートライン5ステップ

「明日から何をすればいいか」を5ステップで書く。週末2〜3時間の投資で全部できる。

ステップ1:開発エディタにAIを入れる(30分)

VS CodeにGitHub Copilotを入れる、もしくはCursorに乗り換える。月額約20米ドルだが自費投資の価値はある。客先のセキュリティポリシーで業務PCに入れられない場合は、個人PCで使い始めて慣れる。重要なのはエディタにAIが「常駐」している状態を作ること。タブで切り替える運用は続かない。

ステップ2:1日1回、AIに「業務の質問」を投げる

「○○でこういうエラーが出てる」「Aパターン・Bパターンどっちが妥当か」など、いつもなら同僚に聞く質問をAIに投げる。2週間で何を聞けば何が返るかの肌感がつく。質問フォーマット(背景・現状・試したこと・聞きたいこと)を整えると精度が大きく上がる。

ステップ3:議事録・設計書のドラフトをAIに作らせる(週1回)

議事録を書き起こしてClaudeに「決定事項とToDoを整理して」と投げる。設計書も要件メモを渡して「設計案を3つ書いて」と頼む。ドキュメント系で1つだけAI化するところから始める。3回繰り返すと「AIに任せた方が早い」と感じる工程が見つかる。

ステップ4:業務でAIで改善できる箇所を1つ見つけて提案する

1ヶ月続けると「ここはAIで効率化できる」ポイントが見えてくる。それを客先リーダーや自社営業に「こういう改善をやってみたい」と提案する。提案行動は客先評価で大きい。「ただ使ってる人」と「使って改善提案までする人」では、後者が明確に高評価される。

ステップ5:四半期ごとに新しいAIツールを1つ試す

年4つは新しいAIツールに触れる。Claude Code、Cursor、Bedrock、AIエージェント系SaaS——どれでもいい。「少なくとも1つは新しいツールに触れる年間スケジュールを持つ」だけで、AIへのハードルが大きく下がる。

経営者として最後に伝えたいこと

AIを使う層と使わない層の格差はこれから2〜3年でさらに広がる。今動けばまだ追いつける。3年後だとスタートラインに立つこと自体が難しくなる可能性がある。

Heydayで切られたエンジニアはAIを学び始めて次の現場で復活している。ケース1のAさんは別案件に移ってから3ヶ月でCopilotを使いこなし、いまは単価が以前より上がっている。「切られた」が「終わり」ではなく、ちゃんとやり直せる業界であることは強調しておきたい。

まとめ

  • 2026年Q1からAI活用度が契約継続の評価軸に入る客先が増えている
  • 切られるパターンは「直接効率化要求型」「客先AI戦略対応不能型」「上流工程ギャップ型」「単価維持失敗型」の4つ
  • 求められているのは「AI研究者スキル」ではなく「日常業務でAIを回す姿勢
  • 最低ラインは「エディタにAI常駐・毎日AIに質問・週1ドキュメント自動化・改善提案・四半期に新ツール」の5ステップ
  • いま動けば追いつける。動かないと格差は広がる

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まとめ

2026年のSES現場で『AI使えないで切られる』は珍しいケースではなくなりつつある。ただ、必要なのは難しいAI構築スキルではなく、日常業務でAIを当然のように回す姿勢だ。Copilot・Claude・ChatGPTを業務で使う最低限のラインを越えれば、契約継続のリスクは大きく下がる。

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この記事の著者

小川将司
小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

Heyday代表小川将司が、客先からのフィードバックと契約更新判断の経営者実務から執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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