「週5フルでフリーランスを続けるのはもう体力的にきつい。週4にできないか」——独立して2〜3年経ったフリーランスエンジニアが必ず一度は抱える疑問だ。検索すると週4案件サイトや「週4でも稼げる」と言うエージェントメディアが大量に出てくるが、**「単価が実際に何%下がるか」「週4案件は本当に見つかるか」「結局実収入はいくらになるか」**を実例で答えた記事はほぼない。
私はHeyday株式会社というSES企業を経営し、SES正社員から独立したフリーランスエンジニア(以下FLパートナー)の稼働支援を行っている。社内の週5→週4転換事例を見ると、単価は確かに下がるが、その下がり方には明確な相場とロジックがある。この記事では、Heyday FLパートナーの週4転換実例を基に、検索者が本当に知りたい「週4の現実」を整理する。
1. 週4転換で単価は何%下がるか — Heyday実例で見る相場
結論から言う。週4転換時、月額単価は週5比で-10〜-20%下がるのが相場だ。日割り計算(×0.8)で「20%下がるはず」と思っている人が多いが、実際はそれよりやや小さく収まるケースが多い。
Heyday FLパートナー週4転換実例(5名分・匿名化)
| ケース | 技術スタック | 週5時の月単価 | 週4時の月単価 | 減少率 |
|---|
| A | Java/Spring・上流工程 | 85万円 | 72万円 | -15% |
| B | AWS/Terraform・インフラ | 90万円 | 78万円 | -13% |
| C | React/Next.js・フロント | 75万円 | 60万円 | -20% |
| D | PM・要件定義 | 100万円 | 85万円 | -15% |
| E | Python/データ分析 | 80万円 | 64万円 | -20% |
5名平均で**-16.6%**。日割り換算(-20%)よりやや少ない減少幅に収まる傾向がある。これはなぜか。
なぜ単純な日割り(-20%)にならないか
クライアントが週4稼働を受け入れるとき、内部で起きているのは「週4日でも週5日と同じ責任範囲を期待する」という調整だ。タスクの完了責任・コミュニケーション窓口としての役割は週4日でも変わらないため、実質的な負担は4/5(80%)ではなく85%程度になることが多い。これが週5比-15%前後に落ち着く理由になる。
ただしフロントエンドや純粋な実装ロールではタスクを切り出しやすく、日割りに近い-20%まで下がる傾向がある。PM・上流工程・インフラ運用のように責任範囲が時間に比例しないロールは-10〜-15%で収まりやすい。自分のロールがどちらに近いかで減少率の予想は変わる。
「単価は下げず週4にできる」は基本的に幻想
エージェントの中には「週4でも単価据え置きの案件があります」と言うところもある。Heydayの観測範囲では、これが成立するのは役員報酬・技術顧問・スポットコンサルのような時間に対する成果が極端に高い案件のみだ。SES契約のフロー上で「同じ単価で週4」を期待するのは現実的ではない。最初から「-15%は受け入れる」前提で交渉するほうが、案件選択肢は格段に広がる。
2. 週4案件は本当に見つかるか — 見つけやすさの実態
次の疑問は「単価が下がってもいいから、そもそも週4案件は存在するのか」だ。結論を先に言うと、週4案件は存在するが、週5案件の1/5〜1/10程度しかない。求人ポータルで「週4」フィルターをかけて表示される件数の感覚値だ。
週4が見つかりやすい技術スタック・ポジション
Heydayが日々BP配信を受けて観測している中で、週4稼働OKの比率が高いカテゴリは以下になる。
見つかりやすい(週5案件のうち15〜25%が週4OK)
- フロントエンド(React/Next.js・Vue)の追加メンバーポジション
- データ分析・データエンジニア(dbt・BigQuery・Snowflake)
- AI/ML周辺(LLMアプリ実装・データパイプライン)
- 技術顧問・アーキテクト(上流相談ロール)
- スタートアップ初期フェーズの開発ヘルプ
見つかりにくい(週5案件のうち5%未満が週4OK)
- 大手SIer配下のSES現場(プロパー側が「週5前提」で運用)
- 金融系(特に銀行・損保のコア系)
- インフラ運用・SRE(24/7オンコール体制)
- スクラムチームのスクラムマスター・テックリード
「週4だから案件がないのではない」のではなく、自分のロール × 業界で週4OK率は大きく変わる、というのが実態だ。
週4案件が多い発注主の特徴
Heydayで実際に週4案件を出してくる発注主には共通点がある。
- スタートアップ・中堅Web系: 採用予算は限られているが手は欲しい。週4×2人体制で1.6人月の稼働を確保したい
- DX推進部門の社内開発: 社員エンジニアが少なく、外部支援を週4で薄く長く使いたい
- 技術顧問枠(月数日)と本番開発枠(週4)のセット: 同じエンジニアに2ロール任せたい
- 業務委託契約に切り替え済みの企業: 雇用契約と業務委託の使い分けが社内に定着している
逆に従来型のSIer・SESプライム企業は基本的に週5前提で動いているので、ここで週4案件を探すのは効率が悪い。週4を志向するなら、最初から発注主の業界を絞って探すのが正解になる。
週4案件の単価帯
Heyday観測では、週4案件として出てくる単価帯は月50〜80万円が中心。週5比で見れば月60〜95万円帯に相当する。週5で月90万円超を取れていたシニアレベルが週4に転換しても、案件の中央値は月70万円台に集まる印象だ。月単価100万円超の週4案件はかなりレアで、技術顧問・PM・テックリード級でないと現れにくい。
3. 週4で実収入を下げないための単価交渉術
ここからが本題だ。「単価は-15%下がる」「案件数は週5の1/5」と聞くと萎縮するが、設計次第で実収入は週5時から大きく下げずに済む。Heyday FLパートナーが実際に使っている交渉術を整理する。
交渉術1: 責任範囲を明確に切る
週4転換時の最大の罠は「週4日になったが、週5日分の責任は変わらない」状態に陥ることだ。これを避けるため、契約時に**「週4日稼働=タスク量も4/5」**を文書で明示する。具体的には以下を契約書または覚書に入れる。
- 稼働日: 月〜木曜(金曜は稼働なし)
- 金曜日のSlack・Teams対応は不要(緊急時のみ別途協議)
- ミーティング設定は稼働日内に限定する
- 金曜起点の納期設定は避ける
これだけで実質負荷が4/5に近づき、週4時の単価-15%が「割に合う」ラインに調整できる。
交渉術2: 並行2案件で実収入を埋める
週4×1案件(月70万円)よりも週4×1+週1スポット顧問(月15〜30万円)で構成すると、合計月85〜100万円で週5フル時に近い水準になる。Heyday FLパートナーの実例では、週4でメインのSES案件+週1で技術顧問・コードレビュー・スポット相談を受けることで、月単価85万円を月20万円のスポット顧問で補い月105万円まで戻したケースがある。
このパターンの利点は、(1)スポット顧問は時給単価が高い(時給1〜2万円)、(2)責任範囲がアドバイザリーに限定されるため精神負荷が小さい、(3)スポット顧問は法人売上に切り出してマイクロ法人の事業に充てやすい、の3点。詳しくはフリーランスエンジニアの法人化タイミングで扱っている。
交渉術3: 単価ではなく「質的条件」で取り返す
単価-15%の代わりに以下の条件を取りに行くのも有効だ。
- フルリモート確定(出社日数ゼロ)
- 稼働時間裁量(10〜18時の中で柔軟)
- 月の稼働時間下限を低めに設定(140時間→128時間など)
- 契約期間を6ヶ月以上に固定(探し直しコスト削減)
特に「契約期間6ヶ月固定」は週4のリスク——「週4だと案件探しに時間がかかる」——を相殺してくれる。週4で月単価-15%でも、案件探しの空白期間がゼロなら年収は週5時を上回ることもある。
交渉術4: 実績ありのエージェント1社に絞る
週4案件は「エージェントの担当者がクライアントに『この人なら週4でも』と説明できるか」で見つかるかどうかが決まる。週5案件のように検索ヒットでマッチングするわけではない。過去2〜3案件で関係構築できたエージェント1社に「週4で探してほしい」と伝えるのが最も効率的だ。複数エージェントを使い回すと、どこも本気で動いてくれないという逆説がある。
4. 週4転換を「成功させる人」と「収入が崩れる人」の違い
週4転換の成功確率は技術スタックだけでは決まらない。Heydayでパートナーを見ていて気づいた成否を分ける要因は以下になる。
成功する人の3条件
- 稼働時間が減った分の使い道が明確: 副業・学習・育児・健康維持のいずれかに具体的にコミットしている
- 生活費を下げる準備ができている: 月額固定費を見直し、月収-15%でも生活が回る家計設計
- 2案件並行を前提にしている: 週4×1案件で完結せず、週1のスポット顧問・技術記事・教育コンテンツなどを組み合わせる設計
収入が崩れる人の3パターン
- 「週4にしたら時間ができるはず」と漠然と転換: 結局その時間でも稼げず、月収が-15〜-20%だけ純減する
- 単価交渉を端折る: クライアント言い値の-20%を受けて、責任範囲は週5のままになる
- エージェント乗り換えを繰り返す: 週4案件は信頼関係依存なので、毎回新規エージェントだと探し直しコストが累積する
週4転換は「働き方の選択」だが、同時に家計と案件設計の再構築でもある。ここを軽視すると、ライフスタイルだけ変わって収入が崩れるリスクは確実にある。
週4が向いている人・向いていない人
Heyday相談現場の感覚値では、週4が向いているのは(1)独立3年目以降で技術ブランドができている人、(2)既に副業収入が月10万円以上ある人、(3)育児・介護・大学院など稼働時間を圧縮する正当な理由がある人、(4)年収700〜900万円帯で「+100万円より時間が欲しい」と考えている人。
逆に向いていないのは(1)独立1年目で実績が薄い人、(2)案件継続が不安定な業界(金融コア系・大手SIer配下)にいる人、(3)月単価60万円以下の人(週4にすると月50万円割れで生活が成立しない)。**月単価70万円が「週4を選択肢に入れていい最低ライン」**だと考えていい。
5. 週4転換を意思決定するための判断フレーム
最後に、「週4にすべきか」を意思決定するためのチェックリストを置いておく。以下のうち4個以上にYesで答えられる人は週4転換の準備ができていると考えていい。
3個以下なら、週4転換よりも先に週5のまま単価交渉で月単価を10万円上げるほうが投資対効果は高い。週4は「単価をピークに乗せた人がライフスタイルに最適化するフェーズ」の選択肢であって、独立直後のキャッシュ不足を埋めるための手段ではない。
正社員からフリーランスへの転向自体を検討している段階ならSESからフリーランス独立の判断基準、独立後の単価設計はフリーランスエンジニアの単価アップ完全ガイドで扱っている。
まとめ
週4フリーランスエンジニアの現実は以下になる。
- 単価は週5比で-10〜-20%下がる(Heydayパートナー5名平均-16.6%)
- 週4案件は週5の1/5〜1/10しかない。フロント・データ・AI・技術顧問が見つけやすい
- 実収入を下げないには責任範囲を契約で切り、並行2案件で構成し、エージェント1社と関係を築く
- 月単価70万円が週4を検討していい最低ライン。それ未満なら先に単価を上げる
週4は「サボりたい人の逃げ道」ではなく、「単価をピークに乗せた人が時間を取り返す投資」だ。検索結果の「週4でも稼げる」記事を真に受けず、自分の単価帯・技術スタック・家計設計を冷静に見て判断してほしい。
Heydayでは週4勤務希望のFLパートナーから随時相談を受けている。「自分のロールで週4はどれくらい現実的か」「単価はいくらまで下げて受けるべきか」を具体的に話したい場合は、診断ツールから状況を入力してもらえれば、案件相場と週4の見通しを返す。