キャリア・転職16独自データあり

SES転職でエージェントを
使うべきでない5つのケース

小川将司
小川将司代表取締役

SES事業6年・採用担当と転職支援の両方を経験した経営者視点で執筆

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この記事でわかること

  • 転職エージェントを使わない方がいいケースは明確な5パターンがある
  • エージェントが「おすすめ」する理由は必ずしもあなたの利益ではない
  • SES→SES転職にエージェントが向かない構造的な理由
  • エージェントを使う場合・使わない場合の最適な判断基準

この記事の対象: 転職エージェントへの不信感を持っているSESエンジニア、エージェントなしで転職を検討している人

この記事を書くと、Heydayに転職相談しにくる人が減るかもしれない。

それでも書く。SESエンジニアに正直な情報を届けることが、このメディアの存在意義だからだ。

「転職エージェントは使うべき」という記事をGoogle検索すると大量に出てくる。その多くはリクルートエージェント・doda・マイナビエージェントといったエージェント自身、あるいはエージェントの紹介料で収益を上げているアフィリエイトサイトが書いている。利益相反の構造上、「使わない方がいい」とは絶対に書けない。

私はHeyday株式会社の代表として、SES会社の経営者として、年間数十人のエンジニアの転職を支援してきた立場から言う。転職エージェントを使うべきでないケースは、明確に存在する。

そして残念ながら、SESエンジニアの転職はその「使うべきでないケース」に当てはまることが多い。


まず正直に言う:転職エージェントは便利だ

批判だけでは誠実ではない。転職エージェントには本物のメリットがある。

求人数の規模: リクルートエージェントは非公開求人を含め数十万件規模の求人を保有している。自力で探せる数ではない。

面接調整の代行: 複数企業との面接日程調整を全部やってもらえる。現職と並行しながら転職活動する人には実質的に助かる。

書類添削: 職務経歴書の書き方で落とされるリスクを大幅に減らせる。

年収交渉の代行: 「自分では言いにくい」交渉を代わりにやってもらえる。

企業情報の非公開部分: 企業の内情(残業実態・人間関係・評価制度)を担当者が把握していることがある。

これらは本物のメリットだ。特に「転職活動が初めて」「書類選考で落ちまくっている」「どの会社を受けるべか見当もつかない」という人には有効に機能する。

では、なぜエージェントを使わない方がいい場合があるのか。


しかし、この5ケースでは使わない方がいい

ケース1: SES→SES転職の場合

これが最も重要なポイントだ。SESからSESへ転職するときに転職エージェントを使うと、構造的に不利になる可能性がある。

転職エージェントの収益モデルを理解する必要がある。エージェントは採用が決まると、採用企業から**内定者の初年度年収の30〜35%**を成功報酬として受け取る。年収600万円の採用なら、180〜210万円がエージェントに払われる計算だ。

この費用を誰が最終的に負担するか、考えてほしい。

採用企業がエージェント費用を捻出するためには、なにかのコストを削るか収益を増やすか、しかない。SES会社の場合、最もコントロールしやすいコストは「エンジニアへの支払い」だ。エンジニアに支払う月単価が高ければ高いほど、利益率が下がる。

直接応募なら発生しない採用費用が、エージェント経由では確実に発生する。その分を「利益率の低下」として飲み込む会社もあれば、「提示する単価を若干低めにする」という形で調整する会社もある。後者は表面上見えないが、業界では当然の商慣習として存在する。

「エージェント経由で転職した人」と「直接応募した人」が同じスキル・同じ経験値で採用された場合、前者の方が採用コストが高い。その差がどこかに転嫁される可能性を、頭の片隅に置いておくべきだ。

さらに言えば、SES業界は狭い。「A社からB社へ転職するときにC社のエージェントを使った」という情報が、意外なルートで広がることがある。SES→SES転職であれば、Wantedly・Green・LinkedInなどで直接コンタクトを取る方が、情報の漏洩リスクも採用コストの問題も回避できる。

詳しくは「SES転職のベストタイミングと準備」で転職時期の見極め方を解説している。

ケース2: 実務経験5年以上でスキルセットが明確な場合

市場価値が高いエンジニアほど、エージェントを使う必要性が下がる。

理由は単純だ。スキルが明確ならポートフォリオ・GitHubリポジトリ・職務経歴書の実績欄が語ってくれる。エージェントが「この方はJavaの経験が5年あって…」と説明する必要がない。採用担当が自分で読めばわかる。

年収交渉も同様だ。「自分のスキルの市場価値」が把握できているエンジニアは、エージェントなしで交渉できる。むしろエージェントが「まずはこの年収で入って、実績を積んでから上げましょう」と言うケースが後を絶たない。

エージェントには成功報酬型のインセンティブがある。内定が出ない = 収益ゼロだ。だから「内定を取りやすい条件」に誘導する力学が常に働く。年収を少し下げれば通過率が上がる。「年収を上げたい」という求職者の要望より「成約させる」というエージェントのビジネス目標が優先されることがある。

実務経験5年以上、得意言語・フレームワークが明確、Githubに公開リポジトリがある、または大型プロジェクトのPM/テックリードの実績がある——こういうエンジニアはエージェントなしで直接応募した方が、自分の条件を正確に伝えられる。

ケース3: 転職先が3〜5社に絞れている場合

「SaaS系スタートアップで、バックエンドエンジニア、チームは10〜30人規模、シリーズAかBの資金調達済み企業」というように転職先の条件が明確になっている人に、エージェントの「求人数の多さ」は関係ない。

むしろ問題が起きる。

エージェントに「その条件で探してください」と言っても、担当者には「この求職者をどこに当てはめるか」という視点がある。担当者が扱っている求人の中から選ばれた候補が提示されるため、求職者の希望と完全には一致しない。「いい求人がないときに次点を紹介される」問題は、転職エージェント経験者なら誰しも感じたことがあるはずだ。

転職先が明確な場合、直接応募が最も効率的だ。企業の採用ページからの直接応募は、採用担当者に「うちを特定して選んでくれた」というシグナルを直接送ることができる。エージェント経由では「エージェントに紹介された企業の一つ」という印象になる。

GreenやWantedly・Findy・Offersなど、エンジニア採用に特化したプラットフォームを使えば、採用担当者と直接つながることも難しくない。

SES転職で後悔した理由・失敗パターンも参照すると、「なんとなくエージェントに頼った」失敗を避けられる。

ケース4: 転職活動の情報を極力広めたくない場合

SES業界では、転職活動の情報が想定外のルートで広がることがある。

転職エージェントに登録すると、必然的に「転職活動中」という情報がエージェント会社に渡る。エージェントは多くの会社の採用担当と関係を持っている。直接の情報漏洩は倫理違反だが、それでも「あのエンジニアが市場に出ている」という情報が業界内で広がるリスクはゼロではない。

特に規模の小さなSES業界では、取引先・協力会社・発注元の担当者が「知り合い」であることが少なくない。現職の上司と、転職先候補の採用担当が勉強会でつながっている、なんてことも珍しくない。

「絶対にバレたくない」状況では、エージェント経由の活動は慎重に考えるべきだ。LinkedInのプロフィールを「オープン・トゥ・ワーク」設定にして特定の会社の人事にだけ見えるようにする、Findy Friendsを使ってスカウト受信のみにする、といった形の方が情報コントロールがしやすい。

ケース5: 現職との関係を大切にしながら時間をかけて転職したい場合

転職エージェントには**「成約させる」インセンティブ**がある。登録から一定期間が経つと、担当者から「いくつか良さそうな求人が出ました」「〇〇社の書類締め切りが近いです」という連絡が来るようになる。

これは悪意ではない。ビジネスモデルの構造的な帰結だ。しかし求職者のペースと一致しないことが多い。

「いまの現場のプロジェクトが一段落してから転職したい」「次の技術習得が終わってから動きたい」というエンジニアには、エージェントのペースが合わない。急かされた結果、本来の希望より低い条件の会社に入ってしまう「妥協転職」は、SES業界で繰り返されているパターンだ。

自分のペースで動きたいなら、エージェントには登録せず、Wantedly・Green・GitHubのスポンサー求人などで「受け身スタンス」で情報収集する方が合っている。


エージェントを使った方がいいケースも正直に伝える

フェアな立場として、エージェントが明確に有効なケースも挙げる。

転職が初めてで、何から始めるべきか分からない場合: 職務経歴書の書き方・面接対策・業界相場の知識をゼロから学べる環境としてエージェントは有効だ。リクルートエージェントやdodaの無料カウンセリングは、「転職の型」を知る入門として機能する。

SESから自社開発・社内SEへの転職を目指す場合: SES業界の外への転職は、業界内のコネが使えない。求人数の多さ・他業界ネットワーク・書類添削の力が必要で、ここではエージェントの強みが活きる。

現在の業界・職種を大きく変えたい場合: 未経験職種への転職は書類通過率が極端に下がる。エージェントの個別対策・企業への推薦状(一言添え)が通過率を上げるケースがある。

交渉が苦手で年収を自分では言いにくい場合: 年収交渉を代行してもらえるのは、コミュニケーションが苦手な人にとって実質的な価値がある。ただし「エージェントが高い年収を提示してくれる」と期待するのは間違いで、最終的には自分の市場価値次第だ。

転職活動の全プロセスを効率化したい場合: 書類送付・日程調整・各社へのフォローアップを全部自分でやると、週数時間のオーバーヘッドが発生する。複数社を並行して受けるなら、エージェントのプロセス管理機能には価値がある。


なぜエージェントは「エージェントを使え」と書くのか

構造を理解しておくことが重要だ。

転職エージェントの収益は「成功報酬型」だ。採用が決まれば年収の30〜35%が入ってくる。決まらなければゼロだ。だから「求職者にとって本当に最適な転職方法」ではなく、「内定が出やすい転職方法」にバイアスがかかる。

「転職エージェントを使わない方がいい」という記事を書くと:

  • 登録者数が減る
  • 担当者のアサイン数が減る
  • 成約数が減る
  • 収益がゼロになる

これを書けるのは、転職エージェントではなく、業界の外から俯瞰できる立場だけだ。

Heydayは転職エージェントではなく、SES会社だ。エンジニアが自分に合った転職をすることが最終的にHeydayの利益にもなる——なぜなら、エンジニアが「正直な情報を教えてくれた会社」として信頼してくれれば、いつかHeydayへの参画を検討してくれるかもしれない。それで十分だ。

SES面接でよく聞かれる15の質問と答え方も参考に、転職活動の準備を進めてほしい。


Heydayに直接相談するという選択肢

「エージェントを使わない転職」を選ぶとき、情報収集先の一つとしてHeydayへの直接相談という選択肢がある。

Heydayは転職エージェントではない。だから紹介料を受け取る構造がない。エンジニアが転職するかどうか、Heydayに参画するかどうかに関わらず、「SES業界の現状と市場価値」を正直に話せる立場だ。

具体的には:

  • 現在のスキルセットの市場単価の目安(診断ツールで即座に確認できる)
  • SES→SES転職で注意すべきポイント
  • 直接応募で有利になる職務経歴書の作り方
  • Heydayに参画した場合の案件例と単価レンジ

これを「相談」という形で受け付けている。押し売りはしない。「Heydayには合わない」と判断されれば、他の選択肢を正直に提案する。

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FAQ

Q1. 転職エージェントに登録して断ることはできる?

できる。登録後にエージェントから求人を提案されても、断る権利は完全に求職者にある。「まだ情報収集の段階です」と伝えれば押し付けられることはほぼない。ただし、担当者からの連絡が頻繁になることは覚悟しておく方がいい。「一旦保留します」と連絡を入れて活動休止状態にすることも可能だ。

Q2. SES→SES転職で直接応募するのはどうやるの?

WantedlyやGreen・Findy・Offersなどのエンジニア向けプラットフォームを使うのが最もシンプルだ。各社の採用ページから「中途採用」を探して直接応募する方法もある。LinkedInでDM送信という形もある。SES会社は採用広告を常時出しているところが多いため、探す手間は大きくない。

Q3. 複数のエージェントに同時登録していいの?

問題ない。ただし複数登録すると管理が煩雑になる。進捗を自分でスプレッドシートに記録しておかないと、「どのエージェント経由でどこを受けているか」が混乱する。同じ企業に複数エージェントから応募すると企業側に把握されることもあるため注意が必要だ。

Q4. 転職エージェントを使わないと書類選考の通過率は下がる?

スキルが高い人ほどその差は小さくなる。書類選考の通過率に影響するのは「誰が推薦したか」より「何が書いてあるか」だ。職務経歴書の質が低ければ通過率は下がるが、それはエージェント活用の問題ではなく書類の質の問題だ。LinkedInや転職ノウハウメディア(バズ部・みんなの転職「体験談」など)を使えば、エージェントなしでも十分な書類を作れる。

Q5. 年収交渉はエージェントなしでできる?

できる。最も重要なのは「自分の市場価値を数字で説明できること」だ。「現職の年収+10%ください」ではなく「このスキルセットで他社はXX万円オファーが出ています、御社はいかがでしょうか」という交渉の方が通る。Heydayの単価診断ツールを使えばSES業界での市場単価の目安を把握できる。

Q6. 転職エージェントのキャリアアドバイザーはどこまで信頼できる?

信頼できる部分とそうでない部分がある。「この企業の内情」「書類添削」「面接フィードバック」は信頼度が高い。一方「あなたにはこの会社が合っています」「この年収は適正です」という判断は、エージェントのビジネスインセンティブが混じる可能性があるため、鵜呑みにしない方がいい。自分の判断軸を持ちつつ、情報提供ツールとして活用するのが正しいスタンスだ。

Q7. SES専門のエージェントと総合型エージェントはどちらがいい?

SES→SES転職なら前述の理由から「どちらも使わない」が最も有力な選択肢だ。SESから自社開発・社内SEへの転職を目指すなら、総合型(リクルートエージェント・doda)より、IT特化型(レバテックキャリア・Geekly)の方が企業情報の精度が高い。SES案件への紹介にインセンティブが働くエージェントには特に注意が必要だ。

Q8. 転職活動にかかる期間はエージェントなしで長くなる?

準備に時間をかける分は長くなる可能性があるが、意思決定のスピードは自分でコントロールできる。エージェント経由の場合、企業との日程調整にエージェントが介在するため、逆に1〜2週間長くかかるケースもある。自分のペースで動けることを優先するなら、期間の差は小さい。

Q9. エージェントに登録したら転職しないといけない?

まったくそんなことはない。「情報収集目的」で登録して、「いまは転職しないと判断した」で終わりにしても何の問題もない。担当者が引き止めようとしても断る権利がある。ただし担当者への連絡なしに消えるのは礼儀としてよくない。「いまは見送ります」と一言連絡するだけで十分だ。

Q10. Heydayへの参画と転職エージェント経由の転職は、どちらが年収が高くなる?

一概には言えないが、Heydayへの参画はエージェント紹介料が発生しないため、その分のコストが案件単価・エンジニアへの支払いに反映されやすい構造にある。また参画後の単価は成果に応じて上がる仕組みを持っているため、初期年収だけで比較するのではなく、1〜2年後の単価変動も含めて判断してほしい。具体的な単価レンジは診断ツールで確認できる。


まとめ:エージェントを使うか使わないかの判断基準

転職エージェントは道具だ。使い方次第で効果が大きく変わる。

使わない方がいいのは、以下の5ケースだ。

  1. SES→SES転職(採用コストの構造的問題)
  2. 実務経験5年以上でスキルセットが明確(エージェント介在のメリットが小さい)
  3. 転職先が3〜5社に絞れている(直接応募の方が熱意が伝わる)
  4. 転職活動の情報を広めたくない(情報管理リスク)
  5. 自分のペースで動きたい(成約インセンティブとの不一致)

使った方がいいのは、転職が初めて・SES業界の外へ転職・職種変更・年収交渉が苦手・複数社の並行管理が面倒、といったケースだ。

大切なのは「エージェントを使う・使わない」の二択ではなく、**「自分のケースに何が合っているかを自分で判断すること」**だ。

「転職エージェントは使うべき」という記事は、エージェントの利益のために書かれている。この記事はあなたの利益のために書いた。どちらを信頼するかは、あなたが決めていい。

SES転職の実体験については「SES転職の後悔と失敗パターン」「SES転職のタイミングと準備」もあわせて読んでほしい。

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この記事の著者

小川将司
小川将司

Heyday株式会社 代表取締役

SES事業6年・採用担当と転職支援の両方を経験した経営者視点で執筆

Heyday株式会社 代表取締役。エンジニア・PM/PdMを経験後、SES事業を創業。複数クライアント現場でAI導入コンサルティングを担当。「ITをもっとフェアに」を掲げ、マージン構造の開示に取り組む。

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