「朝、起きられない」「客先のSlackを見るのが怖い」「気づいたら涙が出ている」——そんな状態でこの記事に辿り着いたなら、まず伝えたい。あなたは正しい行動を取っている。検索して、誰かが書いた手順を確認しようとしている。それは責任感の強い人がする行動だ。
私はHeyday株式会社の代表・小川将司として、IT業界で12年、SES事業を6年やってきた。営業として担当エンジニアから診断書を受け取り、客先と調整し、休職と復職に立ち会った経験は何件もある。
この記事は、競合のSES記事のように「うつになったら病院に行きましょう」で終わらせない。SES特有の三者構造(自社・客先・エンジニア)の中で、最初の48時間に何をすべきかを、経営者・営業の立場で実際に動いてきた一次情報をもとに書いている。
医学的診断はできないので、診断や治療方針は医師に委ねる前提で読んでほしい。ここで提供するのは、「医師に行く前後の動き方」と「SES会社にどう動いてもらうか」という、相談現場で積み上げた実務知だ。
なお、もし「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが出ている場合は、この記事を読み進める前に、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間無料)か、お住まいの地域のいのちの電話に一度電話してほしい。一人で抱える段階を越えている可能性がある。
SESでメンタル不調・うつになった時に起きること
最初に押さえておきたいのは、SESでメンタルを病むのは、あなたが弱いからではないという事実だ。SESには、メンタル不調を引き起こしやすい構造的な要因が複数ある。
なぜSESエンジニアに多いのか(三者構造・孤立・評価の見えなさ)
SESでメンタル不調が起きやすい要因を、相談現場で観察してきた経験から3つに整理する。
1つ目は、客先と自社のどちらにも属しきれない「ダブル帰属感の欠如」。客先では「あくまで外部の人」、自社では「客先に行きっぱなしで顔が見えない人」という扱いになる。どちらにも本籍を持てない状態は、想像以上にエネルギーを消耗する。
2つ目は、評価とフィードバックの不透明さ。客先の上司は「評価する立場」ではないし、自社の上司は「あなたの仕事を見ていない」。月1の1on1すらない現場も少なくない。「自分はこのままでいいのか」という不安が、努力する方向の指針すら持てないまま積み上がっていく。
3つ目は、案件ガチャによる強制的な環境変動。良い現場に当たれば数年安定する。逆に、合わない現場・炎上案件・ハラスメント現場に当たると、自分の意思では抜けられないまま消耗していく。「これは契約だから3ヶ月は我慢」という発想が、限界突破に直結する。
この3つが同時に来ると、健康な人でもメンタルを崩す。あなたが今辛いのは、その構造が機能不全を起こしているからで、能力や性格の問題ではない。
統計が示す情報通信業のメンタル不調退職
厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査では、情報通信業の事業所のうち39.2%が、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業または退職した労働者がいたと回答している。これは全産業平均(13.5%前後)の2.9倍だ。
つまり、IT業界・SES業界でメンタル不調になることは、決して珍しいことではない。データはむしろ「あなたと同じ状況の人が今この瞬間も大勢いる」と示している。一人で抱えなくていい証拠でもある。
「うつかもしれない」の判断基準(2週間ルール・症状チェック)
医師ではないので診断はできないが、相談現場でよく使う目安として**「2週間ルール」がある。以下の症状が2週間以上連続で出ている**なら、医療機関の受診を検討すべき段階だ。
- 朝、布団から出られない日が週3日以上ある
- 仕事のことを考えると涙が出る、または呼吸が浅くなる
- 食欲がない、または逆に止められない
- 眠りが浅く、夜中に何度も目が覚める
- 客先のSlack通知を見ると動悸がする
- 休日に何もできず、ベッドから動けない
- 「消えたい」「楽になりたい」という考えが浮かぶ
このうち3つ以上が2週間続いているなら、できれば今週中に医療機関を予約してほしい。「もう少し様子を見よう」が一番危険だ。受診のハードルを下げる方法は次のセクションで具体的に書く。
なお、この記事より前の段階——「まだ限界ではないが心配」「前兆を確認したい」という方は、関連記事の「SESで病む」直前の7つの警告サイン、もしくはSESエンジニアのメンタルヘルス自己チェックリストを先に読むことをお勧めする。
まず病院に行くべきか — 受診の目安と初診の流れ
「病院に行くべきか分からない」「行ってどうなるか分からないから怖い」——この感覚は本当に多くの人が持っている。ここで一つ、経営者として何度も目にしてきた事実を伝えたい。「もう少し頑張ってみよう」と病院を先延ばしにした人ほど、回復に時間がかかる。逆に、早めに受診した人は、休職せず通院だけで回復するケースもある。
「精神科 vs 心療内科」の違いと選び方
「精神科は重い人が行くところ」「心療内科は軽い人が行くところ」——これは正確ではない。簡単な使い分けの目安だけ書く。
| 診療科 | 主な対象 | SESエンジニアの目安 |
|---|
| 心療内科 | ストレスから来る身体症状(不眠・動悸・胃痛など)が主 | 「身体症状が中心」「まだうつとは思えない」段階 |
| 精神科 | 抑うつ・不安障害・適応障害など心の症状が中心 | 「気持ちの落ち込みが中心」「希死念慮がある」段階 |
迷ったら、まずは心療内科で構わない。心療内科で「これは精神科の領域だね」と判断されれば紹介してくれる。逆もある。「ハードルが低い方から入る」で問題ない。
クリニック選びで一つだけ重要なのは、**「働きながら通える距離」と「予約の取りやすさ」**を優先することだ。評判より物理的・時間的アクセスを優先したほうが続く。職場の最寄り駅か、自宅最寄り駅のどちらかにあるクリニックを選ぶといい。
初診で話すべきこと(症状・発症時期・SES特有の環境説明)
初診の予約を取ったら、医師に話すべき内容を3つの軸で整理しておくと、診察時間(だいたい15〜30分)を有効に使える。
1. 現在の症状(具体的に)
- いつから(おおよその時期でいい)
- 主な症状(不眠・食欲低下・涙・動悸・出社困難など)
- 一日の中で症状が強い時間帯
2. 仕事環境の説明(SES特有の構造を簡潔に)
- 「SESという業態で、A社(自社)に雇われ、B社(客先)に常駐している」と伝える
- 客先の人間関係・業務量・評価不透明さなど、ストレス源と思われるもの
- 自社との接触頻度(月1の面談があるか、ほぼ放置されているか)
3. 望むこと
- 「診断書がほしい」「休職を検討している」「まず通院だけで様子を見たい」など、希望があれば最初に伝える
- 何も決まっていなくても「どうすればいいか分からなくて来た」で構わない
医師は「SESって何?」と聞いてくる場合もある。「客先常駐型のシステムエンジニア派遣のような形態」と一言添えれば伝わる。
診断書の取り方と費用感
診断書を発行してもらう場合は、初診で「診断書をお願いします」と伝える。初診から発行されるケースもあれば、2〜3回の通院後に発行されるケースもある。クリニックの方針による。
費用は3,000〜5,000円程度が一般的。傷病手当金の申請に必要な「療養担当者記入欄」がある書類は、もう少し費用がかかることもある(5,000〜7,000円程度)。
なお、初診時に既に「会社に休職したいと伝えるための診断書がほしい」と決めているなら、その意図を最初に伝えると話が早い。医師は症状から判断するが、患者の希望も考慮材料になる。
病院の後にすること — 会社への伝え方(SES特有の手順)
ここからが、競合記事ではほとんど書かれていないSES特有の実務だ。経営者・営業として、診断書を受け取ってきた側の視点で書く。
「自社営業 → 客先」の順で伝える理由
結論から言う。客先には絶対に直接言わないでほしい。まず自社の担当営業に連絡する。
これには明確な理由がある。
1つ目、契約上の指揮命令系統。SES契約(多くは準委任契約)において、エンジニアの労務管理は雇用主である自社が責任を持つ。客先は契約相手だが、雇用主ではない。診断書の受領・休職判断・客先との契約調整は、すべて自社の責任範囲だ。エンジニアが直接客先に「休みたい」と言うのは、契約構造上は越権行為になる。
2つ目、客先での扱われ方が変わるリスク。エンジニアが直接客先に「メンタル不調で休みたい」と伝えると、客先は次の人材を探し始める可能性がある。本来は「契約期間中は守られるべき」立場が、「契約途中で抜ける人」として扱われてしまう。自社営業が間に入れば、契約面の調整・補償・後任手配を交渉してくれる(はずの会社なら)。
3つ目、メンタル状態での交渉は不利。本人が客先と直接やり取りすると、相手のペースに巻き込まれる。「あと1ヶ月だけ」「リリース後まで」という押し戻しに、メンタルが弱った状態では抵抗できない。営業を間に挟むのは、自分を守るための仕組みだ。
具体的な連絡フローは以下になる。
- 自社の担当営業に電話またはメールで「医師から休養が必要と言われた」「診断書がある」と伝える
- 担当営業が訪問または面談の日程を組む(迅速な会社なら当日〜翌日)
- 診断書を渡す(PDFやスキャン画像でも可。原本は後日でもOK)
- 休職開始日・客先への通知タイミング・後任手配について、会社側の動きを確認する
Heydayで実際に診断書を受け取った後の動き
ここからは、Heydayの代表・営業として実際にやってきた動きを公開する(医学的診断ではなく、相談現場の経験則として読んでほしい)。
エンジニアから「医師から休養が必要と言われた」と連絡が来たら、私たちはまず**「明日から休みでいい」と返す**。診断書の有無は二の次だ。診断書を待っている間も人は壊れていく。
次の48時間でやるのは、客先への第一報。これは営業が行う。エンジニア本人は客先に何も言わなくていい。「弊社のエンジニアが体調不良のため、しばらく業務を離れます」と伝えるだけで、最初は十分だ。詳細は後日説明する。
客先からは「いつ戻れるか」「後任は」「業務引き継ぎは」と質問が必ず来る。これも全部営業が間に入る。エンジニアにメンタルが回復していない状態で引き継ぎ資料を書かせるのは、回復の妨げにしかならない。引き継ぎは「分かる範囲で書ける時に書く」でいい。書けないなら、営業が客先と一緒に資料を再構築する。
診断書を受け取った後、休職期間の設定(多くは1〜3ヶ月)と、傷病手当金の手続き案内をする。「経済面は何とかなる」と伝えるのは、回復に集中してもらうために絶対に外せない一言だ。
病名は基本的に聞かない。聞いても本人が話したいなら聞くが、こちらから問わない。必要なのは「今すぐ動けるか/動けないか」「いつまでに復帰目処があるか」の2点だけだ。(小川将司・代表)
これは私の会社の動き方だ。すべてのSES会社がこう動くわけではない。残念ながら、診断書が出ても「もう少しだけ頑張れないか」と言ってくる会社もある。その場合の対処は、後の章で書く。
「客先に直接言ってしまった」場合のフォロー方法
すでに客先のリーダーや上司に「もう限界です」「辞めたいです」と伝えてしまった人もいるはずだ。それでも大丈夫。やり直せる。
すぐにやってほしいのは、自社の担当営業にその事実を伝えること。「実は昨日、客先のXXさんに辛いと伝えてしまった」と、起きたことをそのまま伝える。
担当営業の役割は、その後の客先との認識合わせだ。「弊社が把握しないまま個人的なやり取りがあったが、正式には弊社経由で休職対応を進めさせてほしい」という形で、客先との情報窓口を巻き戻してくれる(まともな営業なら)。
エンジニアから直接「辞めたい」と聞いた客先は、自社にも報告するケースがある。その場合、自社が「事実を把握していない」状態だと最も悪い印象になる。担当営業に先に伝えておけば、自社が主導で動ける。
休職中にすること・しないこと
休職に入った後の過ごし方が、回復速度を左右する。ここも経営者として、休職から復帰までを見届けてきた経験ベースで書く。
傷病手当金の条件と申請フロー(健康保険法)
休職中の経済的支えとして、傷病手当金を必ず申請してほしい。健康保険法に基づく制度で、条件を満たせば標準報酬日額の3分の2が、最長1年6ヶ月支給される。
主な条件は4つ:
- 業務外の病気・ケガによる療養であること(うつ・適応障害は対象になる)
- 仕事に就くことができないこと(医師の判断)
- 連続する3日間を含む4日以上、仕事を休んでいること
- 休んだ期間に給与の支払いがないこと
申請は協会けんぽまたは加入している健康保険組合に対して行う。書類は4部構成(被保険者記入欄・事業主記入欄・療養担当者記入欄・添付書類)で、それぞれ本人・会社・医師が記入する。
SES企業での実務上の注意点として、事業主記入欄の記入は自社が担当する。自社が傷病手当金の手続きに不慣れな場合もあるが、過去に発行経験があれば1〜2週間で書類が揃う。給付までは申請から1〜2ヶ月かかる。
最初の月は給与なしで生活することになるので、貯蓄が心許ない場合は、市区町村の「社会福祉協議会」が窓口になっている緊急小口資金などの福祉貸付制度も検討の余地がある。
「休職中に転職活動」は正しいか(回復優先の考え方)
ネット記事で散見される「休職中に転職活動を進めましょう」というアドバイスには、はっきり反対しておく。
休職中の転職活動を勧めない理由は2つある。
1つ目、回復前の判断は判断力が落ちている。うつ状態では認知が歪む。「自分は何の役にも立たない」「もう何もできない」というネガティブな自己評価が、転職先選びにも影響する。妥協した転職先を選んだり、面接で本来の力を出せなかったりする。
2つ目、面接側が見抜く。中途採用の面接官は、休職中の応募者を「離職リスクが高い」と判断しやすい。転職活動は復帰し、現職での実績を再構築してからの方が確実に成功率が上がる。
休職中にやるべきは、「治すこと」だけだ。転職するか復帰するかの判断は、症状が落ち着いてからでいい。
Heydayが実際に休職中エンジニアに伝えていること
休職に入ったエンジニアに最初に伝えるのは、「何もしない時間を、罪悪感なく過ごしてほしい」ということだ。
責任感の強いエンジニアほど、休職中も「何かしなきゃ」と焦る。「キャッチアップしなきゃ」「資格を取らなきゃ」「次の現場のために学習を」——全部やめていい。むしろやってはいけない。
私たちは、休職に入ったエンジニアに対して、最初の1ヶ月は連絡しない。「いつ戻れる?」「進捗はどう?」というプレッシャーを与えない。1ヶ月経った頃に「最近どう?」と短いメッセージを送るだけ。返信もいらない、と添える。
復帰の打診は、本人から「そろそろ動けそう」と連絡が来た時に初めて始める。こちらから「もう動けるよね?」とは絶対に聞かない。それを聞いた瞬間、回復が後戻りすることがあるからだ。(小川将司・代表)
これも医学的根拠ではなく、相談現場で観察してきた経験則だ。ただ、休職中のエンジニアが何度も言うのは「会社からの連絡が一番怖かった」という言葉だ。だから連絡を控える、というのが私たちの方針になっている。
復職 or 転職か——回復後の選択肢を整理する
医師から「復帰可」の判断が出た後、「どこに復帰するか」の選択肢が出てくる。ここはSESならではの選択肢があるので、整理しておきたい。
同じ現場に戻るリスクと「別案件異動」という選択肢
最も避けたいのは、メンタル不調の原因になった現場に、同じ業務量・同じ人間関係で戻ること。これは再発率が高い。
復帰の選択肢は実は3つある。
選択肢A:元の現場に戻る
- 環境のストレス源が改善されている場合のみ
- 例:合わなかった上司が異動した、業務量が見直された、リモート割合が増えた
- 改善がないまま戻ると再発リスクが高い
選択肢B:別の案件に異動する(SES特有)
- 同じ自社のまま、客先だけ変える
- 雇用契約は維持されるので、転職活動の負担なし
- 自社の保有案件次第なので、選択肢のある会社か事前確認が必要
選択肢C:転職する
- 自社自体を変える
- 回復が完全でないと面接が通りにくい
- 回復後3〜6ヶ月の現職実績を作ってから動くのが安全
順番として、まずBが可能か自社に確認するのが実務的に最も負担が少ない。多くのSES会社では、メンタル不調を理由とした案件チェンジは前向きに検討してくれる(人材を失うより案件チェンジの方が会社にもメリットがある)。
別案件への異動で回復したケース(Heyday匿名事例)
過去に、客先の上司との相性が原因で適応障害になったエンジニアがいた。3ヶ月の休職を経て、「現場には戻れる気がしない」と本人から相談があった。
Heyday側で別案件を3件提案。本人が選んだのは、メンバー数が少なく、フルリモート、月1の出社のみ、という案件だった。前職の客先と業界も業務内容も違うものを意図的に選んだ。
復職して半年経った時、本人から「あの時、辞めずに案件を変えてくれたのが本当に良かった」と聞いた。転職市場で動こうとしていたら、回復しきっていない状態で面接を受けて、また失敗していたかもしれない、と。
全員が同じ結果になるとは限らないが、SESには「自社を変えずに環境を変える」という選択肢がある。これは正社員の転職にはない、SES特有のメリットだ。(小川将司・代表)
転職を検討する際は、関連記事のSES転職のタイミング、職場での消耗が原因で転職を考えるならSESで成長できないと感じた時の判断軸、退職を視野に入れるならSESエンジニアの退職の進め方も参考になる。
Heydayが相談現場で見た「SES会社の対応の差」
ここまで読んで「自社の担当営業がそんな動きをしてくれる気がしない」と感じた人もいるはずだ。残念ながら、SES会社の対応には大きな差がある。経営者の視点から、その差を率直に書く。
良い対応の例 vs 悪い対応の例(経営者の視点)
| 場面 | 良い対応 | 悪い対応 |
|---|
| 「しんどい」と相談された時 | 診断書がなくても、まず話を聞く・休む選択肢を提示する | 「もう少し頑張れないか」「客先に迷惑がかかる」と返す |
| 診断書を受け取った時 | 即日休職を確定させ、客先への連絡は会社が担当 | 「来週まで待ってほしい」「客先には自分で言って」と返す |
| 休職中の連絡 | 月1の安否確認のみ、復帰プレッシャーをかけない | 「いつ戻れる」「客先が困っている」と毎週連絡 |
| 復職の判断 | 医師判断+本人意思+案件状況の三要素で本人主導 | 「もう大丈夫だよね」「次の案件もう決まってるから」と圧 |
| 復職時の案件 | 別案件・低負荷案件を選択肢として提示 | 元の現場に戻すか、選択肢なしの案件で再開 |
対応の差を感じた他社エピソード(概略)
他社からの転籍を相談されることがある。中でも記憶に残っているのが、「診断書を出したら『じゃあ自分で客先に言って』と言われた」というエピソードだ。
その人は、メンタルがボロボロの状態で客先に直接「休みます」と伝えに行き、客先からは「契約途中で離脱されると困る」と詰められ、二重に消耗した。結局、その会社は休職処理もせず退職扱いにし、傷病手当金の手続きも行わなかった。
こういう会社は実在する。エンジニアの体力ではなく、「会社を選ぶ目」を持つことが、最終的にあなたを守る。(小川将司・代表)
SES会社の対応を見分ける3つのチェックポイント
転職を検討する場合、面接時や入社前に以下の3つを確認することで、会社の対応力をある程度見抜ける。
1. 過去の休職対応実績を聞く
「メンタル不調による休職対応の経験はありますか」と直接聞く。具体的なフロー(診断書受領→客先連絡→休職開始→復職判断)を語れるかで、対応力が分かる。「なかった」「個別判断」とぼかす会社は経験不足の可能性が高い。
2. 担当営業との面談頻度を確認
「担当営業との1on1は月何回ありますか」を聞く。月1以上が標準。月0または「必要に応じて」だけの会社は、不調の兆候を察知できない構造になっている。
3. 案件チェンジの実績を聞く
「案件と合わなかった場合、別案件への変更は可能ですか」「過去に何件くらい案件チェンジがありましたか」と聞く。年間のチェンジ件数を数字で答えられる会社は、案件保有数と人材を大事にする姿勢がある。
なお、関連記事のSES現場での孤独への対処法でも、担当営業との関係性の作り方を扱っているので、現職で改善を試みたい方は参照してほしい。
今すぐできること1つ
ここまで読んでくれてありがとう。情報量が多くなったので、最後に今日やること1つだけに絞る。
今日やること:医療機関に予約の電話をする(または予約フォームを送信する)。
これだけでいい。
「明日でいい」「今度の休みに」と思った時点で、また先延ばしのループに入る。職場の最寄り駅か自宅最寄り駅で「心療内科」「精神科」と検索して、予約が取れる最も近い日に予約を入れる。1ヶ月先しか取れない場合もあるが、それでも予約だけは取る。
予約が取れたら、次のことを順番にやる。
- 受診当日まで、症状をスマホのメモに書き留める(日付と症状だけでいい)
- 受診当日、医師に状況を伝える(このセクションの「初診で話すべきこと」を参考に)
- 診断書が出たら、自社の担当営業に連絡する
- 担当営業の動きが鈍い、または対応が悪いと感じたら、転職を含めた選択肢を再検討する
このフローを一人で抱えてやるのが辛い場合、第三者の視点を入れるのも一つの手だ。Heydayでは、自社のエンジニアでなくても、SESエンジニアからのキャリア相談を受けている。今の会社の対応に違和感がある、転職すべきか分からない、案件チェンジの選択肢を整理したい——そういった相談を、診断ツール経由で受け付けている。
無料診断は3分で終わる。診断結果と一緒に、相談したい内容を書き添えてもらえれば、こちらから連絡する形を取っている。「まだ転職するか分からない」段階でも構わない。
繰り返しになるが、メンタル不調は放置すれば悪化する一方で、適切なタイミングで動けば回復できる。診断書を手に入れた後の動き方は、SES会社側として何十件と関わってきた経験からいえば、最初の48時間の対応が回復期間を大きく左右する。一人で抱え込まずに、まず相談してほしい。
関連記事
緊急時の相談窓口
- よりそいホットライン: 0120-279-338(24時間・無料・通話料無料)
- いのちの電話: 0570-783-556(10:00〜22:00)
- 厚生労働省 こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト: https://kokoro.mhlw.go.jp/
出典
- 厚生労働省 令和6年労働安全衛生調査
- 健康保険法(傷病手当金の根拠)
- 厚生労働省 こころの耳