「プリセールスってフリーランスでできるの?できるとしたらいくら?」
この問いに答えられる情報がネット上に少ない。転職サイトの年収データはあっても、業務委託・フリーランスとしてプリセールスを請け負うときの単価実態は、ほとんど表に出てこない。
Heydayが直近で取り扱う業務委託案件データ(2026年4〜5月時点)から言えるのは、プリセールス案件の単価は90万円から180万円の幅があるということだ。同じ「プリセールス」でも倍の差がある。この差は何で決まるのか——技術力ではなく「営業への貢献度」で決まる、というのがHeydayとして見てきた実態だ。
この記事では、カテゴリ別の単価一覧から、90万円と180万円に分かれる理由、SESエンジニアがプリセールスへ転換できる条件まで、業務委託案件を毎月扱う立場から正直に書く。
まず、Heydayが直近で取り扱う業務委託案件データ(2026年4〜5月時点)をもとにした単価一覧を示す。案件名・番号は非公開だが、カテゴリ別の実測レンジだ。
| カテゴリ | 単価レンジ(月額) | 主な条件 |
|---|
| Salesforceプリセールス(中〜上級) | 120〜180万円 | SF導入提案経験3年以上、クロージングまで関与できる |
| AIソリューションプリセールス(LLM/AI基盤) | 130〜180万円 | LLM・生成AI基盤の技術説明+提案設計経験 |
| IT系プリセールス(クラウド/インフラ系) | 90〜140万円 | AWS/Azure経験3年以上、技術提案経験 |
| Salesforceプリセールス(エントリー〜中級) | 90〜120万円 | SF基本知識、提案補助経験あり |
| 全体レンジ | 90〜180万円 | — |
この数字を「高い」と感じるか「そんなものか」と感じるかは、比較対象によって変わる。SES開発案件の平均単価が50〜80万円程度(推定、GSC未確認)であることを考えると、同じITエンジニアでもプリセールスへの転換で単価が大きく上がる可能性がある。
同じ「プリセールス」カテゴリで90万円と180万円が並ぶ理由は、評価軸が開発エンジニアと根本的に違うからだ。
プリセールスの仕事は大きく2層に分かれる。
層1: 技術説明・デモ担当(単価90〜110万円)
- 顧客に対して製品・サービスの機能を説明する
- 技術的な質問に回答する
- デモ環境の構築・実演を担当する
層2: 提案設計〜クロージング支援まで担当(単価150〜180万円)
- 顧客の業務課題をヒアリングし、課題定義から提案構造を設計する
- 競合比較を含む提案資料を自ら作成する
- 商談に同席し、営業担当と連携してクロージングに関与する
- 受注後の導入スコープを技術的に定義する
単価の差は「技術レベル」ではなく「商談プロセスへの関与深度」で決まる。技術力が同等でも、提案設計に入れるか否かで単価は大きく変わる。
案件票を見ていると、150万円以上の案件には「提案設計経験必須」「クロージングへの関与」という要件が必ず入っている。一方、100万円前後の案件は「技術説明・デモ対応経験」が中心の要件だ。クライアント側の期待値がそもそも違う。
「技術を語れる人は今は採用でき、提案を設計できる人が足りない」というのが2026年現在のプリセールス市場の実態だとHeydayは感じている。
Web上には「プリセールスの平均月単価は77〜86万円」という数字が出ている(レバテックフリーランス等の公開データ)。Heydayデータの90〜180万円と乖離があるのはなぜか。
フリーランスエージェントが公開する「平均単価」は、プラットフォーム上に掲載されている全案件の平均だ。ここにはエントリー層・経験が浅いケース・単純デモ対応のみの案件が多数含まれる。その結果、平均値が引き下げられる。
Heydayが取り扱う案件は、SESエンジニアを対象とした中〜上級ポジションが中心だ。「プリセールス補助として月4〜5日稼働・50万円」のような案件は扱っていない。結果として、Heydayデータの単価レンジは市場全体の平均より高く出る。
どちらが正しいかではなく、「自分がどのポジションを狙うか」によって参考にすべき数字が変わる。エントリー層なら市場平均の77〜86万円が出発点になり、提案設計経験があるなら120〜180万円が現実的な交渉ラインになる。
フリーランスエージェント経由の案件は、エージェントのマージンが差し引かれた後の数字が「単価」として提示される。Heydayはプライム〜2次商流の案件を中心に取り扱っており、商流が浅い分、エンジニアの手元に残る単価が高くなる傾向がある。
「プリセールスで月100万円が目標」という人が、実際に手元に100万円残すには、商流込みで交渉できるエージェントを選ぶことが重要だ。
「同じエンジニア」でもプリセールスになると単価が上がる理由を整理する。
SES開発案件の単価は、主に「技術スキルレベル」と「稼働工数(人月)」で決まる。優秀なエンジニアでも、市場に似たスキルを持つ人材が多ければ単価の上限は自然と抑えられる。
プリセールスの単価が高い理由は3つある。
-
レア性: 技術理解力と言語化・提案設計力を両立できる人材が少ない。片方だけ持っている人は多いが、両方できる人は市場に極端に少ない。
-
直接的な売上貢献: プリセールスの良し悪しが直接、商談の勝率に影響する。クライアント企業にとって、良いプリセールスは売上に直結するポジションだ。「コストセンター」ではなく「レベニューセンター」として扱われるため、高い単価でも費用対効果が合う。
-
代替困難性: 開発の一部作業はAIや海外人材で代替が進んでいる。一方、顧客の業務課題をヒアリングし、自社製品の技術を組み合わせて提案を設計する仕事は、現状の生成AIには難しい。この「AIに代替されにくい」性質も高単価を維持する要因だ。
| スキルレベル | SES開発案件(推定) | プリセールス案件(Heydayデータ) |
|---|
| エントリー〜中級(経験1〜3年) | 40〜60万円 | 90〜110万円 |
| 中級〜上級(経験3〜5年) | 60〜90万円 | 110〜150万円 |
| 上級(経験5年以上+提案スキル) | 80〜100万円 | 150〜180万円 |
※SES開発案件単価は推定。Heydayデータは実測値(2026年4〜5月)。
「フリーランスでプリセールスはフルリモートできる?」という質問をよく受ける。結論から言うと、フルリモートは難しい案件が多い。
Heydayが扱うプリセールス案件の稼働パターンは、ハイブリッド(週2〜3日リモート)が標準だ。
理由は以下のとおり。
対面デモが必要なケースがある
大手SaaS系のプリセールスでは、顧客企業の経営層・IT部門長クラスに対してデモを実施することがある。経営層商談はオンラインでも実施できるが、「実機に触れながら確認したい」「情シス担当者と一緒に動作確認したい」という要望に応えるため、月に数回のオンサイト対応が発生する。
社内の営業担当との連携が必要
プリセールスは単独ではなく、営業担当と組んで動く。商談前の戦略共有、商談後のフォロー方針の決定——これらは対面で打ち合わせた方がスピードが出ることが多い。フルリモートのプリセールスを採用するクライアントは、社内に強固な非同期コミュニケーション文化がある企業に限られる。
インフラ系・クラウド系は比較的リモートが多い
Heydayのデータで言えば、IT系プリセールス(クラウド/インフラ系)はZoom・Teams上でのデモが成立するケースが多く、週3〜4日リモートの案件が存在する。一方、Salesforceプリセールスは顧客の業務フローをホワイトボードで整理しながら提案を進めるスタイルが多く、オンサイト頻度が高い傾向がある。
「プリセールスでフリーランスになりたい」という相談は、Heydayにも月数件届く。現実的な条件を整理する。
1. 技術理解力(土台)
担当する製品・サービスの技術的仕組みを顧客に説明できるレベルの理解が必要だ。Salesforceプリセールスであればオブジェクト構造・フロー・Apexの基礎、クラウド系プリセールスであればAWS/Azureの主要サービスと構成設計の基礎が最低ラインになる。「動かせる」レベルである必要はないが、「質問に正確に答えられる」レベルは必要だ。
2. 言語化・説明力(差別化層)
技術を知っていても、非IT系のビジネスパーソンに「なぜこの構成が御社に合っているか」を分かりやすく説明できる人は少ない。ここがプリセールスとして採用されるかどうかの分岐点になることが多い。資料作成・プレゼンテーション・Q&A対応の実績があることが重要だ。
3. 提案設計経験(高単価層)
150万円以上を狙うなら、「提案の構造を設計できる」経験が必要だ。顧客の課題仮説を立て、それを裏付けるヒアリング設計を行い、提案書の骨格を作る——この工程を主体的に担った経験がある人は、高単価案件の候補になる。
Heydayの経験から言うと、以下の条件を満たした段階でフリーランス転換を検討するのが現実的だ。
- 正社員プリセールスとして2〜3年の実績がある
- 担当した案件で「受注に貢献した」と言える実績が3件以上ある
- 自分で提案資料を作成し、商談に同席してクロージングまで関与した経験がある
正社員として単価・商流が不透明な状態でプリセールス業務を担っているエンジニアが、フリーランスに転換することで月単価が大きく上がるケースをHeydayでも複数確認している。
「SESでシステム開発をやってきたが、プリセールスに転換したい」という相談も多い。結論は「条件付きでできる」だ。
パターン1: 上流工程経験者
SES案件の中でも要件定義・基本設計・システム提案に関わった経験がある人は、転換のハードルが低い。顧客との対話、課題整理、提案書作成という経験がプリセールスに直結する。経験3〜5年で上流経験があれば、プリセールスのエントリー〜中級枠(90〜120万円)は現実的な目標になる。
パターン2: 特定製品の深い経験がある人
Salesforceの設定・カスタマイズを3年以上担当した、AWS環境の設計・構築を長期的に担当した——こういった「製品深掘り型」の経験があれば、その製品のプリセールスとして転換できる。製品知識の深さが技術説明力に直結するため、学習コストが低い。
パターン3: SaaS導入プロジェクトの経験がある人
SESとして常駐した先でSaaS導入に関わった、ERPやCRMの導入プロジェクトに参加した経験は、プリセールスへの転換に有効だ。顧客の業務フローを理解しながら技術導入を支援した経験は、プリセールスの核心部分と重なる。
純粋な開発(コーディング・テスト中心)で経験を積んできた場合、転換に時間がかかる。技術力が高くても「顧客と話す経験」「提案を作る経験」がないと、プリセールスとして採用側が評価しにくい。
まずは社内でのプリセールス補助経験を積む、副業として提案書作成を受託してみるなど、「顧客折衝・提案」のポートフォリオを作ることが現実的な道筋だ。
高単価ポジションとして紹介したプリセールスだが、フリーランスとして独立する際に注意すべき点もある。
プリセールスは「プロジェクト型」ではなく「商談サイクルに付随する仕事」だ。開発エンジニアであれば「このプロジェクトが終わるまで稼働」という形が多いが、プリセールスは商談の数・受注率によって稼働量が変動する。
クライアント企業の売上予算が減れば、プリセールスの稼働機会も減る。「月4〜5件の商談に同席」という契約で入っても、受注率が下がれば商談数自体が絞られることがある。安定した稼働を求めるなら、複数クライアントを並行する「ポートフォリオ型」の稼働スタイルが有効だ。
Salesforceプリセールスであれば、Salesforce製品のアップデートに常についていく必要がある。AIプリセールスは特に変化が速く、2024年に「LLMの概念を説明できる」が差別化要素だったものが、2026年には「RAG・エージェント構成の提案設計ができる」が最低ラインになりつつある。
特定製品への依存度が高いプリセールスは、その製品の市場シェアが変動したときに影響を受けやすい。複数製品・複数ドメインに広げておくことがリスクヘッジになる。
エンジニアの場合、GitHubのコード・技術資格・稼働実績で客観的に能力を示しやすい。プリセールスの場合、「提案設計力」「ヒアリング力」といったスキルは数値化しにくく、単価交渉でのエビデンス提示が難しい。
対策としては、「担当した商談数・受注に貢献した件数・担当製品の導入実績」を具体的な数字として残しておくことだ。NDA等の制約はあるが、概数レベルで「年間◯件の商談に関与・受注率◯%」という数字を持っておくと交渉がしやすくなる。
Heydayはプリセールス案件も取り扱っている。Heydayの案件紹介の方針として、単価・商流を最初に開示した上で案件を提案するスタイルをとっている。
「案件を紹介してから後出しで単価を下げる」「商流が何層かを隠して紹介する」といったことはしない。Heydayが持つ案件のほとんどはプライム〜2次商流の範囲内で、直近の実案件データをもとに「あなたのスキルレベルで取れる可能性が高い単価」を先にお伝えした上で話を進める。
プリセールスへの転換を検討しているSESエンジニア、現在プリセールスとして活動していてフリーランスへの転換を考えている方は、まず自分の現在の市場価値を確認することから始めてほしい。
必ずしもエンジニア出身である必要はないが、実態として「エンジニア出身でない純粋な営業職がプリセールスに転換する」ケースは少ない。業務委託案件の募集要件を見ると、ほとんどの案件で「IT製品の技術的な理解力」「システム開発またはIT導入の実務経験」が求められる。
非エンジニア出身者がプリセールスに転換するなら、特定製品(Salesforce等)の深い知識を短期間で習得した上で実績を作るルートが現実的だ。Salesforceであれば管理者・アドバンスト管理者資格の取得から始める人も多い。
案件によって異なる。エントリー〜中級枠(90〜120万円)の案件では「資格なし・実務経験あり」での参画が可能なケースがある。一方、Salesforce認定資格(管理者・Sales Cloud コンサルタント等)を保有している場合、単価の交渉余地が広がる傾向がある。
Heydayが扱う案件でも、「SFの導入経験3年以上であれば資格なしでも可」という記載と、「管理者資格保有者優遇・単価上乗せあり」という記載が混在している。資格はあって損はないが、「経験があれば資格なしでも入れる案件がある」のも事実だ。
役割が異なるため単価レンジも違う。インサイドセールスは主に電話・メール・オンラインで見込み客を育成し、商談化するまでの役割を担う。プリセールスは商談化後の技術提案・デモ・提案設計を担う。
フリーランスの業務委託単価で比較すると、インサイドセールスは50〜80万円程度が多く、プリセールスは90〜180万円(Heydayデータ)と、技術知識が要求されるプリセールスの方が単価が高い傾向がある。「営業支援」という括りで同列に扱われることがあるが、求められるスキルセットは大きく異なる。
出る案件がある、というのがHeydayとしての回答だ。Heydayが直近で取り扱う業務委託案件データ(2026年4〜5月時点)で、AIソリューションプリセールス案件の上限は180万円だ。
ただし、この単価には明確な条件がある。「LLMや生成AI基盤の技術的仕組みを顧客に説明できる」かつ「AI導入の提案設計を主体的に組み立てられる」スキルが前提だ。ChatGPTを使える程度の知識では対応できない。RAG構成・ファインチューニングの概念・API連携設計といった技術知識を、ビジネス文脈で提案できる人材が対象になる。
2026年現在、AIプリセールスはまだ供給が極端に少ない。この市場が成熟する前に実績を積んでおくことが、中長期的な単価維持に有効だとHeydayは考えている。
プリセールスは「技術を語れるエンジニア」と「提案を設計できるビジネスパーソン」の両方の要素を持つポジションだ。この掛け算ができる人材が少ないため、フリーランス・業務委託市場での単価の天井が高い。
Heydayが扱う案件データ(2026年4〜5月時点)でまとめると:
- プリセールス案件の全体レンジ: 90〜180万円/月
- 単価の上限を決めるのは「提案設計〜クロージング関与度」
- Salesforce・AIソリューション系が高単価の双璧
- 稼働はハイブリッドが標準(フルリモートは案件を選ぶ必要あり)
- SESエンジニアからの転換は「上流工程経験」「特定製品深掘り経験」があれば現実的
「単価を上げたいが、開発スキル一辺倒の今のキャリアパスに限界を感じている」というエンジニアにとって、プリセールスへの転換は有力な選択肢の一つだ。
プリセールスフリーランスへの転換は一夜にはできない。正社員として提案経験を積む→受注貢献実績を作る→フリーランスとして独立するという段階的な道筋が現実的だ。「今すぐ転換できるか」よりも「2〜3年後に転換できるキャリアを今から設計できているか」を問いかけることが、長期的な単価向上につながる。
まずは自分の現在の市場価値と、どのプリセールスポジションに近いかを確認することから始めてほしい。